2006年10月08日

東大卒医師が教える科学的「株」投資術:1

「みんなの投資」のアマゾン類似商品に、以前2chでご紹介したことがある
KAPPAさんの書かれた書籍がありましたので読んでみました。

東大卒医師が教える科学的「株」投資術

最近購入した投資本は、最後まで読んでみても
本棚に残さずに処分してしまうことが多かったのですが、
久しぶりに読み返す価値のある本と感じています。
# 以前、仕事で臨床データのクレンジングをしていたので
# 個人的に「エビデンス」というワードに響いたのかもしれません

私が投資本をお勧めする際に重視する

  • 具体性(投資本は実践できなければ価値が無いと考えています)
  • 分かりやすさ(今年のイグ・ノーベル文学賞は「必要性に関係なく
    用いられる学問的専門用語がもたらす影響について」だそうです)
  • 有効性(可能な限り中立的なデータを用いること)
  • 作者の背景(読者に対して金融ビジネスを行っていない)

をクリアしている書籍なので、間違いなくお勧めではあるのですが、
(賞賛ばかりでなく)ネガティブに感じた僅かな部分についても
レビューを書いてみたいと思います。


KAPPAさんの投資手法は、一般的には「バリュー戦略」
と呼ばれているものに類するかと思います。
本の内容は、以前から公開されているホームページ
の補足説明(優位性の検証、詳細な説明、投資知識の定義など)
になります。
# ずっと持論がぶれていないこと、(リアルタイムではありませんが)
# ポートフォリオやリターンを公開していることなども、
# 信頼性を高めるのに役立っていると思います。

手法の優位性を示す為に、指標やレポート、参考文献からの引用
などを豊富に用いられていて、また投資信託を利用している方にも
馴染みの深い「行動ファイナンス」や「効率的市場仮説」、
「ドルコスト平均法」、「長期投資」などについても、
教科書どおりの正しい記述がなされています。
# ただし、一部、私とは見解が異なります
バリュー戦略の負の面についての記述も見られ、
全体としてフェアな印象を受けます。
# 例えば、バリューに陥りがちな「万年割安株」など

そして何よりも特筆すべきなのは、利用する各ファクターの
測定方法が具体的(実数で出されています)であり、
また現実的(本当にトレードしている方でないと書けない内容)
であることでしょう。バリュー戦略本にありがちな
ファンダメンタルからのアプローチに始まって、
企業価値の理論にひた走るのではなく、実際の市況
(有価証券の値動き)も平行して見ているようで
全体として、実戦的な内容に仕上がっていますね。


ただ以下の点では、私と見解が異なっています。

・効率的市場仮説[P35]
バリュー戦略の投資本なのでしょうがない事なのですが、
効率的市場仮説については、説明が少々雑なように感じます。
# もちろん、編集方針や紙面の都合かもしれません

まず、効率的であるかどうかは「全か無か」で論じるものではなく、
ウィーク〜ストロングの段階で(学問上は)定義されています。
ただし、市場に参加しているインデックス派たち(私も含みます)は、
市場には全ての情報が織り込まれているとは考えていないはずです。
ほとんどが、マルコフ性(最新のデータほど強い影響を受ける)を
前提に、フラクタルに似たランダム性があると捉えていると思います。
# ただし、KAPPAさんも「アクティブを買うよりはインデックスを
# 買った方がよく、これで妥協するのもひとつの考え方」とされています。
# 要は、各人が投資に割く時間によりけりということかもしれません。

あと細かなことですが、「効率的市場仮説は事実とそぐわない」[P37]
とされながらも、理論と異なる高ROEの説明[P119]では「織り込まれている」
「平均回帰」といった効率的市場仮説に付随する用語が使われているのは
少し気になりました。
# ただし、優秀なトレーダーの方は持説に溺れることなく、俯瞰して物事を
# 見ることが多いと思いますので、矛盾が生じることも多々あると思います。
# (ひとつのロジックで相場を説明できるわけがない、
# 理屈どおりに相場が動くならLTCMが破綻するはずがなかったのですから)

・ドルコスト平均法[P171]
KAPPAさんの書かれている通り、ドルコスト平均法に有利不利はありません。
しかし、(特に私の運用スタイルの場合は)標準偏差が下がることに
意義があると考えています。大きく儲ける可能性と小さく儲ける可能性、
大きく損をする可能性と小さく損をする可能性を対比させた場合、
損失の大小は日常生活に深刻なダメージを与えることもありますので、
投資で注視すべき点はやはり損失の可能性の方になると考えます。
# 逆に、リスクフリー資産の管理もしっかりとやれるのであれば、
# リターンに注視するのもアリだと思います

・長期投資[P178]
標準偏差は期間の平方根に比例するので、1年あたりに
換算すると標準偏差が減ったように見えるとされています。
これはその通りなのですが、長期投資の妙味は、利益確定時の税金
による複利効果ダウンの回避と売却手数料の節約が大きいと考えます。
最も重要な「複利効果」と「回転率」を引き合いに、
どの程度パフォーマンスの劣化が生じるのか、
触れて欲しかったなぁと思います。
# といっても、上記は主題ではないので私のワガママですね


と、ここまで書いて、何故かマイナスの方に
強く振れるようになってしまいました・・・。
# レビューを公平にしようと、わざと
# ネガティブな内容も入れてみたのですが・・・

上記は意見の相違点であり、次にネガティブなコメント

  • 米国市場のデータで一部の有用性を代用している
  • 定数の説明が無い
    (とはいえ、私も分散比率の算出説明を省いています;-)
  • P/LやB/Sの正確性を前提としている
    (エンロンやライブドアは氷山の一角?)
  • ひとつの市場の投資手法よりもアセットアロケーションの方が重要

を書こうと思っていたのですが、今日はここでいったん止めます。
# 明日以降に、日を改めて書き出してみます

繰り返しになりますが、大部分は納得させられる内容であり、
しかも否定的な部分はリターンへの影響が軽微、
つまりどうでもいいことであって、同意できる部分の
リターンの方がはるかに勝ると考えています。


Posted by ginzajin at 23:35