土木の風景

from civil engineers 築土構木、土木技術は社会生活の基盤をささえています。

2014年07月

上総堀り no.421

 上総堀りは千葉県君津(上総)地方が発祥の地だそうで、簡単な装置の省エネ大深度掘削が可能です。
 実際の掘削作業に従事した古老の話をよく聞いたものでした。
 
 現代の日本では機械式ボーリングが主流で上総堀りは使われていませんが、発展途上国では現役の地方があるそうです。もちろん、日本人の指導によります。
 
 さて、君津市久留里地方は豊富な地下水に恵まれ、自噴井戸がたくさんあります。酒蔵も多く、久留里はお城と水の町・・・名水を求めてお江戸のそば屋さんも来ているほどです。

8bdf3c07


dd8337e6



meisui



3742ff46



f1e17b03



2f3fc4d8


 
 そんな久留里の城下に自然公園があり、今日の主役、上総堀りの装置が展示されています。希望があれば実体験もできるそうです(事前予約)。

5111f8c0



2014-07-18012




2014-07-18011



 見た目は簡易ですが、竹の強い弾力を活用した優れものです。君津市のホームページでは、300間(約540m)まで掘削できたとか・・・。
 
 装置の詳細は次の通りです。
 この櫓では、500mはちょと無理のようであります・・・。

kazusa



2014-07-18010




2014-07-18026



2014-07-18028




2014-07-18029



2014-07-18030


 なお、下記のサイトでは動画が見られます。
 
 上総堀り〜伝統的井戸掘り工法 1〜4/4 - YouTube
 
http://www.youtube.com/watch?v=53e3OnZfN14  1/4
 
http://www.youtube.com/watch?v=xzZp9flWZZw  2/4
 
http://www.youtube.com/watch?v=7RXYZloL-rc  3/4
 
http://www.youtube.com/watch?v=wESTi-L-iYU  4/4
 
 
 さて、土木の風景サイトですから、自噴井戸について少々・・・。
 上総地方の自噴井戸は1,342箇所もあるそうです。

ido


 上の模式図の丸印が久留里。
 なぜ自噴するのか・・・それが問題です。
 
 千葉県の地質の傾斜は南東から北西へ下がって行く傾向にあります。地下に浸透した雨水は地層の傾斜に沿って流下し、不透水層に挟まれながら圧力を高めることになります。

 それを模式化したのが下図です。

tisou


 久留里地方はKu 国本層あたりが対象帯水層となっています。水を通すのは砂層、通さないのが粘性土層(不透水層)ということで砂層の水圧は(挟まれて)高くなるわけです。仮想の地下水位線が地形より高くなっているところで自噴します。

kokumoto


3742ff46


 最後に参考記事、辞書記事を添付しました。
 
 <小糸遊水の里より>
 
http://www.e-koito.jp/sato/sub/content0.htm
『 「君津市の上総掘り井戸」
「上総掘り」は「自噴井戸」と呼ばれる井戸を掘る為の技術の一つです。
ポンプなどを使用しなくても地下から水が湧き出る井戸のことを「自噴井戸」と呼びます。
君津市、特に小糸川・小櫃川流域ではこの「自噴井戸」が数多く存在しています。

君津市の地層は、砂利・砂・粘土の層からなっており、北西(東京湾)に向って傾いています。
水は高いところから低いところに向かって流れますが、北西に向かって傾いたこの地域では、地下へしみ込んだ雨水も、砂利や粘土層に挟まれた砂の層を通って北西に向かって流れてゆきます。
地下に流れている水には、この傾斜による流れや、砂や粘土の重みによって圧力がかかっており、低いところで穴を掘ると、その圧力に圧されて自然と水が噴き出すのです。

君津市が実施した平成13年7月の市街化区域を除く君津市全域の井戸の調査によると、小糸川流域で621か所、小櫃川流域で721か所、合計1342か所の自噴井戸が確認されております。
その内、小糸地区459か所、小櫃地区294か所、久留里・松丘地区369か所になります。
これらの内、1173本(全体87%)が上総掘りで掘られた井戸です。
その他は昭和45年以降の機械掘りによる井戸と横井戸や自然湧水によるものです。』

