pamphlet-social network世界最大の映画祭である第83回アカデミー賞授賞式が、今年も2月28日の未明に行われる。

ノミネート作品の発表は、2月5日(※訂正:1月26日)。現時点(1月末)ではまだ発表されていないが、間違いなくこれが最有力候補になるのではないだろうか。
その理由とは、アカデミー会員の多くが「フェイスブック」の利用者だから? それとも…。2010年、アメリカ作品。上演時間:120分。

2003年のある夜。アメリカで最も古く、最も権威あるハーバード大学でコンピュータサイエンスを専攻していた2年生のマーク・ザッカーバーグは、バーでガールフレンドのエリカを怒らせてしまう。それはマークの心ないひと言からだった。

どうせボストン大だろ。

エリカにフラれたマークは、寮の自室に戻ってヤケ酒のビールをアオりながら、彼女の悪口をブログにカキコんでいた。酔いが回ってきたマークが、ほんの遊び心から大学のサーバーにハッキングし、名簿の顔写真で女子学生をランク付けするサイト「フェイススマッシュ」を親友のエドゥアルド・サベリンらと作ると、それがたちまち男子学生の間で噂となり、数時間で数万アクセスに達して大学の回線をパンクさせてしまう。

337475_01_02_02こうしてマークの名は、一躍校内に知れ渡ることとなった。
女子学生からの反感とともに…。

結局マークは半年間の観察処分。そんなマークにハーバード大の社交クラブ「ポーセリアン」の主要メンバーである双子のウィンクルボス兄弟から依頼が舞い込んでくる。
それは、クラブのメンバーが気軽に利用できるSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)サイトを作ってほしいというものだった。クラブの入会を望んでいたマークはこれを快諾、早速プログラミングに取り掛かった。

337475_01_13_02その後マークは、進捗状況を確かめようとするウィクルボス兄弟からの連絡を「都合が悪い」「試験がある」と言ってのらりくらりとかわし、彼らが望む仕様とはまったく違うサイトを作り上げていた。
それが全世界で5億人が利用する「フェイスブック」の誕生である。マークはサイト運営のために会社を設立し、千ドルの資金を提供したエドゥアルドをCFO(最高財務責任者)に、そして自らはCEO(最高経営責任者)に就任した。

2004年2月。どんなに待ってもマークと連絡が取れないウィンクルボス兄弟は、爆発的に会員数を増やしている「フェイスブック」という人気サイトの存在を知る。サイト創設者の名前はマーク・ザッカーバーグ。自分たちが依頼した相手だと知ったウィンクルボス兄弟は、アイデアが盗用されたとして、弁護士を通じてサイトの停止警告を送った。

337475_01_08_02その後もマークは警告を無視し、会員数を順調に増やし続けていた。その頃エドゥアルドはと言えば、そろそろ資金が底をつく会社のために、広告主探しに奔走していた。ニューヨークでは会合を開き、投資家たちに売り込むエドゥアルド。しかし、クールではないという理由から広告掲載を嫌うマークと衝突してしまう。実はマークが親友のエドゥアルドを避けるようになった理由の一つに、ハーバードの社交クラブにエドゥアルドだけが入会できたこともあったのだ。

マークが別人のように変わってしまったのには、もう一つの原因があった。それはマークと同い年で音楽ファイル共有ソフト「ナップスター」を作ったIT界のカリスマ、ショーン・パーカーとの出会いだった。ショーンの派手で現実味のない夢のような話と、現実路線として会社を成長させようとするエドゥアルドとの折り合いの悪さが遂に決定的となり、マークは親友のエドゥアルドと距離を置くようになった。
やがて、会員数は百万人を超え、会社の資産価値は数億ドルに達していのに、エドゥアルドだけは蚊帳の外だった…。

337475_01_01_02こうしてマークはウィンクルボス兄弟からも、エドゥアルドからも訴えられてしまう。自分のすべてである「フェイスブック」のために、親友を裏切ってしまった史上最年少の億万長者、マーク・ザッカーバーグ。彼が友と引き換えに手に入れたものは何だったのだろうか─。

フェイスブックの利用者数は、約5億人。これは2010年に国連が取りまとめた世界人口の推計69億人で計算すると、14人に1人という勘定。国としてとらえれば中国、インドに次ぐ世界第3位の大国ということなる。しかもこの国民は高度な知能を持ち、圧倒的な経済力を持つ。これはもう「世界最強の国家」と言えるのではないだろうか。その国の王に君臨するのが、弱冠26歳のマーク・ザッカーバーグである。フォーブス誌によると、彼の推定資産は69億ドル。日本円に換算したら、約5700億円。想像を絶する金額だ。

