風による自立型煙突の振動(その2)-(1)no.459

【1】まえがき
(その1)では、高さ80mの自立型煙突が、春一番の吹くころに激しい振動が発生することから、その制振対策について述べました。具体的には、最初に春一番の吹く頃を見計らって、頂部の風速と振幅の実機測定を行い、その結果、風速20m/sの風に対して、頂部で両振幅80cmの振動の生じていることを確認致しました。
つぎに、その制振対策として頂部に螺旋板を巻き付け、改めて実機計測を実施してその効果を確認したところ、両振幅で5cmに低減していることを報告致しました。
本煙突の制振対策については、事前に風洞実験を実施して、耐風工学的に効果を確認致しております(1)。今回の(その2)では、そのときの風洞実験について述べることに致します。
実験は、二次元模型を用いてばね支持実験を行い、螺旋板の高さ、本数などをパラメータにして、最も効果的な螺旋板の取り付け方法を求めました。次に、縮尺1/45の実物模型を製作してその制振効果を確認いたしました。
今回の(その2)では、煙突を事例とした構造物の風洞実験について、“土木の風景”として紹介させて頂きます。


【2】実験の目的
煙突の筒身に付加物を取りつけて空気力学的特性を改善する方法として、たとえば次のような方法が提案されています。
1)筒身の表面に板またはケーブルを螺旋状に取り付けるか、あるいは板を筒身に平行に取り付ける方法
2)金網、あるいは多くの孔をあけた円筒を筒身の周囲に取り付ける方法
3)後流領域に流れを安定させる板を取り付けて、渦の形成を防ぐ方法

2)の方法は、螺旋板を取り付けた場合と比較して効力係数は小さくなりますが、金網の内側を塗装することが困難であるので、維持管理の面から適当ではありません。
1)の方法のうち、直径の大きいケーブルを筒身に螺旋状に巻き付けることは、実際の工事では難しく、直径の小さいケーブルでは制振効果は期待できません。また、板を筒身に平行に28枚取り付けると制振効果の大きい報告もあります。しかし、28枚の板より螺旋板を取り付ける法が、製作上圧倒的に簡単になります。

以上の考察から、筒身に螺旋板を取り付ける方法が、もっとも合理的と考えられ、ここではこの螺旋板による方法に限定して、もっとも制振効果の大きい形状を求めることを目的に、実験的検討を行いました。

これに関しては、すでにC.Scrutonの研究(2)があります。筒身径をDとするとき、高さ0.1Dの3本の板を螺旋状にピッチ角32°で巻いた場合、制振効果が大きいと報告されていました。しかし、本数、ピッチ角、螺旋板の高さを変化させたときの制振効果に与えるそれぞれの影響について具体的に示されていませんので、予め二次元バネ支持実験を行って、その効果を確認致しました。

【3】バネ支持2次元模型による風洞実験
3.1 実験計画
螺旋板の制振効果の大きい取り付け方法を求めるために、バネ支持2次元模型による風洞実験によって、螺旋本数、ピッチ角度、螺旋板の高さを変化させたときの、振幅の変化を調べました。実験を行った風洞は、高さ2.5m、幅1.5mの吹き出し型風洞で、気流の乱れは1%以下であります。
上記の3つのパラメータの実験範囲について考えてみますと、まず螺旋本数は製作上本数の少ない方が望ましい。逆に、本数が多くなると螺旋板による新たな円形効果が形成され、制振効果の減少することが予想されます。このようなことから、本数は制振効果が著しく変化する2〜6本としました。

螺旋板は高さを高くすると静的抗力係数が大きくなりますので、高さは小さい方が望ましいが、高さが低いと制振効果は大きくなりません。実験は制振効果の変化が著しい、円柱径の5〜10%の範囲で行いました。ピッチ角は製作上角度の小さい方が望ましい。しかし、角度を極端に小さくすると板を筒身に平行に取り付けた状態に近くなり、制振効果の大きくならないことも予想されます。このようなことから、ピッチ角は10°〜30°の範囲で実験を行いました。

3つの実験パラメータをそれぞれ組み合わせると、実験ケースは膨大な数となります。しかし、ここではそれぞれのパラメータの制振効果に与える影響は独立と考え、一つのパラメータの影響を検討するときは、他の二つのパラメータはもっとも最適と思われる値で固定しました。それぞれのパラメータが互いに影響し合うとすれば、ここで得られた結果よりもさらに合理的な取り付け状態の存在することも考えられます。しかし、本実験の目的は、制振効果が強度的に問題のない程度に期待できる、実用的な螺旋板の取り付け方法を見出すことにありますので、パラメータ相互間の影響については、今後の課題と致します。

