原子力空母が事故を起こしたらどうなるか? 武蔵野市でも無関係ではないことだが、対応が考えられていないが実情だ。

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■福島原発と同じ規模の原子力空母

 5月25日に横須賀で開催されたLM神奈川勉強会のさい、横須賀のまちを散策するオプションツアーに組まれていた軍港クルーズに参加した。そのさい、巨大な米原子力空母ロナルド・レーガンを見たのだが、同情していた議員から、事故が起きたさいの避難計画が作られていないと伺った。

 ロナルド・レーガンは、『原子炉を2基搭載し、熱出力は合計120万キロワットとみられる。福島第一原発1号機の138万キロワットに近い規模』だという(朝日新聞「米原子力空母ロナルド・レーガン、横須賀に入港」2015年10月1日)。


■原発との違い

 原発とは構造が違うとはいえ、下記が問題となるという。

1.狭い船体内に設置するため、炉心設計に余裕が少ない。
2.放射能防護のための格納容器が不十分である。
3.船の上のため絶えず炉心が振動衝撃にさらされる。
4.海難事故による原子炉や付属設備の破壊、破損がありうる。
5.寄港、作戦等により無理な炉の出力調整を強いられる。
6.核ミサイルの高性能火薬との同居。
7.交戦による炉の破壊、故障。

 このことを考えると原発よりも事故の危険性は高いように思える。
 
 原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会のサイトによれば、以下の事故が起きているという(上記の構造も同サイトから)。

・日本の原子力『むつ』が放射線漏れ事故を起こし廃船
・米海軍の原子力潜水艦も、過去二回にわたって、原子炉ごと沈没する事故を起こしている
・1971年:原潜ウッドロー・ウィルソンが、グァム島で、炉心溶融の一歩手前の冷却水の圧力低下事故
・1975年:潜水母艦プロチュウスが、グァム島で、原潜からの放射能の強い冷却水を、大量に放出する事故
・1988年:英国の原潜レゾリューションが、母港のドックの中で、一次冷却水がとまり、あわや炉心溶融という事故
・1979年:原子力空母ニミッツが原子炉部分で一次冷却水漏れ事故
・1989年:リンカーンが放射能を帯びた冷却水を川に放出する事故
 他にも旧ソ連では、原子力艦が、炉心溶融の事故を起こしたり、原潜が原子炉事故によって沈没したりする大事故を起こしているという。

 軍事ということもあり詳細なことは分からない。横須賀に入港する原子力船の放射能漏れは指摘されているが情報は公開されていないのだそうだ。


■原子力艦と原発では対応が違う

 福島第1原発事故後に「原子力災害対策指針」は改定されたが、原子力艦を対象とした「原子力艦の原子力災害対策マニュアル」の基準は改定されておらず、対応に大きな差が出ている。

 原子力災害対策指針では、緊急事態のさい、下記のエリアで対策が求められている。

・PAZ:半径5km圏内。即時避難などを準備する「予防的防護措置準備区域」
・UPZ:半径30km圏内。避難、屋内退避、安定ヨウ素剤の予防服用などを準備する「緊急時防護措置準備区域」
・PPZ:半径50km圏内。放射性プルーム(放射性雲)への対応として屋内退避、ヨウ素服用が求められる「屋内退避、ヨウ素服用対策準備区域」

 これに対して、原子力艦の事故のマニュアルは、即時避難かコンクリート屋内退避するのが原子力空母から半径1km以内(原子力潜水艦から半径0・5km以内)、屋内退避するのが半径1.3km以内(同0.5〜1.2キロ以内)とだけ定められたままだ(毎日新聞2015年11月23日)。

 そのため、国は昨年11月から「原子力艦災害対策マニュアル検証作業委員会」で検討を始めている。


■1900万人を対象にした対策

 もしこれが、「原子力災害対策指針」と同じように改定されたらどうなるか。

 PAZ=横須賀市内で20万人以上が避難
 UPZ=横浜市、川崎市、大田区などが含まれ100万人以上が避難する可能性
 PPZ=武蔵野市も含む東京都、神奈川県、千葉県の一部が含まれ1900万が対象に

 現実的に避難ができるのかと考えると、無理としか思えない。


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 武蔵野市で考えると、地域防災計画に「原子力発電所事故等に伴う放射性物質対策」が考えられているが、情報収集や共有、空間放射線量や給食食材等での放射性物質の測定を行う程度で、安定ヨウ素剤は用意されていないのが現状だ。  原発の安全神話がなくなり、「原子力災害対策指針」が改定されたのだから、「原子力艦災害対策マニュアル」も当然改定されるべきだろう。改定されたら、どう対応できるのだろうか。現実的に無理と考え、このまま蓋をしてしまうように思えてならない。


■原子力艦の問題

 原発は不要と考えているが、同様に原子力艦という危機も考えなくてはならない。それも、横須賀にあるのだ。
 この問題は、神奈川のマスコミでは取り上げることがあるが東京には伝わっていないのではないだろうか。私も目の前にして、考えなくてはならない問題と認識したほどだった。
 
 図は勉強会を主催した小林のぶゆき横須賀市議会議員が作成した『横須賀データマップ〜41万人の地図〜』「原子力空母にもしものことがあったら?(関東) 」から転載させていただいた。

 一番小さい円がPAZ。二つ目の円は、現在はなくなっている原子力防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲で8〜10km圏内を示している。  3つ目がUPZでもっとも大きいのがPPZ。武蔵野市も含まれている。こうしてみると、より分かりやすい。