東京都は、都内の私立高校へ通う生徒の授業料を実質無償化する方針を示した。武蔵野市では、入学前に学用品を購入する支援となる入学準備金制度を始める。教育機会の保障へ支援が拡充することは評価したいが、懸念するのは自治体間格差が広がらないかだ。

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 東京都は、平成29年度から年収760万円未満の世帯を対象に、都内私立高の平均授業料の42万2000円を上限に授業料を助成する方針を示した。予算額は75億円だ(東京新聞/2017年1月17日朝刊より)。

 公立高校の授業料無償化は民主党政権時に実施され、私立については世帯収入に応じて支援金が国から支給されていたが、授業料の無償化とはなっておらず、都の新たな支援を加えることで実質的に無償化となる。

 しかし、授業料は無償化となっても、私立にはさらに入学金(入学料)や施設整備費など高校へ納付する費用も必要になる。


■高校の費用は授業料だけではない

 文部科学省による「平成28年度私立高等学校等授業料等の調査結果」によると、私立高校の入学料の平均年額は、生徒ひとり当たり16万2122円。施設整備費などは16万9048円になる。これは全国平均なので、地価の高い東京都の場合はより多くなる。

 東京都の調査「平成29年度 都内私立高等学校(全日制)の学費の状況」によると平成29年度の都内私立高等学校(全日制)の初年度納付金の平均額は、入学金が25万0026円。施設費が4万5822円、その他で16万7447円。総額で91万2156円という状況だ。さらに一校あたりの検定料(受験料)は、平均で2万2417円だ。

 ちなみに、初年度納付金総額がもっとも高い私立高校は、188万6000円。最も少ない私立高校は59万円。授業料は133万2000円と28万2000円となる。差はかなり大きい。

 授業内容などの違いがあり金額だけで判断はできない。この額を承知して入学をするのだから一概に額を評価できないが、授業料だけが無償化となっても、まだまだ負担は多いのが実情だ。例えば、制服や学用品の購入、部活の費用、昼食代など高校へ通うための費用はまだまだかかる。授業料の実質無償化の方針は歓迎したいが、今後、他の費用にも目を向ける必要がある。


kyouiku■武蔵野市は入学準備金制度をスタート

 武蔵野市は、これまで高校の授業料に相当する額を低所得世帯向けに返済不要の奨学金として支給してきた。しかし、国や都の制度が拡充されたことに伴い廃止し、新たに「高等学校等入学準備金制度」と「高等学校等修学給付金制度」を低所得世帯向けとしてスタートさせる(画像参照)。

「高等学校等入学準備金制度」は、私立高校への入学を決めると入学前に費用を払わなくてはならず、他の支援金などの支給が早くても6月となることから一時的に負担が多い時期への対策となるものだ。
 入学に最も費用がかかるのは、私立高校への納付金に加え制服などを購入する入学前の2月〜3月になるのが実際だが、これまでは4月を過ぎた新年度にならないと支給できなかった。新制度はこの“行政感覚”を取り除くものとなる。議会からも指摘されていたことで、前倒し支給することは評価したい。

「高等学校等修学給付金制度」は、部活など授業料以外の教育費を対象としたものだ。授業料だけでないことを理解している制度といえる。これらの制度以外にも、小学校、中学校への入学前支援も始める。

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■必要なのは高校の義務教育化

 教育機会の保障へとつながるこれらの制度は、もっと多くの自治体で拡充すべき制度だろう。しかし、そこには自治体財政との問題がある。東京都も武蔵野市も比較的財政に余裕があるからできたと言えるからだ。

 本来であれば、日本のどこに住んでいても同様のことが受けられるべきではないだろうか。ある国としての制度にしないと、自治体格差が広がってしまうことになる。教育は人を育てる制度であり、日本の未来を創る制度だ。高校の実施義務教育化を早急に考え、実施することこそが必要だ。


【参考】
武蔵野市定例記者会見資料
 就学支援に関して市独自の新たな支援策を実施します(PDF)