2012年01月23日

●東電危機 どうするPRスペシャリスト

 東電が、産業用と家庭用の電気料金を値上げする事を検討しているという。

 これは、誰もが驚愕した超高額報酬を食む東電経営者が自らの責任を放棄し、原発事故被災の賠償資金を使用者に負い被せ、自らは何の身を削ることなく頬っ被りを決め込む、歴史的犯罪である、と言いたいが、これは「合法的」なところに日本の痛みがある。

 東電経営は、電気事業法で規定された「包括原価方式」のため、三つ子が経営しても赤字を出すことがないようになっている。そんな企業体の中でまともな利益創出発想が育つ訳はない。

 さて今日は、その点の指摘は別の機会にするとして、もし自分が東電のPR担当であるならどうするか、について考察したい。

 普通PRというと、広報とか売り込みとか広告の一種とか、日本では極めて軽い認識しか普及していないのは遺憾なことである。PRに関連する自作のチャート3枚を上げておく。1)PRとは、2)PRの種類と実施部署、3)企業PRと危機管理。チャートをクリックすると拡大します。

PRdefinisionPRkindscorporatePR_crisis_mgt






 本来PRはPublic Relations の略で、ま、簡単に言うなら企業や商品が消費者に良いイメージで迎えられ、望ましい経営環境やマーケティング環境を創出するための、不断の活動といえる。その活動は多岐にわたるが、ここでは割愛する。
 
 従って、PR担当者(とくに企業PR担当者)の社内的ポジションは、社長直属となる。PRは基本的にコミュニケーションの円滑化が目的なので、PR発祥の地・米国などではPR部署の下に広告宣伝部署があるのが普通だ。

 日常的には、プレス対応、政府対応、議員対応、社内調整などが業務となるが、いったん、企業にとっての危機が発生するや、その現場対応、損傷した企業イメージの回復のための諸策を立案、具申、そしてトップ・マネジメントの了解が出れば、外部企業とともにこれを実施する。

 危機が発生して、さてどうしよう!ということではなく、常日頃からいろいろな危機を想定し、対応策を立案し、シミュレーションや予行演習を行うのが常道である。

 さて、赤字の心配のない東電は、フンダンの予算で大手広告代理店と業務契約を結んでいたのは疑いのないところだ。PR代理店は使っていたのだろうか?

 PRについては、経営者によほど欧米的経営知識がないと、PRという概念すら理解できていないのが日本の現状だ。PR担当者の社内的ポジションも販促のパブリシティ担当者レベルであろう。事故調査委員会にもコミュニケーションのスペシャリストであるPR関係者はいなかったようだ。

 今後、現状の東電という企業のイメージを回復するには、PRスペシャリストとしては正直なところ方策はない。なぜなら、東電は先に述べたように電気事業法で、その利益を保証されており、大口需要家向けの電気料金は「勝手に」値上げできるし、家庭用は経産省に申請して認可を得れば値上げできるからだ。

 現東電経営者は、これを「義務」であり「権利」である、とまで言っている。法でそう規定されている限りそれは「合法的」なのだ。

 東電経営者がどんなに愚かで無能力であっても、彼らはその個人的利益の既得権は主張するであろうし、従って自ら辞任する事もない。超高額報酬も法で規定されており、彼らは「お手盛り」の認識はない。国民に何と罵られようと、法的に資金負担を一般国民のおっかぶせても、何の良心の呵責もないのだ。

 解決法は、電気事業法を改正して、東電経営を白日のもとに引き出し、健全なマーケティングがワークする状況を立法府を中心に早急に進めることだと思われる。

この記事へのトラックバックURL