徒然なる日常

2019年08月

2019年08月31日

カテゴリ:: 映画の話

ロケットマン

全世界の興行収入が９億ドル以上。イギリスのミュージシャンを題材にした伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットが関係しているかどうかはわからないが、ここに新たな伝記映画が誕生した。
その名も『ロケットマン』。だが、この映画とそれとでは決定的な違いがある。それが世間の評価にどう影響するのか、それは見ものだ。２０１９年、アメリカ映画。上映時間：１２１分。

イギリス郊外のピナーで育ったレジナルド・ドワイト少年は、我が子に無関心な父親のスタンリー（スティーブ・マッキントッシュ）と、母親のシーラ（ブライス・ダラス・ハワード）に対して、常に愛を求めていた。だがそんな彼に音楽の才能があるとがわかると、厄介払いができるという理由だけで王立音楽院への入学が許され、レジーもそこからドンドン音楽へとのめり込んでいく。

やがて成長し、エルトン・ジョンと改名した青年（タロン・エガートン）は、意を決して門を叩いたレコード会社で運命的なで果たす。たまたま同じレコード会社に売り込みに来ていたバーニー・トーピン（ジェイミー・ベル）である。バーニーが書く美しい詩に一瞬で惚れ込んだエルトンは、二人で曲作りを始め、そこで生まれたのが《僕の歌は君の歌（Your Song）》だった。
この曲が多くの人の心を掴んでデビューが決まるとアメリカへも進出。ＬＡの伝説的なライブハウス《ドルバドール》から招待され、ライブを行うことになった。結果、ライブは大成功。こうしてエルトンはライブでの成功をきっかけに、一躍スターダムへと駆け上がっていく。

チケットは常に完売で、アルバムの売り上げも順調に数字を伸ばしていたエルトン。だがそれと反比例するように孤独を感じていた。後のマネージャーとなるジョン・リード（リチャード・マッデン）に心を許したのもそんな気持ちからだった。エルトンは貪るようにリードの愛を求めたが、リードは彼を商品としてしか見ていなかったのだ。いつしかエルトンは薬物に逃げ道をもとめるようになる──。

タイトルは彼のシングル《ロケットマン（Rocket Man）》から。グラミー賞にノミネートされること３４回（うち受賞は５回）。アルバムとシングルのセールスを３億枚以上を記録した、イギリスが生んだもっとも偉大なミュージシャンの一人であるエルトン・ジョン。本作はそんなスーパースターの生い立ちから現在までをつづった伝記映画であるが、その内容はかなりスキャンダラスだ。

代表作《僕の歌は君の歌》の誕生秘話から、両親からモラハラにも近い育て方をされことや、同性愛に目覚めるきっかけとなったマネージャー、ジョン・リードとの出会いとその後の確執。アルコールやセックス、違法薬物に溺れて治療を受けていたこと。そして若い頃から徐々に頭髪が寂しくなってきたことなど、映画では音楽の神に愛され、富と名誉をほしいままにしたエンターテイナーの光と影が赤裸々に描かれている。ともすればゴシップともとれる内容も含まるため、訴訟に発展しかねないか気になるところだが、本作はそのエルトン・ジョン本人が製作総指揮をつとめており、その心配はご無用のようだ。
そんなプロデューサーからお墨付きをもらったのが、『キングスマン：ゴールデン・サークル』ですでにご本人との共演を果たしているタロン・エガートン。まだ売れる前の演劇学校時代に歌唱コンクールで優勝した経験を持ち、毎日数時間３ヵ月間にも及ぶピアノの特訓の成果で、本作では吹き替えなしで歌とピアノの演奏を披露している。
特に印象が残ったのが、バーニー・トービンが書いた詞にエルトンがピアノの即興でメロディを付けていく場面。歌詞を口ずさみながら探り探りに鍵盤を弾いていくと、その旋律はいつの間にか《僕の歌は君の歌》に。この弾き語りのシーンには思わずグッとくるものがあったが、その一方でバラード調にアレンジされた《アイム・スティル・スタンディング（I'm Still Standing）》を歌う場面では、ほんの一部だけ声が出ていなかったように感じた。
だがいずれにせよ、瓜二つとまでは言えないまでも、ピアノと歌唱力はかなりのレベルだということは素人目にもわかった。まさしく本作がタロン・エガートンの新境地に立った代表作と言い切ってもよいだろう。ちなみに、昨年度のアカデミー賞主演男優賞を受賞した『ボヘミアン・ラプソディ』でフレディー・マーキュリーを演じたラミ・マレックでさえ、歌は吹き替えだった。ということは、もしかして……。

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ラミ・マレック

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

2019-04-17

映画について言えば、監督のデクスター・フレッチャーは、その『ボヘミアン・ラプソディ』の二番煎じ（※）と言われるのを嫌ったのだろうか、ただのフィルムライブや伝記映画としてではなく、ミュージカル風に仕立てあげている。このため物語の途中で登場人物が突然歌いだしたり（なんと、父親や母親までが）、大勢のエキストラと一緒に踊りだしたりする楽しいシーンが随所に挿し込まれている。もちろん、すべてエルトン・ジョンの曲で、どれも書下ろしのミュージカル曲のようにシーンとマッチしていたのは言うまでもない。

残念なのは、その勢いが最期まで持続しなかったところだ。物語の構成もあるだろうが、終盤では急に電池が切れたように失速しているため、ジョンのような軽やかなステップで劇場を後にすることはできなかった。
※当初『ボヘミアン・ラプソディ』の監督はブライアン・シンガーがつとめていたが、途中で職場放棄を理由に解雇されたため、その後任としてデクスター・フレッチャーが抜擢された。

このようにイギリスには、フレディ・マーキュリーやエルトン・ジョン以外にも、まだまだ映画化できそうなミュージシャンがいる。たとえば、デヴィッド・ボウイやジョージ・マイケル、ボーイ・ジョージなどなど。ところで、そんな彼らの共通点と言えば……。

タグ：: #デクスター・フレッチャー; #タロン・エガートン; #ジェイミー・ベル; #ブライス・ダラス・ハワード; #リチャード・マッデン; #チャーリー・ロウ; #スティーブ・マッキントッシュ; #ジェマ・ジョーンズ; #ステファン・グラハム; #テイト・ドノヴァン

2019年08月25日

カテゴリ:: グルメの話

山利喜本館 [森下]

ここは長年、江東区民に愛されている大衆居酒屋。いつも繁盛しており、平日は予約をしないとまず入れないと考えたほうがいい。でもその晩は、たまたま空いていたのだった。

勝どきにあるハンバーガー店の帰り、口直しにと立ち寄ったのがこの店である。時刻にして午後８時半ぐらいだっただろうか。ちょうど帰る客がいるということで、席を作るまでの３分ほど待たされた程度で、１階フロア奥隅の席に通された。ちなみにこの建物はちょっと変わったつくりになっていて、ビルを入ってすぐの階段を数段上った先が１階に、下った先が地下席になっている。また１階の上、つまり２階にも席があって、全部で７８席とそこそこのキャパがある。それが毎日いっぱいになるのだから、某グルメサイトのポイントの高さもうなづける。あのハンバーガー屋にもわけてあげたいぐらいだ。

靴を脱いで、掘りごたつみたいな感じの席に着き、メニューを見る。ビールはやめてとりあえずレモンハイを、ほかにつまみとして名物の煮込み（５８０円）、南まぐろ刺身（９００円）、ポテトチーズ焼（６５０円）を注文した。お腹がやや膨れ気味だったので、もう一つの名物のやきとんは次回にとっておくことにした。

