関西の阪急阪神ホテルズ系列のレストランなどで、メニュー表示と異なる食材が使われてきた「事件」を同社が発表した。PRの観点からはこれは「企業の危機管理」の問題ととらえることができる。70年代後半に日本に導入されたヒーブ・システムの導入でこの種の事件は予防できたのではないか。
この事件は、メニューに表示されている食材よりコストが安い食材を、今年の9月までの7年半にわたり、同ホテル系列23店舗の47品目使用してきたというもの。
この事件で同ホテル・チェーンは、消費者を含む同企業を取り巻くパブリックス(=利害関係者)の中に多大な信用失墜を生じせしめた。この信用回復はPR(パブリック・リレーションズ)上の大きな課題である。
原因のひとつとして、「メニュー全体に責任を持って関わる社員がおらず、組織全体に問題があった」と同社営業企画部長が語っている。
これは、企業内にヒーブ(Home Economist in Business の略)を置くことで回避できるる。ヒーブとは、企業内家政学士とも訳され、企業と消費者のパイプ役を果たすことを目的に、1923 年にアメリカ家政学会の一分科会として設立されたのが発祥。
日本では、1970年代にアメリカから導入され、先進的なメーカーで取り入れられ、PR関係者の間ではその見学会や勉強会が開かれ、筆者も参加した。メーカーでは商品開発などにも参加している。1978年には日本ヒーブ協会が設立された。因みにヒーブは、基本的に非社員で業務報告先は社長である。
メーカーはもとより飲食品や消費財を一般消費者に供する企業では、ぜひ、ヒーブを採用し、企業側からではなく消費者目線で商品や売り場のチェックを日常的にし、改善点はどんどん経営トップに報告していくことが肝要だ。
今回の事例でも、ヒーブがメニュー・チェックを消費者視点で行なっていれば、こんな事件は起こらなかったろう。