熊本視察では、大西一史熊本市長からも行政がどのように対応したのか、現実の話を伺った。
 首長の最大の役割は「災害など危機管理をリードできるか」と考えてきたが、それでも今回の地震は前例がなく、防災計画は甘かったと反省をされていた。武蔵野市でも再考が必要だろう。

IMG_5865

 大西市長とは、私が現在、事務総長をしているローカルマニフェスト推進地方議員連盟の仲間で、以前の共同代表だった。視察に伺ったのは同連盟の役員有志。私もだが、市長選挙に応援に行ったこともある人が多く、旧知の仲ということもあり、堅苦しい話はなし。本音べースで話を伺えた。また、今回の経験を活かしてほしいと市長自らつくったパワポイントが用意され、市長が自ら説明することで始まった。


■5〜6万の想定に対して11万人の避難者

 大西市長は、市長になって1年6ヶ月の時期に熊本地震が発生した。阪神淡路大震災は、官房長官の秘書として働き、中越地震、東日本大震災での教訓はあったが、それでも備えは足りなかった。特に大きな地震の後に、さらに大きな本震が来るとは想定されていなかったと開口一番、話されていた。

 1回目の避難者は約2万人。備蓄倉庫から、乾パンやアルファ米や水や毛布をどんどん配ったが、1回目で出し切ってしまった。その後の本震では、市が把握しているだけでも11万人の避難者となってしまったが、その時には備蓄品はない、把握していない避難者と連絡は取れず、どこにいるかも分からない状況となってしまった。

 熊本市の地域防災計画では、5〜6万人が避難すると想定していたため甘かったことになる。また、あれだけ揺れると恐怖心から家の外に出てしまい想定以上の避難者となってしまう。さらに水が出ないという状況だったという。


388_large■水への甘さ

 大きな反省は水にあるという。

 水は、熊本市は地下水が豊富であるため困らない。水道も止まらないという前提で水の備蓄はさほどしていなかった。
 11万人に水を配ることは、1人が1日をしのぐだけで、2〜3本(500ミリリットル)は必要になるから、20〜30万本が必要になり、これは、九州全体の生産量や在庫数になる。これをどうやって調達するのかなり、全国にお願いしたり、政府にお願いしたりした。

 政府のプッシュ型の援助物資支援には、批判はあったが、当事者としてはありがたかった。「これが必要だからお願いします」というプル型では、やっている手間も時間もかけられなかったとされていた。

 水は真夏であれば、もっと必要になっただろう。
 武蔵野市の水道水は、地下水が約8割だ。東京都からの水が回っては来るが、市内にあるポンプで汲み上げる水がどこまで使えるのか。使えない場合はどうなるかも考えること必要かもしれない。


■物資の洪水

 プッシュ型の援助物資支援はありがたかったとは話されていたが、しかし、「物資の洪水」への対応は非常に大きな課題となったという。

 避難所への対応については、最初は、支援物資デリバリーがとにかく大変だった。 「うまかよかなスタジアム」を支援物資集約拠点にしたが、全国の自治体や様々な団体からの支援物資が集中し、さばききれなかった。トラックが10時間待ちになってしまった。高速で来ても渋滞がある。拠点に到着してもフォークリフトはないわ、マンパワーはないわ、人海戦術でやるしかなかった。

 さらに、集約拠点から避難所への配送車両も不足していた。拠点に集まってくる物資は10トン車で来る。10トン車で来られると、「各避難所にまわって降ろしてもらえませんか」ということができない。4トン車や2トン車でないと狭いところに入れないからだ。

 今回の教訓でいえば、なるべく熊本から近い地域、物流の拠点をつくり、そこから配布することが必要だったという。武蔵野市の場合は、総合体育館が拠点として想定されているが、このスペースで間に合うのか。10トントラックに対応できるのか。そもそも、武蔵野市の周辺も被災しているなかで武蔵野市だけを目標に物資が来るのかなど、現実の災害時にはどのように対応できるのか。ここでも再考が必要だろう。


■ライフラインで優先すべきは水道

 水道の断水は熊本市の全世帯、約32万世帯に影響した。ライフラインの復旧は、電気やガスよりも水がプライオリティとして一番高いという。水、電気、ガスの順。とくに基礎自治体は水。水さえ通れば、トイレと衛星環境がぐんとよくなる。水道が通れば、市民の不満はだいぶん下がるとの話はヒントになりそうだ。
 避難所では食中毒が発生したとの話を伺ったが、衛生環境も考える必要があるだろう。参考にしたい。
 
 水道は、4月30日には復旧している。これは、官邸からの指示があったのと、厚生労働大臣の塩崎さんから連絡があり人を出してもらうようにお願いしたところ、日本水道協会や組合の皆さんから人を出してもらったことが大きいという。200人ぐらいお願いしますと言ったら400人が来てくれたいへんありがたかった。

 ガスの復旧にも東京ガスや大阪ガスなど全国から派遣してもらい対応ができた。全国からの支援に感謝したい。一方で都市ガスの復旧には権利者の立会が必要で、確認しながらやることになり非常に時間がかかったとされており、今後、制度も含めて再考が必要だろう。

(続く)

DSC00404_original