まずは煮込み。味噌は赤だし。ホルモン焼き屋にあるような腸まる出しのモツはトロトロに煮込まれており、その上にたっぷりのネギがのっている。器はチンチンに熱いので注意が必要だ。実は煮込みには２種類あって、玉子入りというのがもう一つのメニュー。今回頼んだのは玉子なしのほうだが、そっちも試してみればよかった。味はけっこう濃いが、それがつまみに合う。

赤身とトロのまぐろの刺身は、専門店じゃないので特筆すべきところはなし。それでもこれが食べたかった。日本酒が飲みたくなるのを抑えてレモンハイを追加する。ちなみに、この店では、レモンサワーではなく「レモンハイ」と呼ぶ。レモンは自分の力で絞るのがこの店のルールである。

意外に頼んで正解だったのがポテトチーズ。熱々のグラタン皿にポテトが並べられ、その上にたっぷりのチーズをのせてオーブンで焼いたら完成。こういった単純な料理に舌鼓を打つのが大衆居酒屋の醍醐味だ。さらにレモンハイを追加する。

時間もまだ早かったし、もう１軒行きたかったが、今週は忙しかったのでここまで。うちに帰ってビールを１缶飲んだらバタンキューだった。

山利喜（やまりき）本館

東京都江東区森下２丁目１８－８
TEL：03-3633-1638
営業時間：午後５時～午後１０時
定休日：日曜・祝日

タグ：: #江東区; #森下; #居酒屋; #焼きとん; #ワインバー; #煮込み

2019年08月25日

カテゴリ:: グルメの話

wagyu to worldwide [勝どき]

飲食店をネットで検索する際に、グルメサイトのポイントは店選びの大きな判断基準になるが、そのポイントは必ずしも味だけで決まるものではない。たとえば某大手グルメサイトの場合、評価は「料理・味」「サービス」「雰囲気」「コストパフォーマンス」「酒・ドリンク」の５つの項目から、利用者の投票によって独自のアルゴリズムで採点される。
つまり、ポイントが高いからといって必ずしも料理が美味いものでも、低いからと言って必ず不味いものではない。だが、もちろん高いにはそれなりの理由があるし、低いにはそれなりの理由がある。

少々前置きが長くなってしまったが、久しぶりにハンバーガーを食べたという話。それも今年の６月にオープンしたばかりの、和牛の肉を使った専門店である。場所は、都営大江戸線「勝どき」駅Ａ３出口から徒歩３分、晴海通りをトリトンスクエア方面へ向かう途中で東仲通りが見えたら右折、すぐ左にトヨタのディーラーがあるのでその前。
ここは店ができる前から知っているが、なぜこんなところに、というぐらいに辺ぴな場所である。もっとも、このあたりは再開発が盛んであるため、今後大逆転できるぐらいの可能性もあるのだが、それにしたって……。

店を訪れたのは、土曜日の午後７時ちょっと前ぐらい。普通であればどの飲食店も、特にアルコールが置いている店は書き入れ時なはず。実際、晴海通りに面した餃子屋や立ち食いステーキの店は満杯だった。だがこの店はというと、その時の客は、家族連れの３人のみで、アメリカン・ダイナーを意識した、お洒落な店内に流れる陽気な洋楽が寂しく感じるほど。つまり、３２席ある店内が余白だらけの状態である。

窓際のテーブル席に通され料理を見る。メニューは、メインのハンバーガーや、和牛を使ったカレーの他に、おつまみ的にハムやサラミ類が充実している。ドリンクはキリンやバドワイザー、ギネス、コロナといった大手メーカーものから、よなよなエールや常陸野ネストビールといったクラフトビールまで。その他にもワインやハイボール、カクテルも各種取り揃えられている。ちなみに、肉はすべて和牛だというハンバーガーのメニューはこんな感じ。

【ハンバーガーのメニュー】
松坂牛ローストビーフバーガー　１６５０円
シンプルバーガー　　　　　　　１０００円
　〃　　松坂牛　　　　　　　　２０００円
ハンバーガー　　　　　　　　　１１５０円
　〃　　松坂牛　　　　　　　　２１５０円
ダブルバーガー　　　　　　　　１７５０円
　〃　　松坂牛　　　　　　　　３３５０円
チーズバーガー　　　　　　　　１４５０円
　〃　　松坂牛　　　　　　　　２４５０円
ダブルチーズバーガー　　　　　２３５０円
　〃　　松坂牛　　　　　　　　３９５０円
アボカドチーズバーガー　　　　１８００円
　〃　　松坂牛　　　　　　　　２８００円
テリヤキバーガー　　　　　　　１３００円
　〃　　松坂牛　　　　　　　　２３００円
テリヤキエッグバーガー　　　　１５５０円
　〃　　松坂牛　　　　　　　　２５５０円
テリヤキチーズバーガー　　　　１６００円
　〃　　松坂牛　　　　　　　　２６００円
ベーコンバーガー　　　　　　　１４００円
　〃　　松坂牛　　　　　　　　２４００円
ベーコンチーズバーガー　　　　１７００円
　〃　　松坂牛　　　　　　　　２７００円
ベーコンエッグチーズバーガー　１９５０円
　〃　　松坂牛　　　　　　　　２９５０円
エッグバーガー　　　　　　　　１４００円
　〃　　松坂牛　　　　　　　　２４００円
エッグチーズバーガー　　　　　１７００円
　〃　　松坂牛　　　　　　　　２７００円

わりと強気な価格設定のような気がするが、美味ければ問題はない。ここはハンバーガー（松坂牛）とキリン一番搾り樽生ビール、シーザーサラダ（８００円）、オニオンリング（６５０円）を注文した。

まず出てきたのがサラダ。ロメインレタスに水菜、カリカリベーコンにクルトン、チーズとドレッシングが振りかけられており、その上にポーチドエッグがのせられたオーソドックスなもの。個人的に卵がもう少し柔らかくても良かったが、それは好みの問題だ。

オニオンはあの値段でこの盛りはちょっとさびしい気がするが、強気なのだからしょうがない。おそらく原価率は１割以下だろう。もしかして５分ぐらいか。味はいたって普通だった。

そしてお待ちかねのハンバーガーが出てきた。具はレタスとトマト。刻んだオニオンとピクルス。香ばしく加熱されたバンズには、焼印が押されている。つけあわせは、某ハンバーガーチェーン店が出すような業務用と思しきポテトが少量。この値段ならもう少しこだわりがあっても良いのでは？
ハンバーガーをひと口。そしてその味に驚愕する。こんなに違うものなのか。どの店で食べたハンバーガーよりも肉が美味い。肉汁はこれでもかと言わんばかりに溢れだし、トマトの水分とあわさって皿がビチョビチョに。もしかしたらトマトとレタス抜きのシンプルバーガー（松坂牛で２０００円）のほうが良かったかも。
とにかく、それぐらいに肉汁が溢れだしている。適度な噛みごたえがある肉は、ひと口噛みしめるごとにうま味が口の中に広がり、明らかに外国産のそれとは違うのがわかる。若干の甘みも感じられてハンバーガーとして最高峰と言っていい。じゅうぶん値段に見合ったものだと思った。大変美味しゅうございました。

