格差社会が問題視される中、図書館は何をできるか。ひとつのヒントが得られたのが、3月5日にあった学習会、『ホームレスと図書館〜地域社会の問題と考える〜』だった。
■図書館ができること

 三鷹市でホームレス支援を行なっている「びよんどネット」が主催したもの。地域によっては、閲覧席をなくしたり、女性専用席として実質的にホームレスが使用できなくしたりする図書館もあるが、武蔵野市の図書館でも問題視する意見を伺うことがあり、参加をしたのがこの学習会だった。

IMG_0689 基調講演を行なったのは、山口真也沖縄国際大学教授。学生時代に山谷地区と釜ヶ崎の図書館を調査したことから、誰にでも情報を提供するミッションを持つ図書館として何が出来るのかと問題提起をされていた。

 その提起とは、排除するのではなく、福祉のとの橋渡しをすることやホームレスから脱するための情報を提供すべきではないかとの内容だった。

 貧困は、教育・学習機会が不十分であることに原因があることが多い。そうであるなら、図書館法は社会教育法の下に位置づけられているのだから、教育・学習機会を提供する役目が図書館にはある。図書館の自由に関する宣言には、知る自由を保障しますとあるようにホームレスにも保障されるべきだろうとされ、実際に、支援者への連絡先や履歴者の書き方から始まる雇用相談の案内などを図書館に置き、対応している例の紹介もあった。

 また、以前の記事で書いたようなソーシャルワーカーを雇用している例も紹介されていた。


■武蔵野中央図書館の人気の理由
 
 学習会では、「びよんどネット」がホームレスに図書館についてのアンケート調査を行なった報告もあった。アンケートは、井の頭公園と野川公園で野宿している人に直接聞き取りを行なったものだ。7名からの回答で、数としては少ないかもしれないが、このようなアンケートは聞いたことがなく貴重な情報となる。

 このアンケートには、武蔵野市と三鷹市の図書館でどの図書館を利用するかの項目があり、最も人気がたかかったのが武蔵野中央図書館だった。2位は三鷹図書館・駅前分館。

 武蔵野中央図書館を利用するのは、自転車が置ける。トイレが利用しやすいからとあり、週に数回、中には毎日利用すると回答した人もいた。


■ホームレスも匂いを気にしている

 このアンケートで興味深いのは、図書館で利用する時に気をつけているのは何か? の問いに対して、全員が「匂い」と回答していたことだ。
 服装に気をつけるとの回答や靴は匂うのでスリッパに履き替えて入館しているという人もいた。さらに、寝ないようにするとの回答もあった。

 ホームレスも、何が問題となっているのか分かっていることになる。

 ホームレスへの苦情といえば、匂いや服装だけでなく、酒を飲んで暴れる、注意を聞かないなどがある。それが、聞いた数は少ないとはいえ、この回答だ。

 支援、あるいは情報提供で現状を変えることができるのでは、と思えた回答内容だった。

 例えば、主催していた「びよんどネット」では、週に2回、シャワーや洗濯機をホームレスに使えるように事務所を開放し、食事や衣服の提供、生活相談などもしているという。このような支援者へとつなげること、支援団体があるという情報提供ぐらいは図書館でできるだろう。

 プレイスのパソコンで仕事を探しているとの回答もあったので、このような利用を広がることもできる。

 もっとも、それでも、ホームレスでいいという人もいるそうで、これはまた別問題だ。


■ホームレスは図書館のタブー?

 山口さんや今回の学習会を紹介してくださった研究者の方にもいろいろと話を伺ったが、ホームレス問題を正面から考える図書館はほとんどないという。研究調査も山口さんが20年前に行なった程度しかないそうだ。図書館員から提案があっても、多くの場合は、受け止められないのが現状という。そのため、ホームレスと図書館の問題は常にあるが、解決までとはなっていない。

 確かに、経済状況から経費削減が求められ、人員も減らされている一方でサービス向上が求められている現状を考えれば、苦情の対象者にまで手をさし伸ばせないのは理解できる。排除するのが最も簡単だからだ。

 しかし、ホームレス側にも問題点がわかっているのなら、手立てはあるのではないか。ホームレスとはならなくとも、仕事がない人や就職できない人など、困っている人は少なくない。ここへどう支援していくのかが、公共図書館のミッションではないか、とも思った学習会だった。

 おしゃれなカフェを併設するのもいいが、もっとも基本的なことを考える時期だろう。格差の時代なのだから。


【参考】
びよんどネット
BLOGS ホームレスと図書館