土木の風景

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2013年11月

橋梁ケーブルの張力点検診断(その1)

・・振動法による点検診断の問題とその対策・・

 1.はじめに
 高度成長時代に建設された多くの構造物が老朽化し、維持管理の必要性が叫ばれている昨今であります。これら老朽化した構造物の維持管理は、まず目視によって点検が始められます。しかし、その劣化の原因や劣化の程度を把握しようとするとき、測定器具を用いた検査計測技術の応援を待たねばなりません。

 かかる点検診断の一例として、ここでは橋梁のケーブル張力の点検診断法を取り上げてみます。斜張橋や二ールセン橋、更には吊橋などケーブルを組み込んだ橋梁はこれまで数多く建設されています。これらの橋梁においては、所定の張力がケーブルに導入されていることが架設時のみならず、架設後においても重要になります。

 もし、ケーブル張力が設計値より大きくかけ離れているときは、ケーブルが安全面で問題になるばかりでなく、橋梁の全体形状にも影響を与えます。

 例えば二ールセン橋の架設においては、建設後にケーブル張力を計測し、設計張力と差異があるときは、この差異を所定の値より小さくするために、最適なシムプレートの厚さを計算します。次に、計算されたシム厚さを用いてシムプレートの調整を行ない、改めて張力の計測を行ないます。この繰り返しは2〜
3回行われています。

 既設の橋梁では、建設後歳月が経過しますと、構造形状の変化等によってこの張力の変化することが十分考えられます。したがって、既設橋梁において張力を定期的に点検診断することは、維持管理の面で非常に重要です。



 2.橋梁ケーブル張力の測定方法
 橋梁ケーブルを直接測定する方法としては、ロードセルや、油圧ジャッキを用いる方法があります。
 ロードセルを用いる方法では、ロードセルをケーブルのソケットと橋桁の間に挿入して張力が測定されています。しかし、測定後にこのロードセルを取り外すと、張力が変化するので、注意が必要です。

 一方、油圧ジャッキを用いる方法では、ケーブル下側のソケットを油圧ジャッキで引っ張り、ソケットが動き始めるときの張力を油圧メーターで読み取ります。一本のケーブル張力が測定されると、そのジャッキを移動させて次のケーブルの測定にかかります。ケーブル本数が多い場合、このジャッキの移動だけでも、かなりの労力と時間を要します。

 このような方法で既設橋梁のケーブル張力を点検診断しようとしますと、足場建設の問題もあり現実的ではありません。このようなことから、我々は測定が簡単な振動法に着目しなければなりません。


 3.振動法による橋梁ケーブル張力の測定
 ケーブルは自然風などによって常時、微振動しています。ケーブルに感度の高い加速度計を取り付けておきますと(図―1)、ケーブルを加振しなくても、ケーブル振動の加速度波形が容易に計測できます。
図-1
       【図−1 加速度計センサー】

このとき計測される加速度波形は、時間とともに加速度が連続的に変化する記録です。この時間的に変化する記録は、時刻歴(
time history)と呼ばれています。

 この波形を一定の時間間隔で読み取りますと、等間隔のとびとびの加速度の数列が得られます。この数列(x
)は時系列(time series)と呼ばれています。このときの等間隔な時間間隔をサンプリング時間、さらに時刻歴データから時系列データの読み取りをA/D変換と呼んでいます。

 この時系列の数列をフーリエ変換しますと、図―
2に示すようなスペクトル図が得られます。図―2において横軸は周波数、縦軸は上記の(xm

 

    数式

つまり平均パワーを示しています。これはパワースペクトルと呼ばれています。パワースペクトルは波の平均パワーを成分波の寄与に分解したものであり、パワースペクトルが卓越する周波数から固有振動数を求めることができます。
図-2
        【図−2 パワースペクトル図】
 
