ビートルズのライブ演奏には、必ず女性ファンの歓声がつきまとう。その歓声の大きさが当時の音響技術で出せる音量を超えてしまい、それが1966年にビートルズがライブ活動を停止することに繋がったのは有名な話である。
 自分のライブで一番観客が入っていたのはせいぜい500人程度だが、それでも500人が一斉に拍手をした時に全身が拍手に包まれるあの感覚は忘れられない。史上初のスタジアムコンサートとなったビートルズのシェイ・スタジアムでの観客数は、その100倍だ。歓声がどんなものか想像もできない。映画「The Beatles EIGHT DAYS A WEEK」を見る限り、ギターとベースのアンプにはマイクは立てられておらず、ドラムには数本マイクが立ててあるのみ。おそらく、スタジアムの音響設備に声とドラムを繋いで、スタジアム各所に立てられたトラメガみたいなスピーカーから声とドラムの音が出ていただけだろう。つまり、ギターとベースはアンプからの音だけ。それを5万人の歓声が取り囲むわけで、ビートルズの4人は違う方向からそれぞれ薄っすら聞こえるそれぞれの音や体の動き、アイコンタクトで何とか演奏していたことは想像できる。
 そんな音響設備能力を歓声が超えてしまっていた中でも、ジョンとポールの歌、ジョージのコーラスは全く外れないし、4人の演奏もズレない。デビュー前のハンブルクでの武者修行や、ツアーをまわる中で身につけた肌感覚で演奏しているのだろう。それを演奏力があると言うのだと思う。ファッションや言動にばかり目がいきがちだが、ビートルズはそもそも演奏力の高いバンドで、それがあったからこそ中期から後期にかけて革新的な音楽を生み出せたのだろう、ということを実感するには十分な映画だ。

 それにしても、FCリバプールのホームスタジアム、アンフィールドで泥臭い男たちがShe loves youを合唱するシーンは最高だった。世界では女性ばかりが目立つけども、地元ではたくさんの男性もライブを見に行っていたんだと思ったが、後から調べたらサッカーの試合の時の映像だった。誤解を招く編集だ。しかし、あの屈強な男が集うことで有名なKOPスタンドでもビートルズは支持を得ていたという事実が分かり、興味深かった。