土木の風景

from civil engineers 築土構木、土木技術は社会生活の基盤をささえています。

2015年10月

地すべり集水井 no.445

 地すべり地帯に築造される既存集水井の紹介です。
 房総の農業事務所より古い井戸を拝借し、見学会に活用しよう・・・というのが始まりです。
 
 最初の日、農家のおばあさんが「鎌を貸しましょうか」と声をかけていただいたのですが、航空写真で見ていて「お〜簡単だ!」と思っていたので辞退しました。

永井-2



 
 ところがです、現地に入ってみると「甘かった!」ことを悟りました。
 現状はヤブの中・・・現地にたどり着くのには大藪扱きが必要で、それはそれは大変なことでありました(笑い)。

IMGP1496




IMGP1508



 
 そして現在は草刈りをしてかくの通り。

写真(地すべり集水井)018




 さて、くだんの集水井は昭和53年3月(1978)に築造されたものです。今年で37年、古い方の集水井です。
 地すべりの永井大橋地区と言いますが、背後に大きな山を背負っています。地下水位を強制的に下げよう、そして地すべりの発生を防止するという目的で作られています。

永井大橋位置2




長井地区平面2




長井地区構造2




 当時は詳細なすべり解析などは行われていなかったようでおおざっぱな印象を受けます。放射状に敷設されているのが横穴のボーリングで、地下水を抜くための穴です。
 ちょろちょろと音がしていたのでまだ機能が生きているようにも見えました。
 
 そこで、内部へ・・・有毒ガスなどの心配もあったのですが、蓋の部分が網のようで空気の出入りは良さそうです。カナリアか検知器か・・・といわれましたが結果は上々。

写真(地すべり集水井)004




 内部に降りたって写真を撮りましたのでご紹介。
 意外に腐食が無かったのが印象的でありました。

写真(地すべり集水井)001




写真(地すべり集水井)012




写真(地すべり集水井)007




写真(地すべり集水井)009





写真(地すべり集水井)006




写真(地すべり集水井)014


 集水井(しゅうすいせい)

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風による自立型煙突の振動(その1)no.444

 風による自立型煙突の振動(その1)
                         
1.まえがき
 斜張橋のケーブル部材や自立型煙突など、断面が円形な部材や構造物は、風によって激しく振動することがあります。一般に、一様な流れの中にある円形断面の構造物やその部材は、後流側に周期的な渦が発生します。その渦の発生する周期と構造物の固有周期が一致するとき激しい振動が生じます。この振動は、渦励振あるいはカルマン振動と呼ばれています。
 
 今から約30年ほど前、千葉県のある化学工場で高さ80mの自立型煙突が、春一番の風が吹くころに激しく振動することがありました。毎年、このころに激しい振動が発現するとのことです。このため、頂部に風速計と加速度計を取り付け、季節風の吹く1〜3月の頃に煙突の振動測定を行いました。その結果、風速30m/sで振動の生じることが確認され、振幅は両振幅で80cmとなっておりました。
 
 このような場合、制振対策としては煙突の周囲に架構を組む方法が一般に採用されます。しかし、このときは周囲に架構を建設する敷地の余裕がないため、種々検討の結果耐風工学的に制振させる方法が選択されました。具体的には、風洞実験を行って最初に実機の振動発現を実験的に確認し、つぎに煙突頂部に螺旋板を巻き付け、それによる制振効果を実験的に確認して、このデータをもとに制振工事を実施しました。工事完了後に風速と振動の測定を行い、制振工事前に両振幅80cmあった振動が、工事後には5cmに低減していることが確認されています。
 
 自立型煙突は一般に建築構造物として分類されています。しかし、ここでは
耐風工学をベースに検討を進めており、その手法は土木構造物とくに長大橋梁を対象として研究されてきた手法です。ここでは“土木の風景”として問題検討の過程とその効果について、話題提供させていただきます。

 なお、本稿は文献1)で報告されている内容のものを、著者の一人がここで改めて紹介するものであります。


2.実機煙突の振動計測
 最初に、問題とするこの自立型煙突の振動の大きさについて述べてみます.

 図―1に計測システム図を示します。季節風の風向がほぼ一定でありましたので、季節風の風向および風向直角方向に向くように、2個の動輪型加速度計を煙突頂部に取り付けました。風速計はこの煙突から50m離れた架構煙突の頂部に取り付け、風速計と加速度計の出力はスターターを経由してデータレコーダに同時記録させました。所定の風速になると、データレコーダがスターターによって自動的に作動するようになっています。

001

                図―1 計測システム図


 下の図―2に測定結果を示します。このときは値がほぼ一定の共振時の風速を50秒近く計測することができました。煙突の振動は完全な共振状態にあると考えてよく、このときの振幅は両振幅:80cmとなっています。煙突では通常、煙突高さの2/3の位置での風速を代表風速にすると定義されており、この高さに換算した風速は21m/sになります。
 
 写真―1は煙突に螺旋板を取り付けて制振対策工事を行った自立型煙突を示しています。対策工事後も同様に風速と振幅の測定を行っており、その結果を図―3に示します
データは10秒平均風速に対する振幅の最大値を示しています。渦励振による顕著な共振は見当たらず、共振点付近における最大両振幅は5cm以下になっています。

002

           図―2  共振時の振動波形


003

     写真―1 制振対策を施した煙突 



3.共振風速の検証
 煙突の固有振動数:f ,  煙突の代表直径 : D, 共振風速: V
としますと

    S=f×D/V
    
 の関係があります。
 ここで、Sはストローハル数と呼ばれる無次元定数で断面の形状に固有な値です。この値は風洞実験より求めることができ、円柱の場合、S=0.2となります。
 
 対象とした自立型煙突は、f=0.99/secです。また、代表径は2/3の高さの値とされており、D=4.0m です。このときの共振風速を計算しますと
 
    V=0.99×4.0/0.2=19.8m/s
    
となり、測定風速21.0m/sとほぼ近い値になっています。


 あとがき
 高さ80mの自立型煙突が春先の季節風で大きな振動が生じた問題を取り上げ、(その1)ではその時の風速と振幅の測定結果を示しました。次に、その制振として頂部に螺旋板を巻き付けた対策工事を行った時の測定結果を示し、その効果についてのべました。
 ここでの手法は風洞実験によって実験的に得られた知見であり、(その2)では風洞実験結果について紹介を行うことにします。

 参考文献
1)島田忠幸、原 公、石崎溌雄:自立型煙突に用いる渦励振抑制用螺旋板の効果に関する実験的研究、日本建築学会構造系論文報告集、第341号・昭和60年8月
                           (文責 島田忠幸)

  
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