2019年08月04日

北海道立文学館 2019.7.21

実演と解説は、江戸伝承浮世絵手刷木版画の摺師である三田村努氏。題材は広重の亀山である。まず波の線のみがあり、輪郭線が板に彫刻してある。このもととなる輪郭線の図柄は冊子の元となる板に貼られてしまうため、原画というものは残らないのだそうだ。
素材となる板は山桜が多いようだ。当時も高価な材料であったので、一度使ったものを平らに削り直してリサイクルしていたようだ。まず全面に墨を塗る。そこに白紙を乗せてバレンで刷る。このとき用紙は右の隅と下辺の二か所の位置決めのツメに合わせる。輪郭だけが写される。用紙はいくらかの湿りが必要であり、歪みが出ないように乾かすのだという。そのため、一日に一色しか入れずに定着させながら、一日に大体200枚刷って終わりだそうだ。
通常は一日に一色なのだが、今回は短時間で見せので、色止めするために少し話をしながらの変則作業である。
次いで色の弱いところ、黄色の籠などを作業する。土台となる板のサイズはすべて同一であり、少しづつ色を入れる。
それから茶色。木の影とか馬のしっぽとかの部分。絵具にはデンプンノリ(現代のヤマト糊)を混ぜてある。米糊は夏場は腐るので用いないとのこと。用紙は越前奉書ににかわを留めたものを使用するのだそうだ。
浮世絵
朝焼けのぼかし部分の色を入れる。バレンは竹材に、薄紙を重ねての手作りである。全面が木製ではない。持ち手は耐久的な問題はないが、竹の皮部分は摩耗が激しいとのこと。絵具も岩成分のものは摩耗が大きいので、原則は植物性が多いとか。黄色はキハダか西洋オトギリソウ、赤はベンガラ、藍は本藍を用いているとのこと。
ネズのぼかしに入る。ブラシは馬の毛をベースにするが、わざわざ鮫皮を使い枝毛にするという。触らせてもらったが、通常のものより柔らかいのだ。明治以前は刷毛しかなく引っ掛かりやすかったのだという。
以下、山のネズのぼかし。上部のネズ、白壁のうすねず。荷物の紅。藍、版元名と隅の茶色。藍のぼかし。藍は粘りがあり、筋が付きやすくやりづらい色であるが、ないと締まりがないとのこと。色の中でも摩耗が激しいと、元版を彫りなおす作業が発生する。この時に以前のものに修正が加えられたりするようだ。
順に、墨の線のなかに色を入れていく作業である。塗り絵と考えるとイメージしやすいとのことだ。


M0814gliding_flight at 13:28│コメント(0)文学展・研究会 │

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