2013年10月26日

● 信用回復をどうする、「企業危機」に陥った関西のホテル

 食材偽装事件で阪急阪神ホテルズは、消費者を含む企業を取り巻くパブリックス(=利害関係者)から信用が失墜し、企業危機に陥った。この信用回復の施策ををどのように展開するか、PR(パブリック・リレーションズ)の「危機管理」上の大きな課題である。

 企業PRの基本的機能は、消費者を含む企業を取り巻くパブリックス(=利害関係者)の間に企業への信頼と好意度を如何に醸成するかということである。信頼が高く好意度がある時は、それをどのように維持継続させるか、失われた時は如何にこれを回復するかということである。

 パブリックスとしては、消費者をはじめ、従業員とその家族、労働組合、株主・投資家、金融機関、業界・取引先、それに行政(役所)、地域住民などが含まれる。

 当事件は、第三者から告発されたのではなく、自ら調査し公表した。今年9月までの7年半にわたり、関連レストランなど23店舗の47品目でメニュー表記とは違うコストの安い食材を使用してきたというものである。

 自ら公表したというなら、信用失墜の回復施策は十分に考慮されていたのだろうな、事前にPR代理店のスペシャリストと善後策は十分熟慮されたのだろうな、と思う。まさか、企業内の、この手の「事件」にはど素人のスタッフだけが丸腰で公表に踏み切ったのではないでしょうね、と思いたい。

 通常、この種の「危機」が発生した場合(今回は自分たちで発生せしめた)、社長を本部長とする対策本部なるものを発足させる。メンバーは、社長、関連役員、PRスペシャリスト(コミュニケーション・スペシャリスト)、弁護士、関連管理職、従業員などである。

 業務としては、発表文の作成、想定問答集の作成、さらなる調査団の構成、経営トップのメディア・トレーニングなどである。メディア・トレーニングとは、プレスの前で発表する社長の、服装から始まって話し方のトーン・アンド・マナー、発表中や質疑応答中の視線などを事前に「実戦」さながらに練習することである。

 プレスへの発表内容には、「ウソ」や「その場回答」は避ける。いずれ事件の全容はすべて白日のもとに曝け出されることになる。その時点、その時点で「事実」だけを話し、発表者の感想は控える。

 あいまい表現は避け、その時点で「わからないこと」は「わからない」と発言し、真相究明をし、いつまでに発表できる旨を発言することだ。

 改善案については、記者としてはできるだけ具体策が欲しいが、具体策の提示ができないときは、いつまでにできるかを話す必要がある。

 どにかくプレスの前では事実のみを話し、「眠い」とか「私も疲れている」といった私情に関する不用意な発言は避けることだ。

 当事件では現在、経営陣は「意図をもって不当表示した事実はない」と話している。しかし、表示とは産地の異なる豚肉を納品していた業者が4ヵ月間にわたり、ホテル側から求められた食材の「規格書」の提出を拒んでいた。規格書とは、原産地や管理状況、アレルギー物質の表示などを記した書類だ。

 何をかいわんや、である。納入業者が4ヵ月も規格書を提出せずに済んだ原因は何か、それを追求すべきだ。業者が一方的に責められているが、業者と仕入れ担当者の癒着、つまり、饗応や金品の贈収賄をまず疑うべきである。

 当事件が始まって今日に至るまでの間の平成19年には、大阪の高級料亭「船場吉兆」は、食べ残し料理の使い回しや食材の産地偽装、輸入牛肉を国産肉と偽表示、さらには賞味期限の改竄など「ウソてんこ盛り」騒動で廃業に追い込まれている。

 当事件もその時、内部管理が通常に機能していれば、今日ほどキズは広がらなかったろう。


Posted by globalmedix at 13:45│Comments(0)TrackBack(0)

この記事へのトラックバックURL