■血が殆ど出ず、イマジナリーラインも定まらず観てて疲れる『ワールド・ウォーZ』なんだけど……やっぱり夏映画で一番面白かった件。

photo__001456

今夏観た映画で一番良かった『ワールド・ウォーZ』こと『WWZ』。血も殆ど出ず、さらには人体部位欠損描写もないファミリー層もターゲットにしたゾンビ映画がここまで興行成績を塗り替えるとは正直思いもよらなかった。そういう意味ではエポック・メイキングなゾンビ物として殿堂入りさせるべき映画ではなかろうか。

photo__001459


少々褒め過ぎかもしれないが、原作を読まず鑑賞に挑んだ『WWZ』からなのかもしれないけど他のゾンビ映画と比べると新しい描写のオンパレード。オチ自体が今まで見たことのない新解釈だったこともさることながら、オープニング部分がいきなり怒涛のクライマックス的様相。

photo__001460

今までゾンビ映画を観たことのない無印ファミリー層を決して飽きさせない、阿鼻叫喚の都市部壊滅地獄絵図は素晴らしいの一言である。

photo__001457

しかし、残念な部分もある。それは登場人物たちのイマジナリーラインが定まらない手持ち撮影のカメラワーク。あの切り返しのカットをふんだんに見せられては間違いなく3D酔いしてしまうはず。きっと2Dで観ても同じじゃないかなぁ。

photo__001461

振り返ってみるとかつて発生したロサンゼルス暴動をトーレスしたスーパーマーケットでの略奪シーン(当時LAに住んでいたので被害受けた実体験からの印象)におけるショッピングカートを利用した物資の万引や”ゾンビ”なるキャラクターは架空の存在扱いだったりと、他のゾンビ映画とは少々アプローチや物語構成も異なっており、これがR指定じゃないゾンビ映画なのかと良い意味で異彩を発している。

photo__001464

『WWZ』は全米公開時、普段映画をあまり観に行かないインドア系ティーンエイジャーを対象にしたマーケティングも行なっており、ロメロ世代なクラシカル系ゾンビ映画ファンの客層を正直狙っていなかったという。むしろゾンビ映画を観たことのない客層にプライオリティーを置いていたそうな。

photo__001463

それはCGをフル活用してのゾンビ映画にしたことで至極納得がいく。CGゾンビをメインに据えることは当初からの決定事項だったそうで(イスラエルのゾンビウォール箇所なんて1年かけて大群無双シーン作ったほど)、特殊メイクだけのアプライエンスでは追いつかない作業工程を懸念し、VFXチームは自社開発の特殊なツール”ALICE”を導入した。

photo__001466

数千体のCGゾンビが作られ命を吹き込まれたのだが、デジタルクリエイターたちにはビデオゲーム畑出身者も多く、なんとHavokエンジンも多くのシーンで使われているとのこと。

photo__001467

そして劇中におけるゾンビ大群無双シーンを作る上で参考にしたのは『ロード・オブ・ザ・リング』で大挙として襲ってくるオークなどの敵襲撃シーン。砦を襲ってくる無数の敵を旅の仲間たちが倒していくサマを『WWZ』がゾンビに置き換えて踏襲。

photo__001458

photo__001465

全米で『WWZ』が公開された後、こちらのツール”ALICE”に興味抱き始めたデジタルアーティストたちはとても多いんだとか。なぜならば映画で大勢のエキストラが必要な際に、”ALICE”が大活躍してくれそうだからなんだとさ(*´∀`*) エキストラは人間である一方、思いもよらぬことになることも多々。

photo__001462

当然、人を集めることも大変な労力がかかる。だがCGキャラクターは作り手の指示をしっかり守り、人物のモデリングを既に作っておけばいくらでも他作品で流用できる。もしかしたら映画界を変えてしまうツールかもしれない。(だけど全部がCGじゃないってこともお忘れずに!)

photo__001469


■『ワールド・ウォーZ』作品評
>GOOD
過去最多のVFXだらけのゾンビ映画だが、それが逆に功を奏して大作感を演出するのにプラスの作用になっている。マニア層を2番手にまわし、最初からファミリー層や一般層を狙った作品撮りなところにチャレンジ精神を感じた。血の出ないゾンビ映画に新鮮さを得られた。
>BAD
イマジナリーラインがメチャクチャな忙しすぎるカメラワーク。チャプター分けされたような物語構成に好き嫌い割れる気がする。別にブラッド・ピットじゃなくても面白い映画だったと思う。最初から続編狙いないやらしい描き方を感じる。