上述の
A/D変換や、フーリエ変換機能を持たせた市販のフーリエ変換器を利用しますと、ケーブルの固有振動数は簡単に計測できます。したがって、計測された振動数から張力を算定するときの、いくつかの技術的な問題を解決しておけば、橋梁ケーブルの点検診断は容易に行うことができます。以下、振動法による橋梁ケーブルの張力点検診断における技術的な問題点を考えてみます。 


 


 4.振動法の技術的問題点
1)ケーブル張力の算定方法
 二―ルセン橋の端部のケーブルはケーブル径に比して長さが短いので、振動数から張力を算定するときには、ケーブルの曲げ剛性の影響が大きくなります。一方、斜張橋のケーブルでは、ケーブル径に比して長さが長いので、ケーブルの曲げ剛性の影響は無視できます。しかし、ケーブルの垂れ(サグ)の影響が大きくなります。

 振動数から張力を算定する場合、ケーブルの曲げ剛性やサグが影響する領域を無次元数で表わし、一次や二次の振動数から張力を算定する、実用算定式も報告されています。しかし、ケーブルを加振しない場合、長さによっては一次や二次の低い振動数のスペクトルが現れない場合があります。この場合、人力でケーブルを加振させますが、この作業は容易ではありません。

 したがって、任意の振動次数の振動数から、張力が算定できればより迅速な測定ができます。その場合、算定計算が多少複雑になっても計算機を使用すれば、計算の複雑性は解消されます。

 この場合、算定式に要求される条件としては、
       入力データが少ないこと、
       計算精度が満足できること
       任意の振動モードの振動数から張力が算定できること
       異なる振動モードの振動数から算定したケーブル張力が同じ値となること
 等が挙げられます。

 ケーブル振動の問題では、有限要素法の適用も考えられます。有限要素法ではケーブルを有限な要素に分割し、分割された節点の座標、節点間の部材の情報、部材間の張力を計算機に入力して、振動数を計算します。

 しかし、この方法では入力データが多くなります。さらに、有限要素法では入力された張力に対して振動数が計算されますので、振動数から張力を算定する振動法には適しません。しかし、導かれた算定式の計算結果と有限要素法の計算結果との対比ができますので、算定式の計算精度の点検には威力を発揮します。

2)ケーブルの曲げ剛性が測定結果に与える影響

 二―ルセン橋の端部のケーブルは、ケーブル径に比して長さが短いので、ケーブル張力の算定において曲げ剛性が大きく影響します。このためケーブルの曲げ剛性についての事前検討が重要となります。

 例えば、撚りのあるケーブルを油圧ジャッキで引っ張りますと、ソケットに回転が生じます。これは、ケーブルに張力を与えますと、素線間の充実率が小さくなる方向に、断面構造が変化するためです。このとき、回転を止めたときと、そうでないときでは曲げ剛性の値は変化します。

3)ハンガークランプで連結された長大吊り橋吊材の張力測定
 長大吊り橋の吊材はケーブルバンドで鞍がけされたケーブルが、ハンガークランプで連結されています(図―3)。この吊材の橋軸方向の振動を測定する場合、二本の吊材が同じ方向に振動するモード(同位相のモード)と互いに反対方向に振動するモード(逆位相のモード)が観察されます。

 同位相モードの方が、逆位相モードより振動数はわずかに低くなります。したがって、ハンガークランプの重さを考慮した振動方程式を解いておき、低い方の振動数を代入すれば、吊材の張力が算定できます。
図-3
       【図−3 ハンガークランプ】
4)オープンソケットの影響

 長大吊橋の吊材の下側は図―4に示すようなオープンソケットになっている場合があります。例えば、英国のセバーン橋やトルコのボスポラス橋はこのような形式になっています。また、我が国でもこのような形式の吊材が見られます。

 この場合、ケーブルが長い吊材ではソケットの前面でケーブルは固定されます。つまり、オープンソケットは振動しません。しかし、ケーブルが短い場合ケーブルとソケットが一体となった連成振動をします。したがって、1)で求めた算定式は適用できません。

