熊本視察では、6月に続き大西一史熊本市長、熊本県の有浦隆危機管理防災企画監から被災時の行政対応と課題について伺った。

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 大西市長からは前回もうかがっているので、その後に明らかになったことの概略を記してみたい。


■文化財はバリアだらけ

 視察時には熊本城のその後も確認してきたが、大きくは変わらない状況で、復旧にはさらに長い時間がかかることが分った。現状ではなるべく早く復旧することを願うことぐらいしかできないが、大西市長は、文化財はバリアだらけ。そこで震災が起きたらどうするかを考えほしいと話されていた。
 特に熊本城は、加藤清正が敵から攻めにくい城にしたため、現在で考えると救助がしにくい施設となっているからだ。まっすぐな道路はなく、城壁か崩れれば通行はできない。城の中は迷路のようで階段が多いことを考えれば、観光客がいたときに震災が起きたらと考えると空恐ろしい。

 文化財保護とバリアフリー、防災をどのように融合させるべきか。多くの自治体で考えなくてはならにことだろう。


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■子どもの元気な声とイベントで元気が広がる

 熊本では学校が避難所になっていたが、被災後に学校を再開することで、元気な子どもの声が避難している人たちの元気を広げる効果があったとの話には注目したい。
 学校を再開するさい、子どもの声がうるさいかもしれませんがご協力をお願いしたいとの根回しはしたそうだが、日常を取り戻してことで、前向きに取り組みができるようになるのだろう。再開後に少しずつ、避難所から退出するようになったそうだ。

 武蔵野市でも学校が避難所になるが、いつ、どのように学校を再開していくか。考えておく必要がありそうだ。
 避難所では、倉庫や階段横のスペースを活用して子どもが勉強できるスペースを作っていたが、子どもの居場所を作ることで子どもの気分も変わることになる。このことも参考にしたい。子どもの声がうるさいという人もいるだろうが、元気な声は未来の希望でもある。次世代を担う子どものことも考えいくことが避難所でも社会にも必要だ。

 また、震災後にJリーグのロアッソ熊本のゲームが始まると被災者や市民の気分が変わり、より頑張ろうとなった。祭りやスポーツイベントは元気につながるので開催したほうがの話も伺った。

 開催するかどうか悩み、実際に祭りの金があったが復旧への手当てをしろとの意見も多かったが、元気をつけるのは必要と考え実行したのだそうだ。
 
 イベント規模は縮小してやることにしたが、結果は熊本以外からも参加される方が多く、市民の気分転換になった。復興への優先順は考えるべきだが、少しずつでもやったほうがいいとのアドバイスは参考にしたい。


■災害を忘れない

 熊本地震前は、熊本は地震がないのが自慢だったと大西市長は話されていた。地震がないとの自慢話は、他の方からも伺ったことがあるので、多くの人が思い込んでいたのだろう。
 しかし歴史を調べれば127年前に大きな地震があったことが分り、このことを忘れてしまっていた。伝わっていなかったとの反省の弁を伺った。
 東日本大震災でも、過去に大地震があったことを忘れていた地域と伝えられていた地域で被害に大きな差があったからだ。

 熊本市で、災害への意識についてアンケートをしたところ、防災用品を備蓄していた人は34%だったそうだ。わが身を振り返ってみたくなる結果だった。

 また、指定避難所の認知度の低さも課題だそうだ。アンケートによると37.2%が知らなかった。特に18〜34歳の若い世代が知らないことが分り、どのように情報を提供かが課題とされていた。これはどこの自治体でも同じだろう。武蔵野市でも再考すべきことだ。


■世の中に流れている分析は違う

 熊本県庁の有浦さんは、震災対応への世の中に流れている分析や政府の発表と現実は違っていると開口一番、話されていた。

 例えば、震災後に多量の物資が届けられていたとした話があるが、震災直後に実際に運んでくれたのは自衛隊だった。民間は書類が整わないと動けない。プッシュ型支援が評価されており、ありがたったが単品大量方式は良し悪しがある。被災状況を把握して、必要な物資をまとめている間に次々に来てしまうと実際のニーズに合わなくなるからだそうだ。
 
 震災直後に水や毛布などはプッシュ型が良いかもしれないが、他の物資は、ニーズを把握してから物品を調達し配送までしている間に他の物資が必要になるケースがありタイムラグが問題となるという。時間軸を考え何が必要になるのか、さらに熊本地震の教訓を精査していくことが必要となりそうだ。

 また、そもそも防災とは何かとの問いかけがあった。

 震災後の対策を思い描きがちだが、災害拓基本法には、未然に防止し、被害拡大を防ぎ、災害の復旧を図ることとある。救助だけでなく未然に防止することをもっと重視すべきで、本質は予防、災害にならにようにすることが重要。ハザードマップを作るケースがあるが、災害が起きるところに住まわせてしまったことの問題も検証すべきとの指摘には考えさせられた。


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■同じ訓練を毎年やっても助からない

 教訓となる事例を数多く話されていたが、最も印象深かったのは、同じ訓練を毎年やっても進化がない。実際には助からない。災害は複合的に起きることがある。地震も雨も原発もある。そのようなケースを想定しているか。事前に想定されていることをしている訓練で良いのか。熊本県では、事前に情報がないブラインド方式でやっていると話されていたことだった。

 確かに、事前に分っていることが大震災で起きるとは限らない。何が起きるか分らない状況に対応することが訓練では必要ではないだろうか。地震と同時に台風や水害が起きることも想定しておかないと、もしもの時に対応できないのだろう。訓練を考え直す必要がありそうだ。

 また、実際の震災対応は、自衛隊方式のグリッド地図を導入し一目で被害状況が分るようにして指揮ができるようにもしていたと話されていた。グリッド地図とは、地形図を枡区切り縦軸と横軸の数字の組み合わせで距離や面積が分り場所も特定しやすい図で世界標準となるものだ。
 通常の地図は、作成目的により縮尺や表現、地名など記入されている地理情報が異なり、誰が見てもすぐに分らない課題がある。このため確実に情報が伝えられる地図として注目されているものだ。これに被災状況を簡略して記入したカードを貼っていくことで、一目で被害状況が分り、地域全体の課題も分るというもの。

 有浦さんは元自衛官。非常時の対応には精通しているともいえ、この方式が実際に役立っていたと話されていない。このことも参考にしていきたい。

 短い時間ではあったが(それぞれに50分)、収穫は大きなものがあった。さらに調査が必要だ。武蔵野市にも職員を派遣して同様に調査することを提案している。早急に実施してもらいたい。

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※お二人のお話は、ローカルマニフェスト推進地方議員連盟で行った熊本研修会の一日目で伺った(10月27日、ホテル熊本テルサ内で開催)



【参考】
復興はこれから。忘れてはならない熊本地震  熊本視察報告