そこで余計なお世話なのを承知で、どうしてこんなにも客がいないのか考えてみた。まずは場所。このあたりは近くにトリトンスクエアがあるため、平日はそれなりに賑わうことが予想できるが、所詮はハンバーガー店なので長居することもなく、飽きられてしまいがち。それにその日は土曜の夜だったため、ビジネスマンはほぼ皆無。現時点では近くの住民に期待するのは難しい。ならばもういっそのこと、土日は定休日にしても良かったのではないか。
それとサービスだが、実はこれが一番大きい。当日は２人で来店した。客は前述したとおり３人。それなのに、店員はわざわざ２人掛けの狭いテーブル席に案内する。こんなに空いているのに、わざわざ２人席に？
「料理をたくさん注文したいので、広い席にしてもらえませんか？」とお願いして４人席に変えてもらった。混んできたら移動すればいいだけの話だし、こういうことをちゃんと客は見ているのだ。こういうのがあると、１度行ったらもういいや、となるのだ。美味かっただけに残念。さて、いつまで続くことやら。

https://www.instagram.com/wagyutoworldwide/

wagyu to worldwide（ワギュートゥーワールドワイド）

東京都中央区勝どき２丁目１２－７
TEL：03-5534-9995
営業時間：午前１１時３０分～午後３時、午後５時～午後１０時
定休日：なし

タグ：: #中央区; #勝どき; #ハンバーガー; #カフェ; #バル・バール

2019年08月24日

カテゴリ:: 本の話

バイバイ、ブラックバード / 伊坂幸太郎

世の中には、他人が聞いたら怒り出してしまいそうなことで真剣に悩んでいる人がいる。たとえば、金がありすぎて困っている人。濡れ手に粟状態で金がどんどん入ってくる麻○王のような人は、きっとそんなことが悩みなのかもしれない。ほかにも才能がありすぎて困っている人や、頭が良すぎて困っているような人は、もはや悩みを通り越して自慢にしか聞こえない。
そんな悩みの中で、まったく共感できないのが、「モテすぎて困っている人」である。本作の主人公がまさにそんな男なのだが、そう上手くいかないのもまた人生である。

バイバイ、ブラックバード (双葉文庫) [文庫]

伊坂幸太郎

双葉社

2013-03-14

　バイバイ、ブラックバード　Ｉ

　■

　鹿狩りは分かる。もちろん、あのつぶらな瞳をした罪のない鹿を撃つことを積極的に賞賛したくはないけれど、ほら、その、言葉の意味は分かるでしょ。「鹿を狩る」から、鹿狩り。可愛いチョッキのようなものを着た男が猟銃を携えて、山を歩き、鹿を見つけて、それを撃つ。そんなイメージが浮かぶ。廣瀬あかりは説明した。そして、ブドウ狩りも分かる、と続けた。猟銃を構え、息を潜め、獣を観察するようなのとは違うものの、ぶら下がる果実の下でそれをもぎ取って収穫するのは、「狩る」と言ってもいいだろう。刈る、という言葉に通じるんだし、それほど奇妙には感じない。
「だけど、紅葉狩りというのは違和感があるわけだ」星野一彦は、廣瀬あかりに訊ねた。
　だって銃で狙うわけでもなく、収穫するわけでもなく、ただ紅葉を見て楽しむだけなのに、どうして、「狩り」になるのか分からない。「しっくりこなくて」

裏の組織からとんでもない額の借金を背負ってしまった主人公の星野一彦は、返済のメドが立たず〈あのバス〉に乗せられることになった。２週間後に出発するバスの行き先は、誰も知らない未開の僻地か、もしくは想像を絶する地獄のような場所。星野は最後の望みとして、組織から監視役に付けられた繭美という女性にダメ元でこんなことを頼んでみた。

「〈あのバス〉に連れて行かれる前に、何人かの女性たちに会わせてほしい」

あろうことかこの男は、多額の借金を抱えているにもかかわらず、同時に５人の女性と交際をしていたのだ。しかもその５股の女性たちと会って、直接一人ひとりに別れを告げたいという。ところが、意外にもそんなナメた要求が許されると、星野は監視役の繭美とともにお別れ行脚をすることになった。とその前に、まずはその繭美について触れておかなくてはなるまい。

髪はブロンド、ハーフのような顔立ちだが、身長１９０センチ、体重２００キロの巨漢で、たとえるなら往年の悪役プロレスラー、アブドーラ・ザ・ブッチャーのよう。態度は誰に対しても上から目線のお前呼ばわりで、ひとを敬うという言葉が何たるかを知らない傍若無人の振る舞いだった。実際、彼女が常に持ち歩く辞書には、「謙虚」とか「思いやり」といった単語はすべて黒く塗りつぶされていた。

そんな彼女と星野が最初に訪ねたのは、廣瀬あかりの自宅。彼女は星野が一人イチゴ狩りをしていた時に偶然出会った女性で、星野の「この女（繭美）と結婚するので別れてほしい」という突然の申し出には承服しかねる様子だった。そこで繭美は、ゴネるあかりに突拍子もない提案をする──。

簡単に言ってしまえば、星野何某（なにがし）とかいう主人公と長身の金髪女性が、様々な場所に立寄る話である。これだけを聞くと、あの『銀河鉄道ナンタラ』とかいう有名なアニメをイメージしがちだが、個人的にはその『ナンタラ鉄道９９９』以外にもう一つの別の小説を思い浮かべてしまう。それが太宰治の『グッドバイ』である。むしろタイトルからこちらを連想した人も多いだろう。

グッド・バイ (新潮文庫) [文庫]

太宰治

新潮社

2008-09

ちなみに『グッド・バイ』のあらすじは、ある日、妻子持ちの主人公・田島が、複数交際している愛人との関係を清算しようと思い立ち、永井キヌ子という「すごい美人」とともに女性宅を訪ねてまわるという話である。「繭（まゆ）美」は「キヌ（＝絹）子」の材料ということで、本作はパロディ的な位置づけなのかと思って読んでみたが、巻末にはこの小説（『バイバイ、ブラックバード』）について、著者へのインタービューというかたちで制作秘話が明かされていた。そこには次のように書かれている。

　そもそも、双葉社の担当編集者から来た最初の話は、「未完の『グッド・バイ』を完結させませんか？」という提案だったんですよ。ところが、僕は太宰治の熱心な読者というわけではないので、恥ずかしながら『グッド・バイ』を読んだことがなかった。そこで初めて読んだわけですが、楽しかったものの、続きを書くのは難しいかなというのが率直な感想でした。（中略）だから、『バイバイ、ブラックバード』を伊坂流『グッド・バイ』と謳うことについては、「全然違うじゃないか！」と言われるのではと少々不安でした。

たしかに言われてみれば似てなくもないが、やっぱり「全然違うじゃないか！」というのが率直な感想だ。もちろんそれはいい意味で。

主人公の星野と女性たちとのユニークな出会いのエピソードや、女性たちのクセの強さはいつもの伊坂ワールドで、そこはいささかもブレることはない。なぜ女たちはこんな男に惚れたのか、星野が女たちとどんなつき合い方をしていたしていたのか。そしてどんな話をしていたのか。そんなことを想像しながら読むとより面白い。
また、物語の形式として印象に残ったのが、結末が明らかにされないリドル・ストーリーであるということ。こうした書き方は、物語のその先についてさらに想像力を掻き立てる。星野が乗せられる〈あのバス〉はいったいどこに行くのか。そこにオチはないのであまり期待をしてはいけない、とだけ言っておく。
ちなみにリドルストーリーと言えば、芥川龍之介の『藪の中』だが、太宰治が芥川龍之介に強い影響を受けたのは有名な話である。そして伊坂も。

