平成27年9月5日に避難指示が解除されたことから帰町を進めている楢葉町を視察した。同町は、東日本大震災と福島第一原発の事故により全町民が避難していた。役場だけでなく、実際に避難している方のも話も伺ったが、着町はそう簡単にはいかないようだ。

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 楢葉町は、インフラや高齢者施設、保育園、小中学校、商店街などの整備がおおかた整う平成29年春までに町民の帰町を目指している。現状では、全町民7365名(H27年11月末)のうち、421人(人口比5.7%)、247世帯(9.2%)が帰町している状態だ(28年1月4日現在。週4日以上町に滞在している人)。

 復興計画では、従前と同じような町ではなく、居住地や産業地域をまとめたコンパクトタウンをつくり、新たな町を創り出すことが目標となっており、町長のメッセージでは、「楢葉町が歩んだ軌跡が、後に続く自治体の道標となるよう、必ずや復興を実現させる」としている(平成27年9月5日発表)。

 町の担当者の説明では、現状で半数の町民が戻ることを考えているという(図参照)。


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IMG_4387 しかし、避難されている方に伺うと不安は拭い去れていないという。その方はいわき市に避難をしているが、避難住宅への補助が28年でなくなるので、戻るか戻らないかの判断が迫られている。幸いにして楢葉町にある自宅は戻れる状態なので、狭い避難住宅で自ら家賃を払ってまでは住まないだろう。だが、放射線の被害や飲み水への不安は残る。自宅周辺の住民は戻らない人が多く、本当に暮らしていけるのかとの心配が残り、もろ手をあげての帰町とはならないと話されていた。

 ライフラインのうち、重要な水については、山の中にある湖を水源として水道設備は整備されている。不安視されている放射線の被害については、モニタリングを毎週行っており、問題となる数値とはなっておらず、安全だと町の担当者は話されていた。実際に仮設商店街などの飲食店ではこの水道水を使っているという。

 とはいえ、湖の湖底に残されている放射性物質や周辺の山林の除染は行えないとしているので、まったく不安がないと言えないのは確かだろう。避難されている方も、風呂や洗濯には使うが飲料水にはできない、と話されていた。これが現実なのだろう。

 原発から20キロ圏内であったこともあり、放射線の被害の心配も残る。視察の資料によると町内の平均は、0.38マイクロシーベルト/hという状況だ。武蔵野市の場合は、0.23マイクロシーベルト/hを超えないことを判断基準としており、もし、武蔵野市で0.38マイクロシーベルト/hの場所があると分かれば大騒ぎになるだろう。このことを考えると、不安があることはよく分かる。

 現実的に、帰町者が人口比で5.7%となっているが、戻っているのは高齢者が多く、若い世代、特に子どもがほとんど戻っていないのが現状だ。
 町は、認定こども園と小中学校の仮説校舎をいわき市内に設置しているが、ここに通っているのは146名(平成27年9月)。震災前の686名(平成22年)と比較すると大幅に減っている。他の子どもは避難先の学校に通学しているのだ。
 この校舎は、平成29年4月に楢葉町に戻る予定だが、その時に、どのくらいの子どもが戻るのだろうか。

 現地の議員に聞くと、住居が震災で壊れている。避難先での生活が安定してきているなどの理由に加え、放射線への不安もあり、戻りたくても楢葉町が戻れない理由があり、町のアンケートどおりに戻りたい町民がいるとは思えない。戻るか、戻らないかの意見は割れているそうだ。

 町は復興予算もあり再開を目指して努力されていることは良く分かる。復興予算も限度があることから年限を決めて帰町の計画を進めなくてはならないことも理解できる。
 しかし、町のハードはできても、肝心の住民がどれほど戻るのかは未知数というのが現状だ。本当の復興になるかは、分からない。もう少し、時間をかけてもいいのではないだろうか。

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 復興への最大の問題は、原発事故による被害が残っていることだ。その原発事故の原因は分からず、責任は誰も取らず、避難計画も不明確なままだ。さらに、福島第二原発の再稼動の可能性も残されている。原発をなくす。そのことをまず先に考えるべきではないか、そう思えてならない。
 楢葉町の沖合いには、洋上風力発電施設の実証実験が行なわれており、一般家庭換算で7700世帯分を年間の電気を供給できるという。このような再エネを普及させることのほうが急ぐべきだろう。

 そして、その原発の電気を使っていた人間として、原発に頼らないことを明確にしていくことを明確にすることも必要と改めで思った視察だった。
 現地に行くと、震災の風化を心配されている。少なくとも関心を持ちづけることも大切だ。


 視察は、原発のない社会をめざすグリーンテーブルのメンバーと伺った。

写真は上から
・除染土が置かれている津波被害のあった地域。現在は津波対策としての堤防工事が進められている
・住民アンケート
・楢葉町からいわき市へ避難されているかたの自宅(楢葉町)で話を伺う
・除染土が置かれている周辺にはモニタリングポストがある。数値は0.095マイクロシーベルト
・楢葉町役場で説明を聞く

(続く)


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【参考】
戻るべきか 〜原発事故からの5年〜 NO1