今回は、去年の10月末に発売されたPC用スピーカー、Olasonicの「TW-S9」を紹介したい。振り返ると、去年の1発目のレビューが、同社のUSBスピーカー「TW-S7」だった。今年の1発目もOlassonicのUSBスピーカーの新製品。不思議な縁を感じつつ、本製品をお借りすることができたので、そのレビューをしようと思う。

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 USBパワードスピーカー Olasonic 「TW-S9」 現在発売中で市場想定売価は23,000円前後 メーカ公式ページはこちら

 過去の記事を見てもらえればわかると思うが、私個人としては、仕事柄モニター傾向の音を聴くことが多いせいか、Olasonicが奏でる素直で分解能が高い音は好みだ。そのOlasonicがここにきて、『ハイレゾ対応』と謳った製品を出してきた。彼らがあえてそれを口にするということは、従来の音とハイレゾの音の違いを表現できたということだろう。
 私は正直「ハイレゾ」という言葉はあまり好きではない。スピーカーやヘッドホン・イヤホンから出てくる音の周波数がいかに広がるとはいえそれを体感するには、あまりにコストがかかりすぎる。そして、そのコストの割には、差がわずかすぎると感じていたからだ。もちろん、私の視聴環境の問題もあるだろう。決して音を聴くにふさわしい環境とはいえない普通の事務所だし、機材も数十・数百万するものは借りることができない。
 しかし、音楽を聴く人の大半は、その環境構築にコストをかけたり、自分の好きな音を追求するために時間をかけられるような余裕があるわけではない。「ハイレゾ」という言葉は、その言葉だけが先行し、実際の音楽シーンとは、ずれているように感じていたのだ。
 だが、その音の差を、PCとUSBケーブルでつなぐだけで、なおかつ本製品の価格である2万円そこそこで感じることができるというのだ(PCスピーカーとしての2万円は高いが、ハイレゾ対応のオーディオ機器として2万円と考えた場合ということで...)。その期待に胸を膨らませ、本機を視聴してみた。

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 台座が付き、重さもあるので、安定感がある

 まずは外観から。卵形の見た目は従来の同社のスピーカーを継承している。同社の同型モデル「TW-S7」と大きく違うのは台座が付いたことだ。この台座が付くことにより、「TW-S7」のようにちょっとものが当たると転がってしまうということはなくなり安定感が増したと言えるだろう(モニタの隣に置くので、物が当たるということはごく稀で、問題を感じたことはなかったが)。それよりも私がありがたいと感じたのは、台座に電源スイッチとボリュームコントロールが付いたことだ。PCスピーカーという使い勝手上、音を出したくないシーンや、見ている動画によってボリュームの違いがあり、思っても見ない大音量が流れてまうとことはよくあることだろう。そのときわざわざ、PC上でサウンドの設定をいじったり、動画のボリュームをいじるのは結構面倒くさい。これがスピーカー側でできるというのは、非常に便利だ。

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 左下に見えるダイヤルがボリュームコントロールだ。手元でボーリュームが変えられるのは、使い勝手がよい。

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 台座の背面に入力端子がついている。左のスピーカーとつなげる端子。真ん中がUSB。そして左側がアナログinの端子だ。

 また、「TW-S9」のスピーカー前面はネットで覆われており、ほこりが集まりやすいPC周辺環境ではこちらのほうが好ましいと私は考える。台座部分の背面に入力端子があり、L・Rスピーカーをつなげる端子、そしてPCとつなぐためのUSB端子、3つ目に「アナログIN」端子がある。通常の3.5mmなので、気軽にポータブルプレーヤーやテレビのヘッドホン端子とつないで、本機から音を出すこともできるようになっている。ただし、そのときは給電するために電源が立ち上がっているPCとUSB接続する必要があるので注意しよう。
 ちなみに、「TW-S7」と「TW-S9」を並べてみると、今回ご紹介している「TW-S9」の方が一回り大きいが台座部分を加味すると、スピーカー部分の大きさは、そこまで違いはないという印象だ。

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 右が前モデルの「TW-S7」。台座となるゴムのインシュレーターの高さを入れても、1回り大きい。
 
 次にスペックを簡単に見ていこう。
 下のスペック表はメーカー公式ページから転載させていただいた。
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 「TW-S7」との大きな違いは3つだ。1つ目はハイレゾ対応になったことで、周波数特性が60Hz~20,000Hzから「TW-S9」では45Hz~45,000Hz(USB再生時)に広がったことだ。上は当然上がると思ってはいたが、下も広がっていることに注目したい。そして対応している入力音声フォーマットは、USB入力で96kHz/24bitまで対応している。なぜ192kHzまで対応しなかったの?と疑問に思う方もおられると思うが、Olasonicの担当者に話を伺ったところ、市場を見回してもハイレゾ音源は、96kHzまでが主流ということ。そして、本機はハイレゾ入門機としてコストを抑えるためにも、あえて対応を96kHzまでに抑えたということだ。もちろん、ハイレゾを楽しむのは192kHzまでなくても、96kHzでも十分にその違いを確認できるということもあるだろう。
 2つ目はソフトドームツイーターの搭載だ。これにより、ハイレゾの魅力でもある高域の再生能力を上げている。しかも、従来のフルレンジスピーカーと同軸上に配置することで、つながりが良く、低域から高域まで定位に優れた音場を再現できるようにしたということだ。
 3つ目が最大出力だ。これは本機がアクティブスピーカーということで、スピーカーをドライブするアンプの能力に当たるところだが、この数値が大きいほど、大きな音もしっかりスピーカーを鳴らして、再現性を損なうことなく聴かせることができると言っていいだろう。「TW-S9」は、PCのUSB3.0端子につなぐことで、12.5W+12.5W(ダイナミックパワー)という大出力を可能とした。なお、USB2.0端子につないだ場合は、出力は10W+10W(ダイナミックパワー)に落ちる。ちなみに「TW-S7」は10W+10W(ダイナミックパワー)となっている。

