2018年08月18日

北海道大学学術交流会館 2018.7.29

第三部の朗読、司会は熊谷敬子氏。最初にアイヌの衣装を身にまとい登壇したのは長屋のり子氏。自作の「盲いたチュフサンマの悲歌」である。ともに抱き、子である助造の誕生、そして待ち続ける私の心のざわめき。ポーランド独立の報があっても帰ってこない夫。くずおれる氷山の前に、女に革命は要らないと泣き続け盲いとなり、あなた聞こえますかと太陽から降りてきた女チュフサンマの問いかけ。さて、朗読のことであるが、マイクが響きすぎたのであろう長屋氏がマイクから離れる。と、わざわざ係の方がマイクを調整に来る。で、また離れる。肉声に近い感じの距離感に離れて読んでいるのだが。まぁ、気を使ってるのは分かるんだが(笑)。
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次いで花崎皋平作品「チュサンマとピウスツキとトミの物語」を白井順氏が朗読する。流刑地へ送られてきたピウスツキ、皇帝暗殺未遂事件の一味として歴史に翻弄されていく。そのなかで何がほしい、何が食べたいと思うことなくゆっくりの時が流れる生活。誰も知らないアイヌの世界。トンコリが奏でるのは鳥の声、風の叫び。チュフサンマ、そして20世紀のアイヌ女性トミから渡されたものは何か。目覚めた後に引くという選択はないが…。ピウスツキがアイヌのために行おうとした行政改革を不能にしたのは、日露戦争で変わる支配者たち。同時に弱体化するロシアの一角でポーランド分割が揺らぎ、独立の旗が振られるのだ。全体は物語詩であり白井氏の淡々とした読み方が見事というほかない。ここ近年まれに聞く美しさであった。
朗読のトリを飾るのは酒谷茂靖氏による土橋芳美作品「痛みのペンリウク」。標本保存庫という安置所にアイヌの遺骨千体。30年の眠りを掘り返えされたワシの望みは、自然の腕に抱かれること。さて、酒谷氏はマイクを使わず肉声を太く会場に響かせる。強い声が響きすぎると、怒りに聞こえる場合がある。今回は注釈の部分を加えた朗読の構成としているが、この作品の基調は恨みつらみ不安、そこに平坦な報告的内容ではない注釈だ。であるから酒谷氏は正面に向き直ることで声のトーンも変える。流石ではあるが、やはりこの構成での独り舞台はどうであろうか。作品はあわせて「ペンリウクとバフンケ」も披露、誰が骨についた肉片を洗い流したのか、おおおおおおおお。
主催、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター、北海道ポーランド文化協会、ポーランド広報文化センター。後援に、駐日ポーランド共和国大使館。


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