タグ：: #伊坂幸太郎; #ミステリー

2019年08月20日

カテゴリ:: 映画の話

焼肉ドラゴン

グーグルで「焼肉ドラゴン」と検索すると、映画のタイトルとともに、東京の門前仲町にある焼肉屋がヒットする。
断っておきたいのは、今回は映画の方についてであるということだ。２０１８年、『焼肉ドラゴン』製作委員会（ファントム・フィルム、KADOKAWA、巖本金属、アミューズ、レプロエンタテインメント、関西テレビ放送、サンライズプロモーション東京、フライングボックス、ポニーキャニオン、ステューディオ・スリー）製作。上映時間：１２６分。

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真木よう子

KADOKAWA / 角川書店

2018-12-07

昭和４４年。第二次大戦で左腕を失い、四・三事件（※）で故郷の済州島を追われた金龍吉（キム・サンホ）は、日本へと渡って大阪にあるドヤ街の一角で小さなホルモン焼き店「焼肉ドラゴン」を家族で営んでいた。
家族は、長女の静花（真木よう子）と次女の梨花（井上真央）、後妻の高英順（イ・ジョンウン）と、その連れ子の美花（桜庭みなみ）、龍吉と英順の間の子の時生（大江晋平）の６人。その他に、梨花の夫の哲男（大泉洋）が加わり、毎日にぎやかに暮らしていた。

三女の美花は、勤め先のバーの支配人・長谷川（大谷亮平）と恋仲だが、長谷川には妻がおり、いつかは自分と所帯を持ってくれる日を夢見て、哲男は幼なじみの静花のことをずっと心に思いながらも、その妹の梨花と夫婦になっていた。そして、そんな哲男の秘かな思いに梨花は気づいている。物語の登場人物は、そんなそれぞれの思いを胸に抱えながらも、必死に逞しく生きている。

だが繊細な時生だけは違った。朝鮮人というだけで、通っている私立中学校では酷いイジメに遭い、それでも父親からは日本で強く生きていくためには日本の教育は絶対に必要だと優しく諭されていた。
そんなある日、時生は自らの境遇を悲観して川に身を投げてしまう──。

※【済州島四・三事件】１９４８年４月３日に在朝鮮アメリカ陸軍司令部軍政庁支配下にある南朝鮮の済州島で起こった島民の蜂起に伴い、南朝鮮国防警備隊、韓国軍、韓国警察、朝鮮半島の李承晩支持者などが１９５４年９月２１日までの期間に引き起こした一連の島民虐殺事件を指す。
南朝鮮当局側は事件に南朝鮮労働党が関与しているとして、政府軍・警察による大粛清をおこない、島民の５人に１人にあたる６万人が虐殺された。また、済州島の村々の７０％が焼き尽くされた。（ウィキペディアより）

朝日舞台芸術賞グランプリ、読売演劇大賞および最優秀作品賞など数々の演劇賞を受賞した鄭義信作・演出による舞台『焼肉ドラゴン』の映画化。『月はどっちに出ている』『愛を乞うひと』『血と骨』など評価が高い脚本で知られる鄭義信は、本作が初監督作となる。
物語は、日本万国博覧会が開催された高度経済成長期を舞台に、関西で小さな焼肉店を営む一家が、たくましく生きる姿が描かれている。
演じるのはどれも一流と言われる俳優で、とても良い映画だったというのが率直な感想だが、思うに舞台の方がきっとこの何倍も良かったのだあろうと思えてならない。

それは、俳優が一流だったからこそ、この映画で一番伝えたかった根本的な部分が逆に伝えきれていなかったのでは、と感じてしまったからだ。おそらく、当時の在日朝鮮人の苦労（日本人からの差別や権利など）はあんなものではなかったはず。ならばいっそのこと俳優は、リアルな在日朝鮮人か韓国人でも良かったのではないか、という思いである。そう感じたのは、中盤のこんなシーンから。

主人の金龍吉（キム・サンホ）が、家族全員を前に自分の過去を独白する場面。龍吉はこれまでの苦労をこんな言葉でつなぐ。「働いて、働いて……」。彼の口から発するたどたどしい日本語には、けっして文章に表しきれない重みがあり、自然と心に響くものがあった。それは母親役のイ・ジョンウンもしかりで、この二人の演技には、他の日本人俳優がどんなに熱演しても、それが上辺だけとしか感じられないほどの凄味があった。
つまり、本物には敵わないということと、やっぱりこの作品は舞台向きだということだ。

鄭義信が演出する作品を観るのは、以前彼が演出と脚本を手掛けた、東京芸術劇場プレイハウスで上演の『密やかな結晶』以来だが、たしかその舞台は、鄭氏の演出と脚本についてイチャモンをつけた記憶がある。その気持ちはこの映画を観たあとも変わることはないが、そのときなぜ彼がそんな演出をしたのか、あらためて本人に訪ねてみたくなった。たしかに、物語の中に笑いを取り入れていたところは一緒だが、とても同じ演出をつけた人物とは思えない。

タグ：: #鄭義信; #真木よう子; #井上真央; #大泉洋; #桜庭みなみ; #大谷亮平; #キム・サンホ; #イ・ジョンウン; #大江晋平; #宇野祥平

2019年08月19日

カテゴリ:: アート・イベントの話; グルメの話

金沢旅行記３日目

金沢旅行最後の目。ここがメインと言ってもいい。まだ行っていないあの場所だ。もちろん最後もバスである。下車したのは「兼六園下・金沢城」。加賀藩主・前田利家の居城で知られ、築城年は天正８年（１５８０年）である。

現在は天守はなく、城址として今に残っているが、そのかわりに１３４年ぶりに復元された《橋爪門》や、実質的な正門と言われた《河北門》、お濠と芝の眺めが美しい《いもり門》などの門が来場者を出迎える。園内では、城のいちばんの見どころの一つである石垣や門、築城の技術についての解説スペースがあり、天守がないとはいえかなり楽しむことができる。ここを最後の日にして良かった。

結局、おススメのスポットは、冷房が効いた休憩所からの眺めだった。ここは本当に絶景＆快適だ。

http://www.pref.ishikawa.jp/siro-niwa/kanazawajou/

金沢城

石川県金沢市丸の内１番１号
金沢城・兼六園管理事務所へのお問い合わせはこちらから。
TEL：076-234-3800
FAX：076-234-5292
E-mail：jyousi01@pref.ishikawa.lg.jp
開園時間：午前９時～午後４時３０分
入園料：大人（３１０円）、小人（１００）

まだ新幹線の時間まで少しあるので、もう１箇所行くことにした。東と言えば今度は西、にし茶屋街である。ただしここは、東ほどではない。唯一賑わっているのが妙立寺というお寺で、ここは別名「忍者寺」と言われている。

なぜここだけが人気で、しかも忍者寺と言われているのかまで解明する時間はなかった。近所にある寺を店舗として利用した宝勝寺カフェで、金箔入りのレモンかき氷（６００円）をいただく。