円柱模型の大きさについては、直径を極端に小さくすれば後流側に発生する渦の3次元効果が生じますので、ここではBlevinsの研究3)を基に、L/D=10近辺にしておけばその影響は少ないと考えました。境界層の影響を避けるために壁面から5cm隔てて端板を取り付けました。
なお、2次元実験は三つのパラメータの制振効果に与える影響について、相対比較を行うことを目的としており、実物煙突と模型の間の相似則は一致させていません。2次元模型の諸言を下記に示します。
直径     Dm=124mm
      重量     Wm=5.52kg
      固有振動数  fm=2.0Hz
対数減衰率    δm=0.05
実験時のスクルートン数を求めてみますと
      2Mδ/(ρD^2 )=(2×(5.32/9.8)×0.005)/(0.125×0.124^2 )=2.8
     
  スクルートンの求めたバネ支持円柱模型の安定曲線図4)によれば、スクルートン数が小さいので、実験は極めて不安定な領域で行っています。
  共振風速は上記のパラメータによって変化しますので、最大風速を求める場合の風速は同一ではありません。螺旋板は厚さ1mmの厚紙を円弧状に切り取って模型に取り付けました。また、振幅の計測は非接触変位計で行いました。

3.2 実験結果
3.2.1 螺旋本数の影響
図―1は螺旋本数の高さ、ピッチ角をそれぞれ0.1Dおよび40°として、螺旋本数を変化させたときの実験結果を示します。図中、実線は螺旋板を取り付けたときの結果でありますが、一点鎖線は螺旋板の高さおよびピッチ角と同じにしたビニールチューブを巻き付けたときの結果であります。
ビニールチューブを取り付けたときは、螺旋板の場合と比較して制振効果が小さくなっています。これは、螺旋板の場合は剥離点が板の端部近辺にありますが、ビニールチューブは丸みがあるので、剥離点がチューブの頂部にはなりません。このため、螺旋板と比較して高さの効果が減少するので、制振効果が大きくならないものと思われます。巻き付け材の断面形状によって、制振効果が大きく変化することが分かります。
図―1の結果より、螺旋本数が3本以上になると制振効果は大きいが、巻き付けの本数としては4本の方が多少効果が大きくなっています。制振効果がこの程度の差であるなら、実験上特に優位性は認められず、実用的に本数の少ない方が望ましい。しかし、ビニールチューブを巻いた場合は、3本よりも4本の方が制振効果は明らかに大きくなっています。
このようなことから、螺旋本数は4本としました。

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図‐1 螺旋本数の影響


3.2.2.螺旋のピッチ角
図―2に螺旋本数(4本)、無次元高さ(d/D)をそれぞれ一定にして、ピッチ角を変化させたときの制振効果を示します。ピッチ角の影響を顕著にするため、d/Dを小さくし、共振振幅を大きくしました。図―2からピッチ角は制振効果に大きな影響の生じないことが分かります。40°の場合若干振幅が小さくなっていますので、ピッチ角を40°として以後の実験を行うことにしました。

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図―2 ピッチ角の影響


3.2.3  螺旋板の高さの影響
図―3は螺旋本数を4本、ピッチ角を40°として、螺旋板の高さを変化させたときの制振効果を示します。螺旋板の高さd/D=0.075以上であれば無次元振幅が非常に小さくなりますので、十分な制振効果が期待できます。
なお、本来ならd/D=0.075, 0.10の場合で、ピッチ角を変化させたときの実験をしなければなりません。しかし、d/D=0.75が0.075以上になれば、振幅が著しく小さくなりますので、実験的にピッチ角の優位性を求めることは難しくなります。Scrutonは螺旋板高さ:0.1D, 本数:3本、ピッチ角:32°とする取り付け方法を提案しています(2)。図-1の螺旋本数:3本の場合で考えてみますと、ピッチ角に若干の相違がありますが、ピッチ角の影響は小さいと考えることができますので、今回の実験とよく一致していると言えます。 (続く)  (文責
島田忠幸)

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http://blog.livedoor.jp/gijutunohiroba/archives/51909426.html その1



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