会派(民主生活者ネット)で、平成23年度より小中一貫教育を実施している羽村市を視察した。一定の成果は出ているようだが、武蔵野市の場合はどうかと考えると疑問は残る。

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 羽村市の面積は約10平方辧人口約5万6000人で市立小学校7校、市立中学校が3校ある。市の面積は武蔵野市とほぼ同じ。人口は約半分といったところだ。

hamura3 小中一貫教育は、市内に3つある中学校のうち、2つの中学校で中学1対小学校3校の施設分離型小中一貫教育。1つの中学で隣接している1小学校と施設隣接型の小中一貫教育を実施している(画像参照)。

 地図を見ると分かるように、ちょうど良く小学校と中学校の位置バランスが取れている。そのため小中一貫教育が実施できたのだろう。学校区の変更はあったが、通学距離などでの大きな問題はなかったとされていた。


■小中一貫の理由

 羽村市が小中一貫教育に踏み切った理由は、「中一ギャップの解消」「不登校の減少」「学力の向上」「いじめの減少」が主な理由だ。小中学校とも都平均を下回る学力であり、不登校では、特に中学校が東京都の出現率を上回っていた状況だったという。

 そのため平成18年度から教育関係者や保護者の代表などで構成する「羽村市立小・中学校一貫教育校検討委員会」を設置し、小中一貫教育について検討。報告をもとに、平成21年10月に計画素案を決定。平成23年度に施設隣接型の羽村第三中学校区で先行実施し、平成24年度から全学校で小中一貫教育が始まっている。

 先行実施まで5年かかっていることになる。武蔵野市では28年に小中一貫の検討を公表し29年度以降にモデル校を設置したいとしていることと比較すると、武蔵野市が先走っているように思えてしまう。
 手法の違いかもしれないが、気になるところだ。


■小中一貫の内容

 羽村市で行っている取り組みは以下の5項目だ。

1:児童と生徒の交流の機会を増やす
 |羈惺酸古未砲茲訃学校学校行事への参加( 中学校の部活動との交流)
 中学校部活動へ小学校児童(6年生) の参加
 小学校児童会と中学校生徒会との交流

2:小学生に中学校教員が支援する授業を増やす

3:教員同士の交流
 ‐・中学校の教員による定期的な交流(授業参観や情報交換)
 ⊂・中学校の教員による生活指導上の取組の統一化と実践等

4:羽村市小中一貫教育基本カリキュラムによる系統的な指導
 .リキュラムの重点化
 ⊂学校1 年生からの英語教育の充実等
 1村学・人間学・親学の実施(特色ある教育)
 
5.特別支援教育の推進
 。糠間で考える


 羽村学は、各学校が続けてきた内容で郷土学習のこと。親学とはPTAへの研修会の実施でそう多くは実施されていない。人間学は、職業教育などで、武蔵野市での職場体験と同様のもので、武蔵野市で実施されているものと大差はないように思えた。

 英語を小学一年から取り組むのが特徴だ。中学校の教師が担当し、年間10〜15時間で市独自雇用の外国人助手(ALT)や大学生のインターシップなどの協力を得て実施している。語学の習得というよりも、親近感を持つ、興味を持つことが主眼のようだった。

 
hamura1hamura-2■成果は

 実際に学力がどのようになったか。不登校やいじめはどうなったかの評価も行われている。

 資料によると、中学校全体での不登校率は減少し、中学1年での不登校はゼロになっている。中一ギャップの解消はできているようの思える。
 ただし、全校で小中一貫が始まった24年度までのデータしかなく直近のデータが出されてからでないと判断はつきにくい状況だ。

 学力については、正答率で都平均を下回っていたが、上回るようになり成果となっているようだ。しかし、何がどのように作用してこの結果となったのかの分析はされておらず、小中一貫教育の成果なのか、教師の努力なのか、生徒児童自信の努力なのかは分からない。

 実は小中一貫教育を考えるさい、成果がこのように小中一貫教育の成果なのか他の要素による成果なのかが判断できない課題がある。同じ市内で63制と小中一貫を別々にやるという実験的な実施は、等しく同じ教育を求められる義務教育としてはできないだろう。

 羽村市の視察でこのことを再認識した。


■緩やかな一貫教育

 説明が終わった後で羽村市教育委員会の担当者と意見交換をしていたさい、羽村市は「緩やかな一貫教育」なんです、と話されていたのが印象的だった。

 学校を含めた公共施設の統廃合が求められていないため、教育内容だけを考えればよかったこと。自由学区による学校間競争をしていないこと。中学校で行われている教科担任制を小学校でもと考えてはいるが、まだ実施はしておらず、中学校教師による支援程度にとどまっていることなどがその理由だ。品川区のような派手さはないが、少しずつ進めている印象だった。

 施設一体型を検討したかを伺うと、費用がかかること。義務教育なので一校だけで行うのはどうか。小さい市なのでやるなら全市で足並みをそろえたいと判断し、導入はしなかったとされていた。

 これらの話を伺うと、武蔵野市で急いでやるべきかとの疑問が出てくる。


■教師の意識改革も成果

 羽村市の小中一貫教育は、当初目的に対しての成果は先の書いたとおりだが、教員の意識が変わったことが大きいとの話もされていた。

 それは、数字には表せないが、小中が連携することで発想の幅が広がったこと。複数の教師で共通した取り組みが行えることなどチームとしての教育・生活指導を考えるようになったことだという。

 小学校は特に教室の中に大人は一人となり、教師は王様になりやすい。また他のクラスの授業と比較できないので、授業の良し悪しの判断が教師ではつきにくい課題がある。
 保護者側から言えば、教師によって授業内容が大きく変わることが分かっており、今年の担任は"当たり"とか"はずれ"といった話は、当事者の教師が意識しているかどうかは別として、日常的な話題だ。

 何をもって"当たり"とするかは別としても、差があるのは事実だろう。それが良い方にレベルアップするのなら集中一貫教育の意義はあると思う。

 しかし、今の教育の問題をそもそもで考えると、教師の数不足。教育費の少なさ(国)が今の問題の根本にあるのではないか。「緩やかな一貫教育」となった現状で教師の忙しさについて伺うと、解消はされておらず、打合せの時間が増えていることも分かった。

 今回とは別の機会に、施設分離となっている小中間では、教師の移動時間や子どもの交流時の移動時間がかかり授業時間や教師の負担が増えているとの指摘も伺っている。
 料金を市が負担し教師がタクシーで移動することを認めているが、狭い市域なので使われることは少ないそうだ。この物理的な問題をクリアするのは並大抵ではないのだろう。

 小中一貫教育にするにしても、忙しさが同じ、もしくは増えてしまうのであれば、小中一貫教育の良さが発揮できないのではないだろうか。施設一体型にするとしても、忙しさが減るのかどうかの視点も持たないと逆効果になりかねない。



 武蔵野市は施設一体型の小中一貫教育をめざしているため、羽村市とは同じ状況ではない。しかし、課題点は浮き上がってきた。今後も調査を続けたい。


【参考】
羽村市教育委員会 小中一貫教育