土木の風景

from civil engineers 築土構木、土木技術は社会生活の基盤をささえています。

2011年05月

3.11東日本大震災 被災報告(7)液状化・・神崎地区 no.303

 香取市の隣町・神崎町天の川公園の紹介です。
 液状化被災の香取市と同じような現象がそのまま残っていたものです。
 
 前回紹介の小野川と同じ液状化、側方流動、噴砂の一連の現象です。

04 176


 香取市小野川の震災直後の写真は上の写真を大規模にしたものでした。
 そこで、この神崎町・天の川公園地区を詳細に調べてみました。
 
 その結果は、香取市と全く同じ条件、利根川の旧河川敷にあります。

利根


地形図神崎



神崎古地図


神崎



神崎2



04 186


 そして、千葉県が自慢してよい「地質環境インフォメーションバンク」から地質柱状図を拝借。

infobank


11125


11126


 軟弱層が随分厚い地層であり、かつ、液状化しやすい砂層が柔らかい状態で上部に堆積しています。今回のような長時間の地震動には耐えきれないはずです。

 
 以下、被災状況写真を紹介します。
 周辺一帯の水田は軒並み液状化し、噴砂跡が残っていました。

04 172


04 171



 水路の被災状況は以下の通りです。

04 174


04 175


04 178



04 180



04 187


04 192



 また、施設も大きな被災状況でした。
 建物が残り地盤は沈下する・・・よくあるパターンになってしまいました。

04 189



04 191


04 190



 なお、「こうざき天の川公園」は竹下登首相の時、ふるさと創生資金1億円(昭和63年〜平成元年)を使って造られたそうです。管理人さんもいて、ここまで継続し施設運営をしてきたもので、敬意を表します。

 追記。
 むかしの利根川がこの天の川公園あたりを流れていたという地元の人の話がありました。古くからの地元人は知っていますが、新しい住民は知りません・・・、これが問題です。近年の災害について回る重要な課題ではないかと感じます。
 
 『 土地のことは古老に聞け! 』
 このことの重要性を災害時に思い知らされます。

   <土木の風景TOPへ>

3.11東日本大震災 被災報告(6)液状化・・香取市小野川地区 no.302

 利根川中下流域の沖積平野では、広い範囲に液状化被害が発生しています。
 印旛沼や手賀沼も同じ範疇に入ります。
 
 今回は、その中でも激しい被災をした小野川を紹介します。
 小野川というのは茨城県にもあり、そちらの方は大河川です。紹介するこちらの小野川は香取市内を流れる都市河川的な小河川です。
 
 まずは、yahooの航空写真から利根川と小野川を見てください。
 水田地帯に見えるところが軟弱な地盤状況にあります。

利根川


利根川2



香取


小野川2



小野川



 上に見るように小野川も利根川が形成した沖積地に含まれています。
 香取市は佐原と言い、水郷、小江戸の町並み、伊能忠敬の生誕地など観光の町でもあります。
 
 小野川には屋形船が浮かび、観光客を楽しませていました。

23 226


23 111



 その小野川が甚大な被害を受けたものです。もともと、利根川流域はゆれやすさ度合いが高い地区です。防災マップと揺れによる被害写真を見ていただければ分かりますが、地震動による被災はそれほど大きくなかったのです。

ゆれやすさ


23 220


23 219


 しかし、小野川下流域の被災は河川護岸と言うより周辺一帯の人家を巻き込んだ大規模なものでした。地割れは人家の庭や家屋内を走り、一列目だけではなく後ろの人家も壊滅的です。

23 195



23 190



23 138



23 134


23 192



 防災マップの液状化予測は最悪レベルではないようです。

液状化マップ

防災マップ


23 186



23 183



23 180



23 155


23 172



23 163



23 157



23 158



 なぜこれほどの被害が出たのか・・・、砂層の軟弱地盤であったと言うだけでは説明がつきません。この一帯に集中して液状化が発生しているのですから。
 
 そこで登場するのが地形図や土地条件図、古地図です。
 ボーリングの地質調査データは「千葉県地質環境インフォメーションバンク」にもありますが、ジャストポイントはありません。
 
 まずは、その資料類を並べてみます。

地形図香取


土地条件



古地図


 古地図を見て分かることは旧市街地は随分山側に寄っていたと言うことです。また、利根川の川筋が動いています。昔の人は危険な場所に家を立てませんし、住んだりしないものです。
 
