2012年06月07日

●歌舞伎襲名の矮小化

 俳優の香川照之が、別世界・歌舞伎の9代目市川中車を46歳になってから突然襲名し、わずか8ヵ月の特訓で初舞台を踏んだと報じられた。

 父親は3代目市川猿之助だが、香川とは40年以上も絶縁状態だったという。従って猿之助は、病気療養のため4代目猿之助を香川の従弟の市川亀治郎に襲名させた。亀次郎は幼少時から歌舞伎の世界に生き、歌舞伎の厳しい稽古はもとより、「業界」の礼儀・作法や人脈にも身をもって通じ、日本の伝統文化を守るに相応しい環境に揉まれてきた。襲名は自然の成り行きだろう。

 しかし香川の場合、どのような経緯かはわからぬが、人生の半分を 別の社会に生きて来た人間が日本の伝統文化を唐突に継承するのは如何なものだろう。歌舞伎界の跡目相続という日本の伝統を、「一家の事情」に矮小化し、歌舞伎界を愚弄してはいまいか。

 

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