今日のような暑い日にかき氷は生き返るが、金箔は余計だし、シロップはいたって普通のものだった。これで金沢の旅はすべて終わり。東京に変えれば仕事が待っている。

http://housyouji.jp/cafe/

宝勝寺カフェ

石川県金沢市寺町５丁目５－７６
TEL：076-287-3870
営業時間：午前１０時～午後４時
定休日：火曜

タグ：: #石川県; #金沢市; #城; #金沢城; #かき氷; #カフェ

2019年08月19日

カテゴリ:: アート・イベントの話; グルメの話

金沢旅行記２日目

金沢旅行の２日目。ホテルで朝食をとった後は、金沢駅のバスターミナルへ。昨日と同じ周遊バスに乗って、最初に下車したのは「南山・尾山神社」。バス停の目の前にあるのは、加賀藩二代目藩主・前田利長公が、その両親である利家と正室のお松の方を祀った神社である。唐沢寿明と松島菜々子がＷ主演をつとめた某国営放送の大河ドラマ『利家とまつ～加賀百万石物語～』が放送されていたのはもう１７年前の話である。

正面階段の先に見える国の重要文化財である神門（明治８年に建設）は、和漢洋折衷様式が取り入れられ、どことなく異国情緒が漂う造りとなっている。そんな特徴的な門をくぐると、今度はオーソドックスな拝殿が目に飛び込んでくる。さらにその奥が本殿となっており、拝殿を向いて右側に利家公像とお松の方像が仲良く並ぶ。そして、それを右に見ながら先に進むと、神苑と呼ばれる美しい庭園と金谷神社、東神門へと続く。

本当は一つ一つじっくり時間をかけて拝みたかったが、ここでタイムアップ。次の目的へ行くためにふたたびバスに乗る。

http://www.oyama-jinja.or.jp/

尾山神社

石川県金沢市尾山町１１－１
TEL：076-231-7210
FAX：076-231-4685
お祓い時間：午前９時３０分～午後３時３０分
授与所・御朱印受付時間：午前８時３０分～午後６時

次に降りたのは、「広坂・２１世紀美術館」。昨日断念した金沢２１世紀美術館が目的だ。ところが、到着した午前１０時ちょっとすぎ（開館時刻：午前１０時）ですでに長蛇の列。それでも昨日よりはマシということで、列の最後尾につく。

結局、４５分ほどしてようやく入場できた。ちなみに、周遊バスのフリーパスを持っていると、一般２０００円のところを１６００円で鑑賞できる。これはお得だ。
チケットを購入し、まず最初は、『粟津潔　デザインになにができるか』から。粟津潔は、今年で没後１０年を数える著名なグラフィックデザイナーで、その作品は、ニューヨーク近代美術館やアムステルダム現代美術館、オスロ近代美術館、ワルシャワ・ポスター美術館などにも収蔵され、彼の作品は海外でも高く評価されている。
展覧会の概要は、２００６年から現在に至る約３０００点の作品・資料群のうち、選りすぐった１７５０点を一挙に公開するというもの。

宇宙人のようなキャラクターに、エグい配色のグラフィック、かと思えば土着的なモチーフに着目した、どこかほっこりしそうな絵が描かれたポスターなど展示作品はどれも素晴らしく、粟津が当時いかに先進的だったかがうかがえる。

続いて、その隣で開催されている『大岩オスカール　光をめざす旅』展に。ブラジルで生まれた大岩オスカールは、サンパウロ大学で建築学を学び、東京、ニューヨークなど活動の場を移しながら独自の視点で作品を制作し続ける５４歳のアーティストである。

特徴的なのは、日本のアニメーションの背景画にも近いタッチの絵に、彼なりのメッセージが込められているように受け取れるところである。これは感性の話なので断言は避けたいが、本展覧会のタイトルにあるように、作品にはファンタジックに光が取り入れられ、人々の暮らしのリアルと上手い具合一体化しているようだ。個人的には視点の位置が面白いと思った。彼の作品は東京ですでに観ていたが、やっぱり素晴らしい。

当美術館の目玉であるレアンドロ・エルリッヒ作《スイミング・プール》は、やっぱり大人気だった。これは絶対に下から見るべきだ。

主展覧会の開催期間は、『大岩オスカール　光をめざす旅』が、２０１９年４月２７日［土］～２０１９年８月２５日［日］、『粟津潔　デザインになにができるか』は、２０１９年５月１８日［土］～２０１９年９月２３日［日］。

https://www.kanazawa21.jp/

金沢２１世紀美術館

石川県金沢市広坂１丁目２－１
TEL：076-220-2800 (代表)
FAX：076-220-2802
開館時間：午前１０時～午後６時（金・土曜日は午後８時まで）
休館日：月曜

今度は「広坂・２１世紀美術館」バス停から来た道を戻って「南山・尾山神社」に。お昼に入った店が、なんとも変わった店だった。

見かけはいたって普通の定食屋だが、でもそこに置いてあるメニューを見て驚く。うさぎ、ワニ、鹿、カンガルー、猪、……らくだ？　以下はその証拠の写真だ。

実は、ここは知る人ぞ知るジビエの店だったのだ。もちろん普通の料理もあるが、せっかくなので、ここはカンガルーカレーセット（１５００円、サラダ付）を注文した。で、出てきたのがこれ。

大きめの丸皿の一角にライスが盛りつけられ、そのまわりをカレーの海が取り囲む。その海に流木のように浮かんでいるのがカンガルーの肉だろうか、そんな感じはまったく受けない。ご丁寧に福神漬けまで添えられているところも特別であることを意識させない。
おそるおそるスプーンでひと口。カレーはちゃんとした欧風のスパイシーカレー。だが、肉の食感が明らかに普通と違う。ちょっとかためなのだ。クセはというと、カレーのためかほとんど感じられず、悪くはない。これは意外とカレー向きなのかもしれない。とは言え、また食べたいかと聞かれたら、もう結構、と答えるだろう。

尾山食堂

石川県金沢市尾山町２－４６
TEL：076-209-2900
営業時間：午前１１時～午後２時３０分、午後５時～午後１０時
定休日：水曜

今度はそこからひがし茶屋街へ向かう。公式サイトの案内によると、

金沢文化を代表する茶屋街のひとつ。和の趣を感じるフォトジェニックな写真を撮影するには最適なスポットです。着物をレンタルした女性観光客が伝統的な町並みをバックに撮影している姿が多く見られます。また、格式ある割烹や、お洒落な町家カフェ、伝統工芸品を扱うセレクトショップなどが立ち並び、金沢らしいグルメやショッピングが楽しめます。作家・五木寛之作品『朱鷺の墓』の舞台としても有名。外国人観光客も多く、情緒溢れる古い町並みは、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。

とのこと。たしかにまるで映画に出てくるセットのようにそこかしこに歴史の風情を残し、外国人も盛んにその光景をカメラに収めていたが、個人的にはお洒落なカフェや甘味処よりも、もっとビールが飲める店を置いてほしかった。それぐらいに暑かった。

https://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp/spot/detail_10212.html

ひがし茶屋街

石川県金沢市東山
金沢観光協会へのお問い合わせはこちらから。
TEL：076-232-5555
FAX：076-232-1170

本日の観光予定はここまで。和食はそろそろ飽きてきたところなので、ここで意表をついてイタリア・スペイン料理の店にした。ここもチェーン店だが、何よりもホテルに近いのがいい。

奥のテーブル席に案内される。奥はホールのように広くなっており、適度に客が入っている。女子会のようなのもいれば、合コンやデートにようなグループも見え、カジュアルな雰囲気は好感が持てる。メニューでまず目についたのが、生ビールと生牡蠣のドリンクセット。生牡蠣は２個ついてたしか１２００円ぐらい。それに白海老のフリット（８５０円）とモツ煮込み（７５０円）、スペイン風オムレツ（５８０円）、ズワイ蟹のトマトクリームパスタ（１４８０円）。