 利根川改修で平坦地が広がった・・・、湾岸の埋め立て地と構造は同じなのです。
 軟弱な河川跡地を埋め立てて市街地が進出したというわけです。今回の香取市液状化範囲は古地図で見る旧河川敷内に当たります。
 
 そして、柱状図を見てください。
 A地点は小野川と国道356号線の交点にあたり液状化していません。砂層が薄いことと厚い粘性土に挟まれています。砂層はわずかに液状化したと思われますが、逃げ場がなく収まったと推定されます。

IMG_0012


 一方、B地点は十間川(小野川と同じく激しい液状化被災)のポイントで、砂層が厚く、表層の粘性土が非常に薄い状況です。このため、激しい液状化をしたものです。

IMG_0005


 さらに、被災状況写真です。
 被災直後には小野川の川底が道路面と同じまで盛り上がっています(通水断面確保のため、直後には中央部の浚渫排土を行っています)。
 液状化、側方流動、ボイリング(噴砂)が連続して発生したと考えられます。

23 160


23 126



23 124



23 176



23 173


 なぜ、これほどまでの被災になったのか、簡単な模式図と地震波形を示し、この項を終わりにいたします。メモ書きですから説明は省略します。
 なお、地震動の振動時間が異常に長い・・・これが今回地震の大きな特徴です。

IMG_0014


波形気仙沼

波形千葉

 なお最後に、参考の資料は下記のサイトから借り受けました。
 
 農業環境技術研究所 歴史的農業環境閲覧システム 
 
http://habs.dc.affrc.go.jp/index.html 
 
 千葉県環境インフォメーションバンク
 
http://wwwp.pref.chiba.lg.jp/pbgeogis/servlet/infobank.index
 
 地形図 
 
http://watchizu.gsi.go.jp/index.aspx
 
 土地条件図 大地の解体新書
 
http://www.kanto-geo.or.jp/kaitai/
 
 内閣府防災情報
 
http://www.bousai.go.jp/oshirase/h17/yureyasusa/

   
   <土木の風景TOPへ>

3.11東日本大震災 被災報告(5)津波・・飯岡地区 no.301

 千葉県で津波被災のもっとも激しかった地区です。
 津波は北方から来たわけですから影になっているような飯岡地区が甚大な被害を受けるというのは考えにくいことです。
 
 しかし、実際には茨城県の津波高さを優に超える7.6mという局所的な大津波が来たのです。東大:郡司準教授によれば、「浅海域に岬などが突き出ていて、その後背地にある都市は、屈折現象によって津波のエネルギーが集中して津波高が大きくなる」(日経コンストラクション2011.4.11)ということです。
 
 旭市飯岡地区の地理的な位置関係をYahooの地図で見ると津波の方向からは真裏に当たります。
 銚子で3.0m、飯岡漁港で3.4m・・・これは普通です。
 ところが矢指川でなんと、7.6mを示しています。

001


 その理由は次の推論が成り立ちます。
 『 水流は深い海ほど抵抗が少なく速度が大きくなり、浅くなると速度は低下する。
 北から来た津波は銚子沖から九十九里に掛けての浅い海を右に、左には深い海に接することになる。
 すると、津波は進行方向の左右に速度差が出来、右にカーブを描くように方向を変える帯が出来る。遅くなった波に、さらに後から波が被さりエネルギーが集積して行く。
 
 その結果、飯岡の市街地から矢指川に掛けて局所的な大津波となった。また、津波は南から海岸線に直角に近い形で浸入している。』
 
 
 被災状況写真は西から矢指川、目那川、飯岡市街と紹介します。

002


 
 ,泙彩雹慇邁聾部です。
 郡司準教授の7.6mがどのあたりか特定出来ませんが、広い範囲で海岸砂丘や護岸を乗り越えています。水産加工場の一階部分も大破、県道30号線より上流部もかなり被害を受けています。

04 025


04 020



04 019



 なお、県道そばの海水浴場ですが、公衆トイレがあります。県道と同じ高さに建っている建物の内部、その洗面台には厚く砂が堆積していました。

04 027



 
 ⊆,呂發辰箸盞磴靴被害を受けている目那川河口です。
 こちらは、矢指川と同じくらいの津波高さと推定されるほど、コンクリート護岸や矢板が破壊されています。人家の被災もかなり出ていました。

