長期的な視野にたち作成されるのが自治体の総合計画だ(武蔵野市では長期計画)。この計画づくりをワークショップ形式で、しかも、中学生も参加している山形県酒田市の取り組みを視察してきた。

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■ワークショップを目的化しない
 
 酒田市は、平成30年度から10年の計画となる総合計画を「みんなでつくる総合計画」として、市民参加により策定を行っている。
 市民参加は多くの自治体で取り組みが進められているが、酒田市の特徴のひとつは、各団体の代表者や有識者で構成される「総合計画審議会」に加えて市民100人による「総合計画未来会議」を設置し、無作為抽出による市民委員に加え、市内の中学生、高校生、大学生をメンバーのしていること。市内にある東北公益文化大学と連携をして計画の策定を薦めていることだ。
 しかも、「総合計画未来会議」は小グループに分かれて対話を進めながら話し合うワークショップ方式で進められている。

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 同様なワークショップ方式により市民が参加して対話を行う手法は、武蔵野市などでも取り組みが始まっているが、対話をしただけでその結果がどう計画に活かされているのか分らない。参加したことの成果が分らない。ワークショップが目的化しているなどの課題があると私は考えているのだが、酒田市の場合は、ワークショップにより学びあうこと、まちづくりを「自分ごと」として考えてみよう、それも楽しみながら参加しようとコンセプトを持ち行われているのがもうひとつの特徴だ。


P2170066■発案者

 このコンセプトは、加留部貴行さん(NPO法人日本ファシリテーション協会フェロー、九州大学大学院統合新領域学府客員准教授)が総合計画市民参画アドバイザーとして参加したことで行われたものだ。

 上記の課題があることを加留部さんは認識しており、ワークショップの中に財政を考えること(財政シュミレーションゲーム、酒田2030)や理想とする酒田市にするためにあなたは何をしますか? との問いかけをワークショップのテーマに取り入れて、「自分ごと」にするように仕掛けをしていた。このことは他の自治体やワークショップを行ううえでも参考になる手法だろう。

 ちなみに加留部さんとは、市民と議会の対話づくりをテーマにした2013年の市民と議員の条例づくり交流会議に講師としてきていただいたなど川名とは旧知の関係があり、あるファシリテーションの講座で会ったさい、酒田市の取り組みを見て欲しいといわれて、今回の視察となった経緯がある。


■中学生が参加する効果

 中学生が総合計画づくりに参加することは他にも行われることはある。多くの場合、中学生だけを集めて意見を聞く、あるいはアンケートを行う程度で酒田市のように大人と一緒になり参加することはないのではないだろうか。そこのこともあり、実際にどのような目的があるのかも伺ってきた。
 
 そのひとつは、中学生が参加することで総合計画が進められ計画の成果が形になるであろう10年後(酒田市の場合は平成40年)に、まちづくりを考える地域の若手となって欲しいとの目的だ。

 酒田市では中学生、高校生、大学生が参加しており、その年齢を12歳から22歳とすれば、10年後には22歳から32歳(実際には策定期間が2年あるのでプラス2年)の地域の若者となっている。参加した全員とはならないだろうが、この中から何人かがまちづくりに関心を持ち、地域や市政に参加してもらえるようになれば、若者不足、参加者不足が言われている地域コミュニティの大きな財産になるはずだ。

 若者がいないと嘆くのは多くの自治体で聞かれる常套句。嘆くだけでなく、将来を見越して、関心を持ってもらえる仕掛けともいえるのが酒田市の手法だ。

 また、中学生が参加していることで、難しい言葉を使わない。大人同士が、論争やいがみ合うこともないとの話も伺った。逆に将来を担う人材を育てたいとの想いが強くなり、今の課題をシンプルに話し、困っているだけとの話から、一緒に課題解決を考えるよう対話(グループワーク)になるのだそうだ。中学生には社会の勉強になり、大人には今の問題を再認識し、課題解決を考える仕掛けにもなっていることになる。

 未来を考えることへとつながる手法ともいえる。

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■地域づくりへ

 総合計画未来会議のメンバーの総数は約140人。このうち中学生は11人、高校生が24人、大学生が12名メンバーとなっており、自ら希望して参加しているのだそうだ。グループワークの各テーブルは、年齢層がかぶらないようにしており、必ず中学生か高校生が参加できるようにしていた。

 参加している中学生に話を聞くと、普段では会えないような地域の大人と話ができたことや地域で知らなかったことを多く聞くことができて新鮮で楽しかったと話していた。これは大人の参加者も同じだ。まちづくりの担い手になるかは分らないが、少なくとも、地域での知り合いの輪が広がり、地域づくりの一歩にもなったのは確かだろう。


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■終わった後の印象

 ワークショップが終わった後で、感想を一文字で表すと? ファシリテーターの加留部さんから問われた参加者が、それぞれの言葉を記していたが、若者と参加したことが大きな「喜」の字となっていたことはとても印象的だった。

 地域づくりは、地域が元気になることだけでなく、住む人が元気であることでなりたつ。その一歩がこのワークショップでもあったと思えてならない。

 ワークショップを目的化せず、地域づくりへつなげていく。酒田市の手法は、武蔵野市だけでなく、多くの自治体で参考になる。酒田市では、総合計画づくりだけではなく、景観のルールづくりなどでもこのような手法を進めていくとされていた。今後も注目したい。

 
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【参考】
新しい酒田市総合計画(平成30年度から)の策定に向けて



※視察は2016年11月19日に伺った。29年度も同様に行われる予定