ハンバーガーや牛丼が、一体何杯食べられるのだろう。

現在の億万長者ランキングでは、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏や、アップルのスティーブ・ジョブズ氏、オラクルのラリー・エリソン氏、グーグルのサーゲイ・ブリン氏とラリー・ペイジ氏、アマゾンのジェフ・ベゾス氏など、IT業界のカリスマが上位を独占する。ちなみに、第2位にはウォーレン・バフェット氏がランクインしているが、彼は投資家。つまり、みんな、

無から金を生み出す錬金術師。

である。こんなことを言ったら負け犬の遠吠えでしかないが、もはやITや金融システムは、第一次産業や第二次産業の従事者がどんなに努力をしてもけっして見ることができない高みに達してしまった。しかし、これこそが今日の経済の仕組み。時代の寵児と言われようが、大量に金を積んだバスにわれ先にと飛び乗った者が勝者なのだ。

ところが、映画の中のマークはお金に執着する亡者ではなく、ネットというオモチャを与えられた「大人コドモ」として描かれている。彼がウィンクルボス兄弟を出し抜いたのは、運動が苦手なマークが家柄も良くスポーツ万能でイケメンのウィンクルボス兄弟に嫉妬した「負のエネルギー」が根底にあるのではないだろうか。
エドゥアルドへの対応にしたってそうだ。自分が入会したかったハーバード大学の社交クラブにマークが先に入会されてしまった悔しさや、自分が立ち上げた「フェイスブック」の運営について、経済的な口出しをされたからに過ぎない。
そして、マークは札付きのワル(映画の中で)のショーン・パーカーの影響で、大切な親友をなくしてしまう…。みんなが去って行き、もっとも信頼できる唯一の友達を失ったマークが、自分のサイトに登録していた元カノに友達の申請をしているシーンがその寂しさを象徴している。承認画面になるまで「F5キー」を押し続けるマークの表情が印象的だ。

原作は、ベン・メズリックの著書『facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男』を、『ア・フューグッドメン』『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』のアーロン・ソーキンが脚本化。物語が時系列で進む原作を、法廷の場面から回想シーンで時間軸を前後させた映画的な手法が今となっては観やすく、マークの裏切りと孤独感がとてもよく描かれている。実際のショーン・パーカーがこの映画を観て、「映画としては楽しめたが、これは事実ではない」と言っている通り、関係者は法廷の和解案で守秘義務が設定されており、これは脚本家の想像でしかないが、人間を描くという上においては、それは億万長者だろうが、天才だろうが関係ないはず。これこそ真実だろう。

常に進化し続けるデヴィッド・フィンチャー監督は、『エイリアン3』から『ファイト・クラブ』まで、SFやクライム・サスペンスなどカルトな映画を作り続きてきたかと思えば、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のような感動的なストーリーまで作り上げる。
今回は「これがフィンチャー?」と見紛うような完成度だ。特に冒頭のマークとエリカの会話シーンでは、セリフの洪水に度肝を抜かれる。ただし、随所にフィンチャーらしさが映像に現れているのも見逃してはいけない。たとえば、画面のピントだったり、ウィンクルボス兄弟を一人の俳優にどう演じさせたかについてだったり。

マーク・ザッカーバーグ役には『イカとクジラ』『ゾンビランド』のジェシー・アイゼンバーグ。アカデミー賞の前哨戦であるゴールデングローブ賞では惜しくも主演男優賞を逃すも、その実力は映画を観た人なら誰でも分かる。あまりに似すぎて本物のマーク・ザッカーバーグと同じぐらいイケてないほど。本物の方がもっとイケてないが。
マークと法廷で争うエドゥアルド・サベリン役には『大いなる陰謀』『Dr.パルナサスの鏡』のアンドリュー・ガーフィールド。一人だけ置いてけぼりされた切なさが、彼の逞しい眉に籠められている。残念ながら彼もゴールデングローブ賞の助演男優賞を逃している。
IT界のカリスマ、ショーン・パーカー役には「イン・シンク」として「グラミー賞」を受賞経験を持つ、『ブラック・スネーク・モーン』のジャスティン・ティンバーレイク。ミュージシャン出身の俳優ではあるが、ショーン・パーカーには彼とカブるところがあるのだろう。彼の演技になぜか憎々しさを感じたが、それは彼が昔、

キャメロン・ディアスと付き合っていたからかも知れない。

その他のキャストに、アーミー・ハマー、マックス・ミンゲラ、ルーニー・マーラー、ブレンダ・ソング、ジョシュ・ペンス、ブレンダ・ソングなど。

天才は天才を知る、ということだろうか、この映画では天才の孤独感がよく描かれていた。もちろん、小生もこれには、

とても、よく理解できた。