ソーシャルワーカーを拡充するから奨学金を廃止する? 今のご時世に何を考えているのだと思う方針を武蔵野市が示した。

syougaku■奨学金をなくして子どもの貧困対策?

 武蔵野市の平成27年度事務事業(補助金)評価実施結果が公表され、そこに低所得家庭の高校生を対象にした奨学金の廃止を視野に入れ、検討すると書かれていた。

 理由は、『公立・私立高校生に対する国や都の修学支援制度が拡充され、市独自の奨学金支給事業を行う必要性が薄れているため、事業の廃止等を視野に入れ、検討する。子どもの貧困問題の解決策を経済的な支援だけでなく人的支援も重要な方策と捉え、学校や家庭での福祉的な相談に応じるスクールソーシャルワーカー(SSW)の拡充等を図り、学校・関係機関等と連携・調整を進めることで子どもの貧困問題の解決につなげる』というもの。

 武蔵野市のこの奨学金は、貸与ではなく支給するもの。支給条件は家庭の所得に加え、本人が高校へ通いたい意思があることだ。月額1万200円と多額ではないが、返済不要なので必要としている家庭は少なくない。

 国や都の奨学金が充実したことで廃止する例は、他の自治体にはある。多くの場合は、民主党政権時に子ども手当や高校無償化が行われたことで、自治体の奨学金の役目は終わったと判断してのものだった。奨学金の金額は都立高校の月額が根拠だからだ。100歩譲ったとして、このタイミングなら分からないでもない。

 しかし、武蔵野市の場合は、授業料が無償となっても部活動の費用や学用品の負担はあることを考えて、続けてきた経緯がある。より支援を厚くするのとの考えだ。
 さらに、それまでにあった成績が優秀であるとの条件をなくす改正をしている。成績が優秀なら優待生などが受けられる可能性はあるが、成績が良くなくても学校に行きたいという意思を尊重しようとの趣旨からだった。

 このことは、私が奨学金審議会委員を続けてきていることもあり、時々の審議会で議論してきたことを体験してきたから知っている経過だ。奨学金審議会委員にも知らせず、廃止を検討しようとしているのもいただけない。


■貧困対策は、学校に行けるようにすることから始まる

 今、最も注目されている子どもの貧困問題は、食事だけでなく学校に行けるか、行けないから将来が大きく変わることから学校へ行かせようとの流れになっている。

 奨学金を廃止することは、子どもの貧困問題や奨学金を続けてきた流れからはまった逆方向になってしまう。

 スクールソーシャルワーカーの拡充は必要だが、それとこれは別問題だ。生徒から高校に行きたいけど家庭の経済状況が心配だとソーシャルワーカーが相談にのったさい、私のせいで奨学金がなくなったと言えるだろうか。

 それも、財政破綻しそうな自治体ではなく、近年まれにない高額の予算を組んでいる武蔵野市がなくすべきかを考えなくてはならない。

 奨学金の事業費は、平成26年度で47人に支給しており、総額は約556万円(1人あたり年間約12万円)。子どもの数からすれば、少数だろうが、少数でも手を差し伸べてきた武蔵野市の姿勢を180度変えてしまうことになる。そんな冷たい市政であってはならない。


■予算増を求めている奨学金審議会

 先日、奨学金審議会が開催されたところ、例年は20名弱の申込みしかなく、全員に奨学金を支給していたのだが、今年は30名と急増。そのため、想定した予算をオーバーしてしまうことになってしまった。急増した理由は分からないが、昨今の経済状況を反映しているのかもしれない。

 審議会では、予算をオーバーするから申込者を選別して欲しいと事務局から提案があった(所得や家庭状況で点数化されている)。条例では予算の範囲内で支給すると規定されているからだ。

 審議会では、今までは全員に支給してきた。昨年は受給できて、今年はできないとなれば説明が付かない。子どもの貧困が問題視されている現状を考えれば、補正予算で対応して全員に支給して欲しいとの意見でまとまっていた。

 この審議会の意向も無視することになる。


■武蔵野市の奨学金意味

 都にも支給型の奨学金はあるが、第二子、第三子なら武蔵野市の奨学金の金額に近いが、第一子に対しては武蔵野市の額の半額となってしまう。受けるほうから考えれば、奨学金を半減することになる。

 また、都が7月に支給することに対して、武蔵野市は4月から支給をする。これはお金が最も必要なのは、入学前の3月。この時に支給して欲しいとの意見が多いことから、年度をさかのぼって支給できないためにぎりぎりの4月にしている。
 さらに、市が審査するので個別の家庭状況が分かりやすく、なるべく支給できるように配慮できるが都ではそこまでできるか分からない。武蔵野市の奨学金を優先すべきとの意見があったほどだった。

 今のご時勢だからこそ、意味のある武蔵野市の奨学金であり、増やすことはあってもなくすことはすべきではないのだ。


 事務事業評価は、あくまでも検討としているだけで、廃止を決めたわけではない。とはいえ、子どもの貧困に注目があつまり、市長の平成28年度予算の施政方針には「1人ひとりを大切に〜」と書かれているのに、廃止と書く神経が分からない。タイミングは最悪だ。
 
 憤りというのを通り越して、悲しい気持ちになっている。


【参考】
事務事業(補助金)評価実施結果集(平成27年度評価実施版)