牡蠣と生ビールのセットはありがたい。牡蠣はちょっと小ぶりだが、少しだけ食べたい時もある。今日はまさにそんな感じ。続けざまに生ビールをもう１杯注文した。

生牡蠣と同じぐらいビールのつまみに合うのがフリットである。これは和風の居酒屋に行けば川エビの唐揚げだが、ここのは白海老。確かめたわけではないが、きっと富山湾で獲れたものだろう。香ばしさの中に甘さがある。

モツ煮込みは大きめのハチノスがトマトとともにしっかりと煮込まれている。トリッパがあるとかならず注文するが、ここのは結構美味い。

意外に良かったのがオムレツだ。ゴロゴロしたジャガイモがたっぷり入っており、食べごたえがある。コストパフォーマンスはかなり高めだ。

最後がパスタ。麺はアルデンテではなく、モチモチした触感のもの。だが個人的な好みで言わせてもらえば、こちらの方が断然好みだ。トマトの酸味とカニの風味が一体となったパスタソースがまた美味く、おかげでパンを追加注文した。
この店が推しているというレモネードをベースにした焼酎レモネードを注文したが、さすがにこれはジュースのようだった。女子にはきっとウケるだろうが。

http://theoliveoilkitchen.com/

オリーブオイルキッチン

石川県金沢市本町２丁目１５－１ポルテ金沢Ｂ１Ｆ
TEL：076-225-7796
営業時間：午後５時３０分～午後１１時３０分
定休日：年中無休

タグ：: #石川県; #金沢市; #イタリア料理; #スペイン料理; #パスタ; #トリッパ; #カレー; #ジビエ; #粟津潔; #大岩オスカール

2019年08月18日

カテゴリ:: アート・イベントの話; グルメの話

金沢旅行記１日目

東京では最高気温が３０度を軽く超える日が続いている。そこで少しでも涼を求めてと北陸旅行を思い立ったのだが、どうやらその考えは甘かったようだ。
８月某日。東京駅を出発した北陸新幹線「かがやき」が金沢駅に到着したのは午前１１時ごろ。駅のホームに降り立ったとき、そのあまりの暑さに愕然とした。東京よりも暑いのだ。聞けばその日の金沢の最高気温は３５度を記録したという。いったい何のためにここまで来たというのか。

気を取り直して、ＪＲ金沢駅から地下街を通じて直結するホテルへ向かう。本日泊まる『ホテル日航金沢』である。チェックインまではまだ時間があるので、フロントにスーツケースを預けて市内観光をしようという目論見だ。ただ、この暑さにどれだけ見て回れることやら……。

https://www.okura-nikko.com/ja/japan/kanazawa/hotel-nikko-kanazawa/

ホテル日航金沢

石川県金沢市本町２丁目１５－１
TEL：076-234-1111
FAX：076-234-8802

荷物を預けて手ぶらになったら、再びＪＲ金沢駅に。バスターミナルの窓口で周遊バスの１日フリー乗車券を５００円で購入する。これはバスが当日に限り何度でも乗れる便利なフリーパスで、３回以上乗る（１回２００円）なら断然こちらの方がお得だ。それにこのチケットには、ほかにも特典が付いているのだが、それは後ほど。

ＪＲ金沢駅から周遊バスに乗車。下りたのは「武蔵ヶ辻・近江町市場」。近江商人が作ったとされる近江町市場に行くためだ。近江町市場とは、３００年近くも金沢市民の台所を支える小売市場で、東京で言えばアメヤ横丁のようなところ。東洋・西洋問わず多くの外国人の姿も見られ、とにかく活気がある。実は、昼食は市場内の寿司屋で、と考えていたのだが、さすがにこの暑さのなか列に並ぶ気にはなれず、市場を離れて別の店を探す。

近江町市場

石川県金沢市上近江町５０
近江町市場（おみちょ）へのお問合せはこちらから。
TEL：076-231-1462
FAX：076-232-5502
E-mail：info@ohmicho-ichiba.com

のっけから計画が狂ってしまったが、とにかく一番空いていそうで冷房が効いてそうな店を見つけて飛び込む。それが『市の蔵』という店。ちなみにここがチェーン店だと知ったのはずっと後のことである。

冷房の効いた座敷席でくつろぐ。額から吹きだす汗を冷えたおしぼりで拭いながら注文したのは、７種類以上の魚介類が入ったという海鮮丼（１６００円税込）と、いかわた味噌焼き（７８０円）。それにもちろん１リットルジョッキの生ビール。

キンキンに冷えた生ビールで喉を潤す。ただこんなものはただの気休めでしかない。あっという間に無くなっていく。ちなみにいかわた焼きは、固形燃料の火で小さな鍋を熱する食卓で調理する旅館の夕食タイプのもの。これは、今日のような暑い日には見た目に暑苦しく、すぐに後悔する。できれば調理したものを出してほしかった。とにかく味が濃く、喉がどんどん乾いていく。

随分と待たされたがようやく海鮮丼が出てきた。具は蟹、がんど、タコ、サケ、甘海老、穴子、イカ。ちなみに「がんど」とは、６０センチサイズのブリのことで、関東では「ワラサ」と呼んでいる。丼のお味はと言えば、市場近くの店ではあるが、新鮮さは東京でも食べられる程度のもの。悪くはないが、わざわざのものではなかった。

http://ichi-no-kura.jp/

近江町・海鮮市場料理　市の蔵

石川県金沢市青草町８８番地近江町いちば館２階
TEL：076-224-3371
営業時間：午前１１時～午後１１時
定休日：無休

まあ、冷えたビールが飲めただけでもヨシとしよう。再びバスが停まったのは「広坂・２１世紀美術館」。工芸の街・金沢に建つ、２００４年（平成１６年）１０月８日に開館した円形状の美術館である。この日開催されていたのは、『大岩オスカール　光をめざす旅』と、『粟津潔　デザインになにができるか』。だがどちらも大変な盛況で、感覚的に数時間待ちが予測されるため、明日にまわすことにする。ちなみに、今回の旅行は２泊３日の予定である。ということで、ちょっとヘコみつつも兼六園へ向かう。

国の特別名勝に指定されている兼六園は、広さは約１２ヘクタール。ウィキペディアよると、１６７６年（延宝４年）、加賀藩４代藩主の前田綱紀が、金沢城に面する傾斜地にあった藩の御作事所を城内に移し、その跡地に自らの別荘である「蓮池御殿（れんちごてん）」を建ててその周りを庭園化したのが兼六園の始まりと言われている。

入ったのは西側の重要文化財・成巽閣（せいそんかく）側から。こちらもウィキの請け売りにによると、文久３年（１８６３年）に加賀藩１３代藩主・前田斉泰が母・真龍院（１２代斉広夫人）の隠居所として建てた歴史的建造物と、このあたりは加賀百万石らしく、前田家ゆかりの建造物等が点在する。ちなみに、この日は入園料は無料（通常は大人：３１０円、小人：１００円）だった。
見どころは、日本最古と噴水や、１１枚の赤戸室石を使った雁行橋（がんこうばし）、安永３（１７７４）年に建てられた茶室の夕顔亭、５代藩主綱紀（つなのり）が作庭した際に作られたという時雨亭など、これらを文字通り駆け足でめぐる。

http://www.pref.ishikawa.jp/siro-niwa/kenrokuen/index.html

文化財指定庭園　特別名勝　兼六園

石川県金沢市丸の内１番１号
石川県金沢城・兼六園管理事務所へのお問合せはこちらから。
TEL：076-234-3800
FAX：076-2345259
開演時間：午前７時～午後６時（３月１日～１０月１５日）／午前８時～午後５時（１０月１６日～２月末日）

