久しぶりに来てみました。のんびり時間がある時でないと来られませんが、しっかり安定しているのを見てホッとうれしくなるものです。
東金ダム

 さて、東金ダムについては過去二回、エントリーをしております。風景としてのダム周辺は新緑の頃が一番かも知れません。(→no.75 東金ダム、→no.139 雪の東金ダム)
 
 そこで今回は、アースダムの構造風景を見てみました。
 
 まずは、アースダム・・いやまずはダムの定義は??(笑い)。
 興味がおありの方には<大百科全書>の記事を抜粋して〔→続き〕に掲載しました。
 
 
 ここでは、簡単に記します。
 ダムとは、貯水、止水、砂防その他の目的のために河川をせき止めるための構造物です。その目的も、いろいろです。だいたい多目的ダムというのが一般的です。
 
 そして、その構造によってもいろいろな種類があります。(→続き)
 この東金ダムは「上水道、工業用水道目的のアースダム」ということになります。
 
 アースダムとは、土で造ったダムというわけで、大丈夫なのでしょうか??
 心配はありません。
 
 大昔から、ため池というのが全国あらゆる所にありました。現在でも、数万カ所、里を歩けばため池に行き当たります。むかしの人たちは、手で掘って、手で突き固める(もちろん道具は使います!)丁寧な作業で、ゆっくりじっくり土堰堤を築造してきました。
 
 これがまた、しっかりしておりまして、建設機械を使った最近のため池よりも安定性、止水性、耐久性どれをとっても優れています(現代土木の弱点は、効率性とコストを重視せざるを得ないところです。予算激減の中、小規模ため池改修がかかえる重要な問題を含んでいます)。
 
 さて、東金ダムです。
 これは旧水資源開発公団が力を入れて建設したものですから、ため池とは違います。手間も工期も、最新技術も、すべてを投入しています。まずは、今の風景から・・・。
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 それでは、東金ダムの堤体本体の構造について見てみます。
 
 土というのは水を含むと軟らかく(弱く)なります。そうなると、海岸の砂のように流されてしまうわけです。そこで考えるのが水を通さない粘土質の土で固めること、それが昔ながらの均一型アースダムのため池です。
 
 しかし、東金ダムのように大規模になりますとダム決壊は絶対にあってはならないことです。どんなに透水性の悪い粘土でも、水を通さないということはありません。必ず水は浸透してきます。貯水側の水位線がダム本体の中に突然消えるのではなく、カーブを描きながら落ちて行きます(浸潤線)。その模式が下図です。
浸潤線

 この浸潤線がクセモノです。
 浸潤線の先端が堤体本体の末端から上に達すると危険です。その部分で漏水というわけです。浸潤線は難透水の土層ですと落ち方が激しく、末端まで至りません。その逆に透水性の土層ですと、上の図のように、浸潤線は水平に近くなって末端の高い部分に到達します。このままでは決壊します。そこでいろいろ検討します、形式を・・・。
浸潤線1

 アースダム設計の基本原則はこの浸潤性を制御するところにあり、また構造的強度特性はその次です。止水性があって、水圧・地震その他の応力に耐える強度、これが要求されるわけです。
  
 その両方を満たすための東金ダムの断面が下の写真です。
 まずは、その構造断面を見てください。ダム本体の構造で一番重要な部分が遮水ゾーン、透水ゾーン(ドレーン)、半透水ゾーンとなります。
断面

 貯水の水はまず遮水ゾーンに入り込み、右下がりの浸潤線を示し、透水ゾーンに達します。そうすると、垂直の透水ゾーン(垂直ドレーン)に捕捉されて、水は速やかに排水される仕組みです。結局、半透水ゾーンには浸潤線が至らないという構造です(ゾーン型アースダム)。
 
 半透水ゾーンは、何のためにあるかというと「力持ち」と表現すればよいかも知れません。ダム構造の重要な強度特性と安定性を一手に受け持っています。
 
 ダム本体の安定は綿密な安定計算を行い、上流側(貯水側)の法面勾配を1:3、下流側を1:3.2としています。下流側がゆるくなっているのがミソです。また、上流側は常に水中にありますから下部をしっかり押さえて(カウンターウェイト)安定化を図っているわけです。
 