 
 上総掘り かずさぼり  <大百科全書より>
→井戸
千葉県上総地方で古くより行われていた水井戸を掘る掘削法。地表装置としては木製櫓(やぐら)とヒネ車がある。櫓の上部にはモウソウチク数本を束ね、その根本を固定し、その末端が坑口に臨むようにする。これを弓竹という。地層を掘削する器具を掘鉄管といい、パイプの先端に岩石を砕く刃を接着し、その上に上方に開く弁が取り付けてある。掘鉄管はヒネ竹で地表より吊(つ)り下げられる。ヒネ竹は竹を裂き、幅3センチメートルぐらいに削ったものを鉄の輪と楔(くさび)で長く継ぎ合わせたものである。ヒネ竹はモウソウチクを束ねた弓竹の末端と掘綱で結ばれている。掘綱を人力で引き下げれば、掘鉄管は地層を破砕し、力を緩めれば掘鉄管は跳ね上がる。掘鉄管のパイプ中に岩石の破片がいっぱいになれば掘鉄管を引き上げる。引き上げにはヒネ車を用いる。ヒネ車に人が数名入り、車を回してヒネ竹を巻き付ける。井戸に岩石破片が残っているときはスイコー(吸子)という、パイプの下端に弁をつけたものを降ろし、岩石破片を回収する。
 1893年(明治26)に新潟県新津(にいつ)油田の石油井掘削に用いられ、以後鉄管の昇降装置などに種々改良がなされた。1935年(昭和10)秋田県八橋(やばせ)油田で上総掘りで掘った坑井が深度203メートルで油層にあたり、大噴油をおこし、日本最大の油田である八橋油田発見の端緒となった。現在は上総掘りはほとんど使用されていない。→井戸〈田中正三〉

 
 <君津市ホームページより>
 『 市内には、久留里の大井戸・自噴井戸をはじめ、あちらこちらで地下水が自噴している光景が見られます。

 この豊富な水の恵みを、地下からもたらしたものが「上総堀り」です。用具は、国の重要有形民俗文化財に指定され、今でも技術の伝承や研究実践が行われています。

「上総堀り」は、君津市が発祥の地で、江戸末期の金棒による井戸突堀り技法に代わり、明治期に生み出された画期的な工法です。

モウソウ竹のヒゴを用い、先端には、掘削するときに石や岩などを砕く鉄管と堀りくずを吸い上げ井戸の穴を清掃する吸子(すいこ)が取り付けられています。そのヒゴを、竹でできたハネギと呼ばれる道具につなぎ、竹の弾力性を利用してヒゴを上下に動かしながら掘削していきます。

明治19年(1886年)には、300間(約540m)の深さまで掘削できるほどになりました。

今でも、上総掘りで掘られた井戸水は、飲料水として、またカラー栽培などの農業用水としても利用されています。また、竹ヒゴと簡単な鉄製部品を使い、少ない人力で深く掘削できるため、水不足に悩む東南アジアやアフリカの地域でも、その技術が生かされています。

日本のみならず、世界でも活躍している「上総掘り用具」は、久留里城址資料館に展示されています。』

  <土木の風景TOPへ>
 

安定と不安定(5) 地すべり no.420

 不安定の代表選手は地すべりです。
 大地がそのまま移動して行くのは恐ろしいことであります。
 
 まずは、実際に動く地すべりを体験するのはそうそうあるものではありません。ましてや目の前で・・・これは希有なことです。
 
 大昔、昭和64年頃、房総では珍しく大規模な地すべりが発生しました。調査と計画が終わり、実際の工事を目前にしてすべての範囲が崩壊、予想すべり面がそのまますべったものです(残念ながらその当時の写真が見当たりません)。
 
 調査途中で数mmの変位をしていましたから、いつすべってもおかしくないものでしたが、自然の猛威に慄然とした記憶があります。
 
 
 そして、平成18年、これは調査計画途中に隣接工区の地すべり崩壊が発生し、唯一の生活道路を切断しました。緊急の対策は排土工です。

b41e851c



11 186



11 187


 
 次は平成24年、動きが継続していた小規模の地すべりです。当時、観測中のようでした。アスファルトの町道(今は市道)を持ち上げていましたから対応策も微妙です。

a0314dfb



4e1b9896



 
 また、地すべり地形は特徴的ですから、それを並べてみました。

1 088



06 019




22 105



FH000002




RIMG0084



 同じように、すべりの頭(冠頭部)が見られるものです。こういう場所では降雨が続いたときなど注意が必要です。

11 189



16 058



2012-08-09038




2012-08-09009



 
 
