脱原発社会へ向けて何をすべきか。滋賀県のエネルギー政策課で自治体として行えることを聞いてきた。法律(※)で40年廃炉(20年の延長は一度だけあるが)が決められている以上、その先を考えておかなくてはならないからだ。

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 滋賀県は、嘉田前知事、三日月現知事とも卒原発を掲げていることもあり、脱原発へ選挙区的な政策展開を行っている。その推進役として知事直轄となるエネルギー政策課が設けられている。県というガタイの大きな組織であることが設置可能となったのだろうとは思うが、首長の政策を進めるための組織を設けていることは驚かされた。
 担当者に伺うと、設置理由は、福祉にもライフスタイルにもかかわる横断的な組織にしないと実現が可能とならないことも理由とされていた。この視点は重要だ。再生可能エネルギーの普及だけで脱原発社会は実現できないからだ。


■2030年代ゼロへ 
 
 図は、視察した際の資料から転載したもの。法で定められているように40年廃炉とした場合、原発がない社会が関西圏では2030年代に訪れる。関西以外でも原発の新設をしなければ、2049年にはゼロになる。
法律を改正すれば、運転を続けることは可能だが、現行法で規定されている以上、自治体のその時を考えなくてはならないだろう。滋賀県の担当者にこの図を見せられ、より実感した。実際にこの時を考えて計画している自治体がどの程度あるだろうか。

 滋賀県では、ゼロに向けて、計画的に再生可能エネルギーの普及と省エネルギーの拡充、そして、新たなエネルギー開発をエネルギー需要や価格、電気料金の上昇・自由化、CO2排出なども検討したうえで計画を策定。さらに、電力自由化によるビジネスチャンスも検討している。多くの自治体で参考になる。


■自治体の特性

 その計画は、まず自らの特性を研究することから始められていた。

 例えば、滋賀県は太陽光偏重となっている。理由は、風力は滋賀県が盆地の地形なので周辺部でしかできないことと風力が平均で4mしかないので適地が少なく(6m以上が適地とされている)、海岸があればいいがないこと、環境保全も考えると風力は難しいと判断していた。
 事実、動かくなっていた風力発電装置を見ることがあり、立地をよくよく考えないと無駄になることが分かる。

 地熱は、圏内に信楽焼きがあるように安定した地層があり、ボーリングにコストがかかること。何よりも温泉が少な目でポテンシャルは低い。

 木質バイオマス発電は森林面積が多いが、森の所有者が分からず区域も分からない状況なので道路が作れない。そんため、搬出ができないため滋賀県で進まない。
 このことよりも、木材には柱にするA材と合板にするB材、その他のC材とがあるが、木質バイオマス発電で燃料として使うのはC材だが、今はバイオマス発電用に材の取り合いになり値段があがっている。本来の林業がしっかりして、端材で発電できるようにすることを考えるべきとされていた。


■木質バイオマスの可能性

 木質バイオマス発電は、日本での有力株だと私は考えているが、端材を使うことが前提で、"本業"の林業が活性化しないと成り立たない現実がある。
 ある地方では、補助金を得られるためバイオマス発電所の建設ラッシュになっているが、発電できる木材量を超えてしまうほどとなり、燃料がたらず発電できない、もしくは山から木材がなくなってしまうと危惧する意見を聞いたことがある。
 自治体の担当者がこの危惧を理解していることになり、この点では安心ができるものだった。

 滋賀県の湖南市では、森林伐採ボランティアが活動し、伐採した木材をまきストーブに使うことを行なっているが、このようなことが広がらないかと考えているとされていた。
 その理由として、エネルギーを持続していくには大規模集約型よりも地域分散型のほうが適しているとされ、東日本大震災で得た教訓だったと話されていた。大規模ではなく、地域で完結できるエネルギーとして小規模なバイオマス発電であれば有力だろう。参考になる考え方だ。

 しかし、課題としていかに安く機械を提供できるかだとされていた。これはどこでも同じような状況だ。

 機械をいかに安く提供できるかについては、木質バイオマス発電装置を先進国である欧州の機械を使うことが多いが、日本の木材に合わないことから効率的な燃焼ができないなど課題が多いことをよく伺う。国産機器の出番待ちというところだろう。政策的にも、日本の木材にあった機器の開発を誘導することが必要ではないだろうか。