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 正面に電源スイッチがある。USBを抜かなくても電源が消せるので、とても使い勝手がいい。

 それではいよいよ音のレビューをしていこう。今回はハイレゾ感を味わうためにも、聴き慣れたというか過去に何百回聴いたかわからないNorah Jonesの「Come Away With Me」から。比較したのはまず、前モデルの「TW-S7」で、再生ソフトは「foobar 2000」を使った。音声フォーマットは44.1kHzでCDから普通にリッピングしたデータだ。

 差は思ったよりも明確だった。高音の伸びがかなり違う。「TW-S7」を初めて聴いた時は、その解像感に驚きを隠せなかったが、その音が若干こもって聴こえてしまうほど、「TW-S9」の高音は気持ちよく伸びる。スーパーツイーターの存在が大きいのはもちろんのこと、今回スペック上低音域も広がっていることを裏付けるように、スピーカーから出てくる低音に迫力が増し、バランスが良くなったこともあるように感じた。そして定位感も違う。「TW-S7」はやや下方向から声が聴こえてくるのに対し、「TW-S9」は正面から聴こえてくる。これは高音の抜けがよくなって、音場の高さが広がったからだと思う。
 次に、MISIAの「僕はペガサス 君はポラリス」を聴いてみた。一番顕著に差を感じたのは、やはり定位感で、さびに入ってから、「TW-S7」だとバックバンドの盛り上がりと共に、声がそれに紛れて定位が若干曖昧になるように感じたのだが、「TW-S9」では、さびに入ってもしっかりと定位を保ち、正面で歌い続けていた。私は個人的に、ステレオでボーカルを聴く時には、この定位感が醍醐味だと思っている。スピーカーから鳴っているという感じが消え、歌い手が自分の正面に立つ感覚は、何にも代えがたい。どっちが欲しいと聞かれたら、値段差を考えても「TW-S9」を選ぶ。なお、この定位感を堪能するためにも、左右のスピーカーをできる限り離し、自分からスピーカまでの距離を1m以内で(近い分には問題ない)聴くのがおすすめだ。
 
 次にお待ちかねのハイレゾ音源(96kHz)とCDリッピングデータ44.1kHzを「TW-S9」で比較してみた。曲は先ほどと同じNorah Jonesの「Come Away With Me」だ。冒頭、音の出方に少し差を感じた。44.1kHzを聴いた時は、短距離走でスタートを切るような感じで、一気にスタートする感じだが、96kHzのハイレゾ音源では、ふわっと音が出現する感じだ。その後、徐々に音が大きくなっていく感じも、ハイレゾ音源の方が滑らかだった。そしてやはり高音が違う。高い音が消え入るまでの余韻が、ハイレゾの方が粘りがあり、結果空気感が出てくるといった表現になるのだろう。いずれにせよ、「TW-S9」でCD音源とハイレゾ音源の違いを実感できたことには変わりはない。この価格でスピーカーのみで表現できるということに感心させられた。

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 色は「パールホワイト」(左)と「チタニウムグレー」(右)2種類

 振り返って、「TW-S9」の魅力をまとめてみると、「TW-S7」よりCD音源の再生能力が素晴らしく向上しているという印象だ。新たにスーパーツイーターを搭載し、低音も更に磨かれ、バランスも良くなり、定位も向上している。この差は、並べて聴き比べると明らかだった。このことだけでも、本機に買い替える価値が十分にあると思う。ハイレゾ音源の再生に関しては、メーカーの方に伺っても、本機をハイレゾ入門機と位置付けていることもあり、じっくり聴くとその差は感じられるという印象だ。しかし、ハイレゾ音源は、録音状態に左右されるところが大きいので、再生する音源によって、その差が顕著に表れるといったこともあるかもしれない。いずれにせよ、ハイレゾ対応を目指し、再生能力を上げた結果、高低音域に余裕が生まれ、CD音源の音質が、段違いに良くなっていると私は感じた。
 最後にもう一つ、本機の魅力をお伝えしたい。私は番組の配信や動画作成の仕事をやっていることから、収録現場にPCとスピーカーを持ち込むことがほとんどだ。そして現場でいつも苦労するのが、電源の配線だ。機材はほとんど電源を必要とするものばかりで、コンセントの口数は常に不足気味になり、配線も煩雑になる。そこでありがたいのが、「TW-S9」のようにバスパワーで動いてくれるスピーカーだ。すでにその規格で出ている製品もあるが、音質的に現場で使うには厳しいものがあったが、「TW-S9」の音質であれば、細かい音も拾えるし、現場で十分活躍できる能力がある。私のような仕事をしている人にとっても、本機はありがたい存在になるだろう。

視聴機提供: Olasonic(株式会社東和電子)

記事作成:くろすけ

Olasonic USBパワードスピーカー (パールホワイト) TW-S9W