10月29日、30日に開催された全国学童保育研究集会in愛知に参加した。現状の学童保育(武蔵野市では学童クラブと呼ぶ)と今後の方向性などを学んできた。武蔵野市の学童クラブも育成指針が改正される予定で内容に注目すべき時期であり、学んだ内容を参考にしたい。


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■子どもの発達段階

 一日目の全体会では、各自治体で学童保育条例を制定し施設の基準を明確にしてきた。しかし、最低基準の域を出ることができず、現状を追認したに過ぎない例が多い。学童保育とは何かを再確認し、より良い質を目指すために保護者や学童保育指導員から自治体への働きかけが重要になる。

 また、預けるだけから、子どもが育ち生活する場として何が必要か。場をよりよくする要になる学童保育指導員の雇用も考えるべきなどの報告があった後、「子どもの発達と大人の役割」をテーマに田丸敏高福山市立大学教授から基調講演があった。

 講演内容は多岐に渡っていたが、子どもから大人への発達には段階があり、段階に応じた対応が必要になる。感情や言語、思考、人格、運動能力などが著しく変化していくが、同じ年齢で同じように発達することはなく、子どもだけで発達していくこともない。大人の指示どおりに発達するのでもない。個人差が大きい。そこへ寄り添えるような環境を整えるが大人の責任ではないか。

 個人差はあることを前提にして発達段階を前提に学童保育の内容も考えていくべき。これまではこの考え方が明確にされていなかったが、厚生労働省による運営指針には書き込まれている。この内容に参考に保護者、指導員、自治体関係者でよりよい学童保育にして欲しいと講演を締めくくっていた。


■学童の基準

 厚生労働省が学童保育の基準を明確にしたのは、平成26年4月30日に「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」で、省令基準と呼ばれるものだ。主に施設基準を示したものでひとつの学童保育はおおむね40人以下と定められた(支援の単位)。
 平成27年4月には、省令基準を元に子どもに保障すべき遊びや生活環境、運営内容の水準を明確にした「放課後児童クラブガイドライン」を改定している。このガイドラインを元に自治体は条例や要綱で学童保育の施設基準や運営内容を定めている。

 話はそれるが、「学童保育」のことを武蔵野市では、「学童クラブ」(施設名は子どもクラブ)と呼び、法律上は、「放課後児童健全育成事業」と呼ばれ、厚生労働省の省令では「放課後児童クラブ」としている。呼び方に微妙な意味合いはあるが、今回は便宜上、学童保育で統一している。


■厚労省による発達段階

 さて、その運営指針には、発達の段階を示し、障がい児への対応、保護者との連携、運営についても含めて細かく示している。詳細は、ガイドラインを参考にして欲しいが、発達段階だけ抜き出してみた。田丸教授もこの段階を資料で示し、考えるべきだと話されていたからだ。

(1)おおむね6歳〜8歳

 子どもは学校生活の中で、読み書きや計算の基本的技能を習得し、日常生活に必要な概念を学習し、係や当番等の社会的役割を担う中で、自らの成長を自覚していく。
 一方で、同時にまだ解決できない課題にも直面し、他者と自己とを比較し、葛藤も経験する。
 遊び自体の楽しさの一致によって群れ集う集団構成が変化し、そこから仲間関係や友達関係に発展することがある。ただし、遊びへの参加がその時の気分に大きく影響されるなど、幼児的な発達の特徴も残している。ものや人に対する興味が広がり、遊びの種類も多様になっていき、好奇心や興味が先に立って行動することが多い。
 大人に見守られることで、努力し、課題を達成し、自信を深めていくことができる。その後の時期と比べると、大人の評価に依存した時期である。


(2)おおむね9歳〜10 歳

 論理的な思考や抽象的な言語を用いた思考が始まる。道徳的な判断も、結果だけに注目するのではなく、動機を考慮し始める。また、お金の役割等の社会の仕組みについても理解し始める。遊びに必要な身体的技能がより高まる。
 同年代の集団や仲間を好み、大人に頼らずに活動しようとする。他者の視線や評価に一層敏感になる。
 言語や思考、人格等の子どもの発達諸領域における質的変化として表れる「9、10歳の節」と呼ばれる大きな変化を伴っており、特有の内面的な葛藤がもたらされる。この時期に自己の多様な可能性を確信することは、発達上重要なことである。


(3)おおむね 11 歳〜12 歳

 学校内外の生活を通じて、様々な知識が広がっていく。また、自らの得意不得意を知るようになる。
 日常生活に必要な様々な概念を理解し、ある程度、計画性のある生活を営めるようになる。
 大人から一層自立的になり、少人数の仲間で「秘密の世界」を共有する。友情が芽生え、個人的な関係を大切にするようになる。
 身体面において第2次性徴が見られ、思春期・青年期の発達的特徴が芽生える。しかし、性的発達には個人差が大きく、身体的発育に心理的発達が伴わない場合もある。

 
■武蔵野市の場合は

 武蔵野市の場合は、条例や要綱ではなく、ガイドライン(指針)で施設基準や運営内容を定めている。内容的には評価できるが、要綱やガイドラインは行政だけで内容を変更できてしまうものだ。適切な表現ではないかもしれないが、行政の解釈で勝手に変更ができてしまう。良い内容になればまだしも、悪化させてしまうこともできる。保護者や指導員、議会の意見を無視できる制度でもある。

 現状では、運営内容をより良くしていく流れであり悪化させていないが、過去を考えると少なくとも議会が最終的に判断する条例化が必要だと私は考えている。これは、今後の課題としたい。

 条例化は今後としても、発達段階に応じた運営かと問われると武蔵野市の学童クラブ育成指針は心もとない。内容は評価できるが、厚生労働省のガイドラインよりも内容が少ないからだ。なによりも主語が不明確で、誰が実行するのかが不明確だ。

 このような記載は、市が直営で運営することが前提であり市の内部文書的な意味合いが強いからだろう。現状のままで運営を続けるのならまだしも、来年4月からは市の外郭団体、武蔵野市子ども協会に運営委託されることが決まっている。

 となれば、市の役割、運営者(事業者=子ども協会)の役割、保護者、指導員の役割を明確にすることが必要だ。さらに、市内には民間の学童保育所が3箇所ある。ここにも影響することも考えておく必要がある。

 このことを議会で指摘したところ、市は育成指針を改定するとしている。現在は改訂作業中だ。どのように改定するかは現状では分らないが、厚生労働省が示した内容以上に質を高めること。発達の段階も考慮して改定することが必要だと基調講演を聞き再確認した。

 4月からの委託を考えると今年の12月議会には改定内容が示されるに違いない。ガイドラインなので議会が決めるのではないが、内容によっては提案が必要だろう。注目が必要だ。
 

【参考】
厚生労働省 放課後児童クラブ運営指針

武蔵野市 学童クラブ育成指針
 

※写真は全体会の様子。参加者は、速報値で4691人だった(開催場所は愛知県体育館)
※全国学童保育研究集会の主催は、全国学童保育連絡協議会。後援は、愛知県、愛知県の全自治体と厚生労働省