医療情報を積極的に市民に提供し、地域課題解決を目指す東近江市能登川図書館を市議会文教委員会で視察した。図書館は誰のためにあるかを考えるために参考になった。
 
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 東近江市能登川図書館は、東近江市内にある7つの図書館で2番目に規模の大きい図書館で、中央図書館ではなく分館の位置づけになる。
 
 この図書館を視察しようと考えたのは、「バオバブ」と呼ばれる地域医療情報を提供していることからだった。

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 図書館のミッションとして、昨今では、地域課題をどのように解決するかが求められている。ビジネス支援などの取組みは行われているが、住民生活のもっとも基本となる健康について積極的に支援をしていることを以前から聞いていたからだ。
 
 地域課題解決ができるかは、貸出数や蔵書数で評価してきたこれまでの図書館評価とは異なる評価軸ともなると考えていたことも理由だ。
 

■地域とつながる

 地域医療情報を提供するのが「バオバブ」と呼ばれるコーナーで約6600冊の本が並べられていた。図書館は書籍をNDC(日本十進分類法)の番号順に並べるのが普通の手法だが、「バオバブ」は、NDCではなく、雑誌を含めてさまざまなジャンルから医療や健康に関するものを集中的に展示していた。
 
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 このことは月別に企画展示をする図書館は多いが、同じような手法ともいえる。ことなるのは、その量と常設していることだ。
  常設であれば、健康が気になった時に住民は何時でもここへ行けばいいとなる。地域課題は、地域のよって異なるが、このような展示ができることは、その地域のことを図書館員が理解しているからこそできる展示ともいえる。
  
 なぜ始まったのかを伺うと、30年前から図書館が地域とつながることを考えてきた。その中で社会教育活性化プロジェクトの補助金を得で地域住民や関係団体と話し合っていたなかで医療、環境、福祉がテーマとなり、図書館で何をできるかと考えたことがきっかけで6年前から始めたとされていた。
 
 また、地域とのつながりを深める中、地域情報誌「そこら」の編集を地域のNPOと一緒に編集することも行っていた(発行は市の総務課)。
 
 地域とつながることで、課題解決への情報提供だけでなく、地域を知り伝える活動も図書館が行っていることも分かった。このことは武蔵野市の図書館でもできるのでは、と思えた内容だった。
 
 吉祥寺図書館がリニューアルするさいに、地域課題解決型を目指すとしている。地域課題が何かはまだ不明確だが、このようなことへの取組みも必用だろう。



文書名 _そこら3号_低容量PDF



 

■専門職

 地域とのつながりを深めるのは図書館員のスキルや雇用が大きく影響する。そこで、現状の雇用体制を伺うと、正規職員が23名、嘱託が48名の体制だが市民対応する部署は正規職員が担い、全て司書資格を有している。
 採用は図書館員として採用され、市内の図書館を異動していく。市が合併したさい、図書館がない地域に新設したさいには、他自治体から図書館長をヘッドハンティングしてきたという。
 
 当たり前のことといえばそれまでだが、図書館員は専門職として位置付けられていること驚かされた。多くの自治体では、正規職員が多いと人件費が増えるため、指定管理者制度などの民営化が行われているが、東近江市ではどうかと聞いてみたところ、地域とつながるには何十年もの蓄積が必要になり民間ではできない。このことを市民が分かっており、民営化の話は出てきていない。整理統合となっても市民が反対するだろうと担当の方は話されていた。
 
 ここまで市民の応援があることには羨まし気持ちになる。武蔵野市の図書館もそうあってほしいが、市民がどこまで図書館の在り方や活動、それも貸出し数や蔵書ではない評価をしているかが気になってしまった。
 
 吉祥寺図書館で近く指定管理者制度の導入が予定されているため、ひとつの視点としてみたい。武蔵野市の指定管理者制度は民間が競争して運営事業者を決める方式ではなく、市が出資する外郭団体に運営を任せる方式であるため一般的な制度とは異なるが、「何のために」が今一つ不明確なので再確認をしてみたい。


■民具による能力活性化 


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 能登川図書館は、博物館との複合施設だった。視察のさい、こちらの施設も見させていただくと、昭和の生活道具の展示をしており、懐かしさを覚えた。
 このような展示は武蔵野市でもふるさと歴史館で行われていることだが、興味深いのは、「民具による能力活性化事業」が行われていたことだ。
 
 この事業は、古い民具を貸し出すことで昔のことを思い出したり、話をしたりすることで認知症の予防や抑制に役立つとされ、回想法と呼ばれるものだ。展示だけでない民具の使いかたとして、武蔵野市でもできるのでは、と思えてしまった。
 
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 図書館による地域課題解決、それも医療や健康に取り組むことは武蔵野市でも考えていくべきだろう。今後の参考にしたい。
 
 
 【参考】能登川図書館


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