15 086


15 089



15 090



15 088



15 095



 そして、県道より上流側の広い範囲の水田に海水が浸入しています。

15 092


15 093



 最後は死者行方不明者を多数出した飯岡市街地です。

003


 海岸の道路(県道30号線)がようやく選択規制で街にはいることが出来る状態になったばかりです。黙々とがれき撤去をされている地元の方々に言葉も掛けられません。
 
 
 なお、飯岡漁港よりも西側の方が甚大な被害を受けています。まずは、市街地から飯岡漁港方面を見ると5m以上の津波が来ればひとたまりもない風景に見えます。

15 098


 そして、その痕跡は護岸上に設置されている金属製の手すりに残っています。
 あっという間に大波が乗り越えたことを示しているようです。

15 099


15 101


15 100



 津波の襲来は家屋を全壊させ、旧県道方面にまで達したようです。車が逆立ちをしているものも何台も見かけました。
 本地区を歩いて言えることは、津波の猛威と東北各県の惨状がいかにすさまじいかということです。自然の猛威に対し、人間の無力さをつくづくと知らされます。

15 103



15 104



 最後に、津波被害が一番大きいと予想していた銚子は、魚市場などへの浸水はありましたが大きな津波被害は発生していません。
 
 その代わり、犬吠埼の真裏に当たる名洗のマリーナが一掃されてしまいました。大きなヨットなどは倒された程度ですが、小さいボート類は流されてしまったとか・・・。
 
 こちらも参考に写真を載せます。

23 281


23 275


23 284

   <土木の風景TOPへ>

3.11東日本大震災 被災報告(4)津波・・九十九里地区no.300

 報告が遅くなってしまいました。
 今回の被災地報告は九十九里地区の一回目です。
 
 九十九里海岸は北へ行くほど被害が大きくなっています。
 特に、河川部は津波の進入を容易にすることから、河川部だけではなく周辺にも大きな被害をもたらしています。
 
 まずは、位置関係から・・・。

九十九里


かわ


 
 南の方から紹介します。
 作田川と片貝漁港は施設そのものへの被害は微少でした。
 しかし、漁船の転覆や浚渫工事中の運搬船が上流へ大きく流されて大きな被害をだしています。

katakai


katakai2



15 016



 浚渫土運搬船は引き船の回航到着が遅れ、津波に巻き込まれたものです。毎年定期的に片貝漁港の浚渫を行っているとのことでした(銚子漁港事務所)。
 ガス管橋の橋脚を一本とばしてしまい、管路を切断しています。

15 023


15 022


15 026



15 028

 運搬船はすでに解体撤去されています。
 
 
 次は木戸川ですが、こちらは河川堤防の破壊が大きく、内陸部への津波進入が顕著です。2km以上内陸の水田がやられていました。
 木戸川堤防と周辺の現状は以下の通りです。

15 030


15 031



15 044


15 045


15 047



 そして、木戸川と栗山川に挟まれる蓮沼地区も大きな被災をしています。津波に抵抗する地形状況になかったことが被害を大きくしています。

15 048



 
 この項の最後は栗山川河口の屋形漁港です。
 小さな防潮堤もなすすべなし・・・簡単にやられています。
 まずは全景から・・・船が見あたりません・・・。

15 051


15 054



 そして、漁港裏の住宅には津波高さの痕跡が残っています。奥のお宅では玄関までの床下浸水で助かった・・・とおじさんが語っておられました。もう少し盛り土をしておけばよかった・・・と(高くしているお宅もありました)。

15 060



 さて、防潮堤が倒壊しています。しかし、古い簡易なもので基礎部分も特に加工をされていないようです。昔の防潮堤にコンクリートを打ち増した、と言う構造です。
 これでは津波の圧力に負けてしまいます。ただ、この地区でこれほどの津波が来るとは誰も考えなかったかもしれません。

04 014


15 053


04 013



 最後に一枚の写真をおまけです。
 2011.3.15に撮ったものですが、一宮町(九十九里海岸の南端地区)の海岸から1km内陸に立っている案内板です。

15 013


 元禄時代を知る人は生きていませんが、こういう記憶はいつまでも生かして頂きたいものです。ただし、この高さがMAXというわけではないので念のため・・・大昔は「想定外」の高さもあったことでしょうから。
 
 自然災害を力で押さえようという考え方では人間に勝ち目はありません。まずは逃げること、そのための手法を考えたいものです。
 
 
 なおまたおまけ。
 東京湾内も水位が随分あがったようです。木更津港のボート係留地区です。

110313_0933~0001

   <土木の風景TOPへ>

 
Recent Comments
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

QRコード
QRコード
Archives
  • ライブドアブログ