 このように、ダムのゾーン区分と役割によって、東金ダムは安定をしています。
 
 なお、貯水側は波浪などもありますから、表面保護として敷石が施されています。コンクリート製品でないところが事業者・設計者の感性を示しています・・・”石”は高いのです(笑い)。
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 最後に、本体構造の余談です。
 ダムは、洪水時の大増水をはき出す必要があります。堤体を乗り越えるようですと、決壊に至りますから「洪水吐き」を設置します。コンクリート構造物ですから、要注意です。
 
 ですから、出来るだけ安定した地山に構築する必要があります。アースダム本体と接しない方が地震時などに安全です。やむを得ない場合にのみダム本体に構築することもありますが、一般的にはこの東金ダムのように計画します。その構造は下の写真のようです。
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 そして、またおまけですが、堤体本体にぽつぽつと点があります。これは変位計など常時観測の定点です。これだけの土で出来たダムですから、観測態勢も万全に・・・というわけでした。
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 最後のおまけは
 土木屋のようにシャイなダムサイト広場のしだれ梅です(土木屋は建築と違って名前を出しません、縁の下の力持ちなのです)。
しだれ梅

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 ダム関係の記事を<大百科全書>から引用記載しました。
 
 ダム dam <大百科全書>
 河川を横断して貯水、取水、土砂扞止(かんし)などの目的のために築造される構造物。それぞれの目的に応じて貯水ダム、取水ダム、砂防ダムなどとよばれるが、普通は貯水ダムをさす。貯水ダムは、変動する河川流量を人為的に調節することを目的とするもので、流量が多いときに水をため、渇水時にダムから放流して、農業、発電、水道、工業、舟運などに利用する水を供給するために使われる。また、洪水流量の一部または全部を貯留し、下流の洪水流量を低減し、洪水災害を防ぐためにも使われる。このように貯水ダムは種々の目的に利用されるが、これらのうち、一つの目的だけに使われるものを専用ダム、二つ以上の目的に使用されるものを多目的ダムという。
 取水ダムは、河川水を用水路に取り入れるために水位をせき上げることを目的としてつくられるダムで、高さの低いものが多い。
 砂防ダムは、山地や渓流から流出する土砂を貯留し、下流への流出土砂量を減少させるためにつくられるダムである。→砂防ダム
 ダムは建設材料の面からコンクリートダムとフィルダムに分類される。フィルダムには、土を材料とするアースダムや、石塊を材料とするロックフィルダムなどがある。コンクリートダムは構造の面から重力ダム、中空重力ダム、バットレスダムおよびアーチダムに分類される。→砂防ダム →アースダム →アーチダム →重力ダム →中空重力ダム →バットレスダム →ロックフィルダム〈すけ川 登〉
 
 アースダム <大百科全書>
earth dam 土を盛り、締め固めてつくるダム。断面は台形である。基礎地盤がそれほどよくない所でも築造でき、堤体材料の土も入手しやすく、施工も簡単なので、昔から灌漑(かんがい)用の溜池(ためいけ)として数多くつくられてきた。空海が築造したといわれる香川県の満濃池(まんのういけ)は有名である。現代でもおもに灌漑用のダムとして築造されているが、堤体が土のためにダムの強度が弱く、地震に対する抵抗力も小さいので、高さは最高でも40メートル程度で、小規模なものが多い。洪水が堤体を越流するとダムが決壊するので、洪水流量の大きい河川本流には築造されず、流域の小さい河川や支流につくられることが多い。→ダム〈すけ川 登〉

 施工について
 フィルダムの場合は、アースダムやロックフィルダムの遮水壁の部分は洗浄された基礎岩盤の上に土を敷き、タンピングランマーで土と岩盤が密着するように十分突き固め、その上に土取場(どとりば)からダンプトラックで運搬してきた土を20〜30センチメートルの厚さにブルドーザーで敷きならし、強度と不透水性をもたらすためにシープフットローラー、タンピングローラー、ゴムタイヤローラーなどを使って転圧し、十分に締め固めながら盛り立てていく。土は含水量によって締め固めの度合いが異なるので、適当な含水量を維持するように管理する。ロックは原石山からダンプトラックで運搬し、高さ2メートル程度に積み、水を噴射して岩屑(がんせつ)を洗い流したり、打撃や振動を与えて岩と岩の接触を確実にしながら積み上げていく。フィルダムは完成後沈下するので、あらかじめ沈下量を予測し、その分だけ高く積み上げるようにする。〈すけ川 登〉