■省エネ、断熱

 滋賀県では太陽光が現状では最も適していることは分かったが、どのような支援を県は行なっているのだろうか。

 県として独自補助を行い、新築にはかなりの数が対応できている。だが、既存建設物に設置できないのが大きな課題だとされていた。これは武蔵野市でも同じだ。

 そのため、太陽光発電だけではなく、断熱、蓄熱も一緒に考える必要があり、啓蒙活動と啓発資材の作成などを行なっているという。補助金など直接的な支援ではなく、まずは地ならしとの政策だ。成果はみえないが、自治体がまず行なうべきことだろう。さらに先の政策は現状ではないようだ。


gesui■新エネルギー

 他にどのような再生可能エネルギーの普及を考えているのだろうか。

 担当者は、県の北部は冬に雪が多いので水量が安定的にあるので小水力を普及させたい。20mの落差があれば設備投資がペイできる可能性は高い。治水ダムでの水力発電も考えており、事業者を公募している。
 太陽光は発電ではなく、家庭のエネルギー消費の約4割は熱利用なので太陽熱の促進利用も考えている。
 まだ、実用化とはなっていないが、年間を通して安定している下水の水温を利用して地域冷暖房や給湯に活用することの検討や下水管埋設時にビニール菅を設置して地中熱利用を行なうことの研究(積水化学工業株式会社「エスロヒート地中熱」)などへの研究も行なっているとされていた。

 そのほかにもスマートシティの構想や蓄電池施設の誘致、ソーラーシェアリング、地中熱利用などあらゆる可能性を探り、さらに地域ビジネスとして成立できるように再生可能エネルギーを進めている。

 県という広域行政だからこそ行なえることもあるが、一事業だけでなく複数のアイデア、事業の可能性を考えることが必要ということだろう。武蔵野市としても参考にしたい。


■市民

 滋賀県の特徴に市民共同発電所が多いとの説明もあった。建築物や場所を提供してもらい市民が資金を出資して発電する仕組みだ。これなら多額の税金が不要で最も普及する可能性が高い。そのため県も土地貸しや屋根貸しをしているという。

 滋賀県で市民発電所が多い理由はなぜだろう?
 それは県民意識からだという。琵琶湖の水質汚濁を住民自らが石けん運動を始めて解決してきた歴史があり、意識が高いそうだ。この石けん運動が今では、菜の花を栽培し、食用にした後にバイオディーゼル燃料を作り出すNPOとなり、全国へ広がっている。農業再生や観光資源を作り出すなど他にもメリットが多い事業でもあり参考になる例だ。

 そこまでとは言わないまでも、武蔵野市でも市民発電所の試みをNPOがはじめている。だが、市内ではできずお隣の三鷹市でやっと実現できたという状況だ。市民意識は武蔵野市も同様に高いのだから、行政として支援策ができないか。例えば、公共施設の屋根貸し(市役所屋上に可能性がある)なども考えるべきだと思えた。

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■自治体の推進力

 視察して感じたのは、滋賀県では多くの可能性にチャレンジしている最中ということ。まだまだ成果は出せていない。しかし、進めてみて、問題点があれば改善していくとの考えがあり、県として政策とイノベーションが県全体の推進力になると考えているからだという。とても参考になる。とかく、できない理由を考えがちな行政には、耳が痛いのではないだろうか。大きな夢と実現へ向けて動き出すことが電気力にもなるからだ。

 現状でいけば原発ゼロ、もしくは現状よりも少なくなる。その時の電力をどうすべきか。脱原発派、推進派ともに考えなくてはならない大問題だ。この意味からも滋賀県は参考になった。市民発電所や下水熱の利用など武蔵野市でも取り入れられるものは取り入れていきたい。
 

※核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律
第43条の3の32
 発電用原子炉設置者がその設置した発電用原子炉を運転することができる期間は、当該発電用原子炉の設置の工事について最初に第43条の3の11第1項の検査に合格した日から起算して40年とする。
2  前項の期間は、その満了に際し、原子力規制委員会の認可を受けて、一回に限り延長することができる。
3  前項の規定により延長する期間は、二十年を超えない期間であつて政令で定める期間を超えることができない。

(視察は、2015年10月2日から3日にかけて原発のない社会をめざす自治体議員ネットワーク、グリーンテーブルで行なった)