 さて、地すべりの不安定化は地下水の影響が最も大きく、すべり面を形成して土塊重量を支えきれなくなって動き出します。土は水を含むとさらに重くなり、かつ、力学定数が低下して(抵抗力が弱くなって)不安定化して行きます。
 
 ということで、安定化させる第一歩は抑制工として水を抜くことです。地下水位を低下させるため、/縅工、暗渠工、L整典工、た緘瓦工等を施工し、雨水の地下浸透と地下水位の上昇を抑えます。

11 105




11 107



10 081



5224d04b




10 079



 
 そして、土留めを兼ねた抑止工の一種ですが、地すべり地帯に多用されているカゴ工、井桁工です。カゴ工は栗石をまとめて塊にして設置するもので水を通す、そして変動に強いなど安くて効果的な工法です。

26 042



26 053




a2705af2



dec7332b



 カゴ工より安定的なものが井桁工です。
 古いものから新しいものまで並べてみました。

c3e2baa6



b144d8bf



26 023




26 046




03 133



b059cda3



26 030




28-2096



 
 そして、古い井桁工の栗石を見てください、整然と並んでいます。昔の人は良い仕事をしていますね〜。

26 024




 
 さらに堅固な構造物はアースアンカー。
 全国各地の斜面や仮設工事などに多用されています。抑止工の代表といえましょうか。

d38091e1



ab2f4d21




 またまた別の代表選手は抑止杭工です。
 明確に止める・・・という意思が表れています。

10 131




10 126



10 109



10 116



 
 なお、地すべり対策には擁壁工や法枠工など、動く恐れが少ない場所には採用される工法もあります。次の写真は地すべり冠頭部の崖面を抑えたコンクリート枠工です。

13 127




 動く場所では堅固な擁壁は不利です。下に示すのは井桁工の破壊現場です。現在は新しい井桁工が施工され安定していますが、破壊力はすさまじいものがあります。

 ただし、動きに追随できる井桁工であるため、一挙に破壊するという危険性は低かったといえます。

14 068



14 072




14 071




 なお、最後に地すべり地帯特有の風景・・・それは棚田風景です。
 千葉県では大山千枚田が有名です。
 
 都市住民を巻き込んだ各種の活動で見事な風景を保っています。
 営々とした人の働きがこの風景を作ります。

ecdfd5be




2012-03-08153




2013-08-16020




 
 最後に問題の1枚・・・ただの水田です。

22 036


 お気づきの方もおられましょう・・・水田浸食の始まりです。
 のりが崩れる、田面に穴が空く(ボラの発生)、ガリ浸食が始まる・・・農家はこの段階以前に修復を行います。
 
 修復しないと地形は変容し、ゆくゆくは地すべりが発生することになるのです。
 大山千枚田の美しい風景はこうした農家の営みによって守り伝えられてきたことが分かります。

2013-08-16021



 「隣家がいなくなって耕作地が荒れ始め、イノシシなども大暴れしている・・・若いもんにはやらせられないし、ワシもそろそろ・・・」ご高齢の農家から直接聞くお話です。
 昨今は耕作放棄地が増加し、過疎化も進展し農家が山から下りるという現実があります。

 大山千枚田のような棚田地区では耕作放棄地を放置することはできません。農家が常に手を入れるから棚田は保っているのです。放置した水田は必ず荒れて地すべり地形を生み出します。
 
 地すべり地区では、一人だけが自分の水田を守っていれば良いという問題ではないのです。過疎化地方の大きな問題が突きつけられている日本国なのであります。
 
 大地を安定化させるために・・・都市集中、特に東京一極集中を抑制する長期的な施策が欲しいものです。若い人を地方に惹きつける何かが欲しい梅雨の空・・・。

   <土木の風景TOPへ>

Recent Comments
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

QRコード
QRコード
Archives
  • ライブドアブログ