「なごり雪」は懐メロ・フォーク1位だそうだが、「22歳の別れ」もいい。気が乗ればマイクを握ることもある。
これらはシンガーソングライター伊勢正三の曲。
これじゃなくって、もっとずっと昔の『伊勢物語』に
「名にし負はば いざこと問はむ 都鳥 わが思ふ人は ありやなしやと」
という歌が出てくる。
おっ、あれか、と高校時代を思い出すね、誰でも。後に 『古今和歌集』にも収録された有名な歌だ。
『伊勢物語』の何段か忘れたが、「東下り」という段がある。
その段の中で、都(つまり京都)からはるばる歩いてきた男たちが、東京は隅田川のほとりで白い鳥を見る。これはどうもユリカモメだろうというのが通説。そして船頭に尋ねたらミヤコドリだという。
「おっ、よく言うよ、都と言えば京都のことだろ、そんじゃ、お前(鳥の事)京都の事、知ってるよな。おれの女は今ごろ京都でどうしているか」
これが、まあ、歌の大雑把な意味だな。作者は一行の中の男で『伊勢物語』の主人公と言われている在原業平。
美男で好色、反体制的な貴公子とも呼ばれる。禁断の不義密通をものともせず(かどうかは知らないけど)高貴な女性たちとの禁忌の恋を展開する羨ましいところがある。
この歌に出てくる「いざこと(言)問はむ」から、現在の「言問橋」が、また在原業平から「業平橋」や「業平」という地区名が命名されている。
それがなんだぁ? 3月17日から東武線の「業平橋」という駅名を「とうきょうスカイツリー」という駅名にアッサリ変えたという。また由緒ある東京の駅名が消えたな。
バカな話よ。過日、旧知の友人が言っていた、「団塊世代以降、日本人の質が低下した」というのを思い出す。知性・教養の衰退だ。こんなことをしていりゃぁ外国人にバカにされるよ。
一応念のために言っておくけど「業平」は「なりひら」、「東下り」は「あずまくだり」、「都」は「みやこ」と読む。昔、いわゆる一流私大4卒の女性を横浜の大佛次郎文学館へ連れていった時、ダイブツジロウとのたまわったからね、念のため。