本日の観光予定はここまで。一旦、ホテルに戻って夕食にありつける場所を探す。暑いので遠出したくなく、駅の近くでたまたま見つけたのが、肉も魚も食べられるという『長八』という寿司と手作り料理の店である。

外見は立派だが、通されたのは宴会場のような広間に仮設置したようなテーブル席。壁には宴会で使いそうなプロジェクターが見える。かなり残念な店内である。だがその日はもう店を変えるほどの気力は残っていなかった。ヘトヘトになりながらもメニューから気になった物を注文する。
頼んだのは、お造り盛り合わせ・二人盛り（５０００円）と、能登牛の牛すじ煮（７５０円）、のど黒の塩焼き（１３８０円）のほかにマグロとウニを握りで。飲み物は、最初は生ビール、そして２杯目から石川県の地酒・純米吟醸の加賀鶴を注文した。

まずは牛すじから。まるで残り物のように見えるが、これが出てきた直後である。なんとも美しくない見た目だが、これでも味はまあまあ美味しい。味付けはやや甘めで、肉はトロトロによく煮込まれている。つくづく見た目が残念だ。

お造りはマグロ、カンパチ、水ダコ、がんど、カジキなど盛り合わせとしては豪華な気がしないでもないが、やっぱり盛り付け方が残念。この辺りだとどの店もこんなものなのだろうか。

ただのど黒は違った。こちらはかなり脂がのっており、身がプリプリとして美味しい。加賀鶴との相性もよく、日本酒がすすむ。だが結果的には、これが疲れた体には良くなかった。はっきり言うと、胃腸が脂に負けてしまったのだ。おかげでその夜中から何度もトイレのお世話になってしまった。恐るべしのど黒。
お盆時期ということもあってか店員はみなアルバイトのようで、料理の値段に見合ったサービスはなかった。何だか初日からつまづいた感がするのが、明日はどうだろう。

http://www.cho-hachi.jp/

長八　金沢駅前店

石川県金沢市此花町５－５　玉川駅前ビル１Ｆ
TEL：076-256-1843
営業時間：午前１１時～翌午前０時
定休日：無休

タグ：: #石川県; #金沢市; #刺身; #海鮮料理; #寿司; #郷土料理; #魚介料理

2019年08月13日

カテゴリ:: 本の話

アリス殺し / 小林泰三

タイトルにある【アリス】とは、イギリスの数学者チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンが、ルイス・キャロルの筆名で書いた児童小説『不思議の国のアリス』の主人公のこと。１８６５年に発表された同作は、これまでに１７０を超える言語に翻訳され、発行部数は１億を数える大ベストセラーである。
そうなると当然、それをネタにしようという輩も出てくるわけで、かの有名なアメリカの推理作家エラリー・クイーンは、自身の作品『キ記ぞろいのお茶会の冒険』でそれを題材にしており、日本でも辻真先や北村薫といった多くの小説家がこの名作をモチーフにした作品を発表している。
ちなみに小生の場合、それを聞いて真っ先に思い浮かんだのは、３人組のフォークグループのほうである。ま、それはさておき、まずは著者の紹介から。

アリス殺し (創元推理文庫) [文庫]

小林泰三

東京創元社

2019-04-24

著者の小林泰三（こばやしやすみ）は、１９６２年、京都府生まれ。大阪大学大学院修了。９５年『玩具修理者』で第２回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、デビュー。９８年『海を見る人』が第１０回ＳＦマガジン読者賞（国内部門）を受賞し、同短編を表題作とした２００２年刊の短編集は、第２２回日本ＳＦ大賞候補作となった『ΑΩ（アルファ・オメガ）』に続き、第２３回日本ＳＦ大賞候補作となる。『天国と地獄』、『ウルトラマンＦ』でそれぞれ第４３回、第４８回星雲賞（日本長編部門）を、また、『アリス殺し』で２０１４年啓文堂書店文芸大賞を受賞する。他に『密室・殺人』『大きな森の小さな密室』『安全・犯罪』『クララ殺し』『ドロシイ殺し』『人外サーカス』などの著書がある。

　１

　向こうから白兎が走ってくる。
　チョッキから時計を取り出す。「大変だ！　遅れてしまう！」
　この兎が特別時間にルーズなのか、そもそも兎という種族自体時間を守るという能力に欠けているのか、とにかく彼はいつもこの調子だった。
　そもそも彼との最初の出会いの時も時間に遅れそうだったんじゃなかったかしら？
　アリスは呆れながら白兎を眺めた。
　と言っても、どれが最初の出会いだったのか、今ではもうはっきりとしない。相当前のことだったからだ。それ以前のことはもっと曖昧模糊としていて、殆ど思い出すこともできない。なんだからもっと退屈なだけれども落ち着いた日常があったような気もする。

女子大生の栗栖川亜理は、毎晩不思議な夢を見ていた。それは、ある物語の登場人物になっておとぎの国に迷い込む夢。彼女が見るその夢とは、まさしく『不思議の国のアリス』そのものの世界だった。亜理は、夢の中の自分（【アーヴァタール（分身）】）がアリスだと自覚する。
そんな夢の中で事件が起きる。卵の姿かたちをしたハンプティダンプティが、塀の上から何者かに突き落とされて死亡したのだ。目撃者の白兎は、現場を立ち去る人物を見たと言い、それはアリスだったと証言するが、アリスにとって、それはまったく身に覚えがない話だった。
夢から醒めた亜理は、蜥蜴のビルがアーヴァタールだという同級生の井森から、夢と現実との間に奇妙な一致点があることを聞かされる。その証拠に、ハンプティダンプティが死んだ翌日には、同じ大学の研究生・王子玉男がキャンパスの屋上から転落死し、さらに今度は、海象のグリフォンが生牡蠣を喉に詰まらせて窒息死したあと、教授の篠崎が生牡蠣にあたって急死したのだ。

こうした不可解な事件が続く中、不思議の国では、ついに女王の命令により三月兎と頭のおかしい帽子屋が犯人探しに乗り出していた。彼らが犯人と疑うのは、目撃証言があるアリス。このままでは、彼女は裁判で死刑を宣告されて首をちょん切られてしまい、そうなると現実世界の亜理も……。

裁判まで１週間の猶予を与えられたアリスは、蜥蜴のビルと一緒に夢と現実の両面から調査を開始する。聞き込むのは公爵夫人がアーヴァタールだという広山准教授や、ドードーの田畑助教授などなど。
はたしてアリスこと栗栖川亜理は新犯人を見つけ出し、身の潔白を証明できるだろうか──？

不思議の国のアリス (角川文庫) [文庫]

ルイス・キャロル

角川書店(角川グループパブリッシング)

2010-02-25

卵のような胴体のキャラクターや、常に眠そうにしているネズミ、気が狂った帽子屋、人語をしゃべる獣などユニークなキャラがたくさん出てくるルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』は、世界でもっとも有名な児童小説であり、本作はそんなファンタジーの世界観にミステリー要素を取込んでいる。そこで、そんな特殊なミステリー小説を語る前に、まずはルールと登場人物を整理する。

