商店会の加入促進と産業振興を目的とした武蔵野市産業振興条例案が議会に提出されたが、条文に疑問が多いことから継続審議となった。

 条例案は、3月4日の総務委員会で審議された。


■集積した区域の利用を市民に求めている

 論点のひとつは、第9条2項にある市民等の理解及び協力での記載だ。
 ここには、『市民は、市内の商店街の利用及び市内産品の消費が地域の活性化につながり、ひいては安全で安心なまちづくりに寄与することに鑑み、市内の商店街の利用及び市内産品の消費に配慮するものとする』とある。

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 配慮するものとするという一文は、かなり弱い効力だが、それでも市民に商店街を利用することを求めている。

 問題となるのは、この商店街の定義だ。

 条例案の第2条(4)には、『店舗が近接して集積した区域』と規定している。普通に考えれば、近接して密接した地域とは、駅前や繁栄している区域となるだろう。
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 つまり、市民に、駅から離れ、商店が密接していない地域の商店、あるいは商店会を利用しない、配慮しないこと求める条例となってしまう。少なくとも、『近接して集積した区域』よりもランクを下げることになる。

このことの質問が委員会ではあったが、答弁では市内にある53の商店会ことだとしていた。そうであるなら、商店街をあえて『店舗が近接して集積した区域』と規定する必要はないだろう。


■商店会勧誘が目的だとすれば

 そもそもこの条例が考えられたのは、大型店を含めて商店会に入ってもらうためだ。商業関係者にヒアリングしたところ、強制はできないものの入ることを求めている条例があることで勧誘しやすいとされていたからだ。また、長年にわたって求められてもいた。

 だが、実際の商店会をよく考えてみれば『近接して集積した区域』だけにあるのではなく、少ない店舗だけの商店会もある。店舗だけで考えれば、住宅街にある隠れ家的な店もある。この条文どおりに解釈すると、『近接して集積した地域』を優遇することを求め『近接して集積した区域』以外は利用しない、配慮しないように市民に求めることになる。

 さらに、農家の庭先販売は、店舗が集積された区域にはないが、このような販売も利用しないほうがいいとなる。これで、条例名にあるように、産業を振興することになるだろうか?

 矛盾が多い条例案だ。 


■商店会の淘汰が目的か

 ある商業関係者から、商店会には元気な商店会と普通の商店会、元気がなくなった商店会の3種類がある。元気がなくなった商店会は淘汰されても仕方がない、経済の原則だといった趣旨の話を聞いたことがある。

 この考えが元になり、条例が作られたのであれば、この条例の意味は分かる。近接して集積されていない商店会や商店は淘汰して、『近接して集積した区域』に集約していこうとの政策的な条例となるからだ。

 確かに商業者なのだから、経済の原則が元になるのは分かる。しかし、元気のない商店会や商店でも、もっと元気になろう、地域に貢献しようと努力しているのであれば、何らかしらの手立てをしても良いのだと思う。
 さらに、一軒だけでも魅力的な店であれば、より頑張ってほしいと思う。市民の立場からすれば、商店会に入っているか、入っていないかで判断するのではなく、魅力的な店か、必要な商品やサービスがあるかで判断するだろう。

『近接して集積した区域』の商店だからではない。この考えからすれば、そもそも、『近接して集積した区域』という商店街の利用を市民に求めることには賛成できない。


■商店会に入らない店の利用も求めている

 また、商店会に入ってもらうことが目的とすれば、条例案に商店街の利用を求めているが、その商店街の定義は、『近接して集積した区域』とだけあり、商店会とは規定していない。
 つまり、『近接して集積した区域』で、商店会に入っていない大型店の利用も求めていることになる。これでは、商店会に入ってもらうという目的とは真逆な条文になってしまう。

 審議の結果は、継続審議となった。否決でもいいとは思ったが、言葉の定義の整理や何が目的なのか。そもそもこの条例が必要なのも含めて、再度の議論を期待したい。急いで制定する必要も感じられない条例でもあるからだ。



【参考】
武蔵野市産業振興条例案