 このような場合は、事前に有限要素法で計算を行い、算定式が適用可能なケーブル長さについて検討しておくことが必要となります。ソケットと連成する場合、ケーブルの等価長さを求めておくと、算定式はそのまま適用できます。しかし、このような検討を行わない場合、振動法の適用限界を設定しなければなりません。
図―4は有限要素法で検討を行ったオープンソケットのモデル化図を示しています。
図-4

       【図−4オープンソケット】

5)測定精度

張力を算定するにおいて必要となるデータは
  ケーブルの単位長さ当たりの重量  w
  ケーブルの曲げ剛性        EI

  ケーブル長さ             (L)

等があります。

 算定された張力の測定精度に対しては、これらの
相対誤差Δw/w,  ΔEI/EI   ΔL/Lの他に、振動数の読み取り誤差:Δf/fが影響因子となります。ここで、f:測定振動数、Δf:振動数の分解能です。

 この振動数の分解能:Δfは
A/D変換時のサンプリング数:Nが大きくなるほど、小さくなります。またサンプリング時間:ΔTが一定のとき、低次の振動数よりも高次の振動数から張力を算定する方が精度は向上します。

 いま、Δ
w/w=0.01  ΔEI/EI=0.1 ΔL/L=0.001程度に想定し、N=2048、さらに計算精度を1.6%程度考慮すると、測定誤差の推定値として3%が得られています。実用的には許容できる値とみなされます。


6)測定器
 実橋測定においては、前述したように市販のフーリエ変換器を利用することで測定ができます。しかし、図―5に示すような測定器を製作しておくことによって、より迅速な測定が可能となります。

 この測定器では、入力データと実際に発生すると推定されるケーブル張力、さらに測定の対象とする振動次数の設定値を基に、ローパスフィルターの値を自動的に設定しています。これにより市販のフーリエ変換器を利用するより、より精度の高い測定ができます。
図-5
         【図−5測定器】

 以上、振動法によるケーブル張力測定における問題点を整理してみました。次回からこれらの問題についてシリーズで見てゆきたいと考えています。
 これによって、土木工学と計測工学の接点を、土木の一つの風景として捉えて頂けるのではないかと思っております。




※なお、本稿をお読み頂き、ご質問等のある方は下記の所までご連絡ください。
    島田 忠幸(千鉱エンジニアリング株式会社 技師長)
          mail:t.shimada@chikio-eng.co.jp
                   tel:043-224-5367(代)
    長坂 光高(株式会社IHI検査計測 計測事業部 次長)
          mail:m_nagasaka@iic.ihi.co.jp
           tel:045-791-3518


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中の島大橋 no.409

 木更津港の入り口に中の島があります。
 まずは、yahooから航空写真を拝借。

木更津



きさらづ2



木更津3



 中の島大橋は木更津市と中の島を結ぶ歩道専門の橋です。管理上は、軽トラくらいは十分に通れます(幅 4.5m)。
 
 快晴ですが、強風の日でありました。
 橋梁の一番高い場所がH=27.125mだそうで、立っているのがやっとこさ・・・自然の猛威を感じます。
 
 高い場所ですから眺望はすこぶる良ろし・・・周辺を撮ってみました。
 富士見大橋から時計回りに見てみます(画像はすべて拡大できます)。

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 さて、今回の主役登場です。
 1975年(昭和50年)完成ですから38歳になります。

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 橋長 236m、潮干狩りで渡った方も多いと思います。近頃では「恋人の聖地」だそうで、おんぶして渡ると良いのだとか・・・。
 
 
 
 以下、土木の風景としてみていただければ幸いです。

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 そして、おまけは潮風強い場所です、鋼橋塗装の仕様は次の通りです。
 鋼構造だけではなく橋脚のコンクリートにも塗装しているのがわかります。

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砂山・・ no.408

 正式には山砂採取場・・・というべきでありましょうか。
 房総半島東京湾側には多くの山砂採取場があります。
 
 過去記事を含め、自然破壊か産業か・・・話は単純ではありません。

2013-11-09015


 関連記事をどうぞ・・・「砂山」「山が消える

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