【ルール・特長】
・亜理と井森の夢「不思議の国」に出てくるキャラは、【アーヴァタール（分身）】として現実の世界にも存在する。
・夢の世界と現実世界はリンクしており、アーヴァタールが死亡すれば、それとリンクしている人間も、同じか近い方法で死んでしまう。
・アーヴァタールと現実世界の人間とはお互いに意識を薄らと共有している。
・アーヴァタールは基本「ウスノロマヌケ」である。

【登場人物（左側がアーヴァタール）】
アリス　　　　　　　　・・・　栗栖川亜理。ハムスターのハム美を可愛がっている。
蜥蜴のビル　　　　　　・・・　井森建。亜理の同級生で彼女の協力者。
ハンプティダンプティ　・・・　王子玉男。大学の研究生で建物から転落死する。
グリフォン　　　　　　・・・　篠崎教授。生牡蠣の食中毒で死亡。
公爵夫人　　　　　　　・・・　広山衡子准教授。次期教授の座を狙っている。
ドードー　　　　　　　・・・　田畑順二助教授。広山からパワハラを受けている。
三月兎　　　　　　　　・・・　田中李緒。亜理の一つ上の先輩。

あらすじにもある通り、主人公はアリスこと有栖川亜理で、どうやらその彼女が探偵役であることは間違いなさそうだ。そこで気になるのがそのタイトルである。つまり、その探偵役であるアリスが殺されると言っているのだ。これは前代未聞の大事件である。

ネタバレ注意！

実際、アリスはタイトル通りに殺されてしまう。もっと言ってしまえば、ワトソン役となる蜥蜴のビルも殺される。これはいったいどういうことなのか。ここでもしその直前の言葉（あらすじにもある通り～以降の部分）で誤解を生じたとしたなら、著者ともども素直に謝らなければいけない。たしかにヒントはあったのだが……（９５ページ）。

ところで、真犯人についてだが、ちょっとでもミステリー小説を読んだことがある人ならば、まずこう考えるに違いない。「もしかしてアリスは、アーヴァタールと現実世界の人物を取り違えているのではないか？」と。
その考えは間違っておらず、そこにこそトリックのすべてがある。だが実のところ作者の狙いはそこではなく、やはりポイントはタイトルにあったのだ。もうここまで言ったらピンとくるはずだが、実はここにアンフェアが隠されている、と感じる部分がある。それは後半で明かされるまた別のルールのことである。
それは、「現実世界の人物が死んでも、アーヴァタールが死ぬことはない」「アーヴァタールが生きている限り、現実の世界の人間はリセットされて生き返ることができる」という追加のルールだ。

「まさか。ゲームのキャラクターはただ操作しているだけなんだから、キャラクターが死んでも本人は死なない。『死んでしまうとは情けない』とかなんとか、メッセージが出るだけ。キャラクターが自動的に再生して、ゲームの続きを……」アリスははっと息を飲んだ。「つまり、この世界の人や動物が本物で、地球の人たちの方がアーヴァタールなの？」（３０６ページ）

　この世界で○○が死んだとしても、不思議の国で本体である△△が生きている限り、何度でもリセットされて、○○は復活する。別にわたしだけが特別じゃない。それが赤の王様の夢のルールなのよ。（３３７ページ）

この「○○（アーヴァタールが△△）」の部分に真犯人の名前が入るのだが、さらに著者は、ラストにもう一つの仕掛けを施していた。つまり主人公は……。

本書は『不思議の国のアリス』を知っていることが前提の上に、文章が全体的にこのブログのようにクドく、言わずもがなの部分をご丁寧にも延々と説明してくれている箇所が随所に見られる。
このためかなりまどろっこしく感じ、何度もイライラさせられた。オビの文言「どれだけ注意深く読んでも、この真相は見抜けない。」は、たしかにその通りではあったが、なんともスッキリしない一冊である。

タグ：: #小林泰三; #ミステリー; #啓文堂大賞; #ネタバレ注意

2019年08月12日

カテゴリ:: グルメの話

ピッツェリアフィロニコ [東陽町]

この店は、世界一有名な某ＳＮＳサイトで紹介されており、前から気になっていた店である。東陽町にある本格薪窯焼きナポリピザの店『ピッツェリアフィロニコ』に行ってきた。
こう言っては何だが、場所は少々不便なところにある。東京メトロ「東陽町駅」と、都営新宿線・東京メトロ半蔵門線「住吉駅」を結ぶ四ツ目通りのほぼ中間に位置する。徒歩にして１０分といったところ、近くにはイースト２１が見える。この暑さの中、新宿線のほうから歩いて店にたどり着いた。

予約した時間から３分ほど過ぎたころに入店。イケメンの男性店員に予約している旨を伝えると、四ツ目通りに面した入口すぐ横のテーブル席に通された。店内は奥に長く、向かって右側がキッチンとなっており、その奥にはこの店自慢の窯が見える。席数は２２だそうだ。まずはからからの喉を潤すために生ビールを注文した。ちなみにこの店はハートランドを提供している。ナイスチョイスである。

料理はもちろんピザをメインに、他にいくつかを注文。ピザは定番のマルゲリータ（１２８０円）、それにシーザーサラダ（８００円）とソフトシェルシュリンプのフリット。ワインはビールのあとでという算段だ。

サラダはオーソドックスなもの。ロメインレタスにカリカリのベーコン、タマネギ、クルトンにたっぷりのチーズ。特にコメントはない。

そろそろビールがなくなってきたので、ワインを注文する。当然、白ということになるが、イケメン店員と相談して、ボトルで『アラゴスタＤＯＣ』をオーダーした。これはエチケットがサルディーニャ島で有名な伊勢海老のイラストで、ぶどうの品種はヴェルメンティーノ。酸味は少なくリンゴの香りがする辛口である。ただ残念なことに、それほど冷えていなかった。これは痛恨だ。

海老つがなりというわけではないが、タイミングよく海老のフリットが出てきた。これは殻ごと食べられるソフトシェルで食べやすい。スナック感覚でいける。

そしてマルゲリータ。香ばしくふっくらとしたドゥに、モッツァレラとトマトソース。これこそピザの王道だ。個人的にはもう少しチーズが多くても良かったが、この値段なら仕方がない。もう一枚、別のピザも食べてみたいので、レモーネを注文した。

これはスパイシーチキンと、マッシュルーム、チーズとバジルがのった物で、特徴的なのが、名前の通りレモンのスライスがのっていることだ。このレモンがそこそこ酸っぱくて、チキンのスパイシーさをほどよく中和する。しかもレモンの皮の部分に適度な苦みがあって、まさに夏向きの逸品である。これでワインがもっと冷えてたらなぁ。

イケメン店員も気さくで話しかけやすく、堅苦しくないカジュアルな感じの店だ。聞くところによると、平日昼間は近くの外資系サラリーマンが多く、夜や土日は地元の客が多いそうだ。お盆中も店を開けて頑張ると言っていたのが印象的だった。ちなみに、その日の客層は女性客ばかりだった。それは納得。
この店ではテイクアウトもやっているようで、その日も予約のピザをとりに来ていた客を何人か見た。

http://filonico.jp/

ピッツェリアフィロニコ

東京都江東区千石２丁目１１－６１Ｆ
TEL：
営業時間：午前１１時～午後３時、午後５時～午後１０時
定休日：月曜