港区の小中一貫教育校、白金の丘学園を市議会文教委員会で視察した。主に狭い敷地でどのように小中一貫の校舎を建設できたのかがテーマだった。武蔵野市で、もし建設するとなると、どのような校舎にするかが課題になると考えられるからだ。

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 白金の丘学園は、2つの小学校と1つの中学校を統合して平成27年4月に開校した。

 校舎は6階建てと3階建てに分かれており、北側にある3階建て校舎部分に体育館とホール、温水プールが設けられ、屋上部分が人口芝の校庭。6階建ての校舎は南側にあり授業用の教室が主に入り、1階が1年生、2階が2年生というように成長に合わせて上の階へ移る配置となっていた。他にも小中双方に提供する給食室、ランチルーム、柔剣道場、学童クラブなども設けられていた。


■敷地で比べてみる
 
 校舎の概要は下記
 
・敷地面積 12,498.30平方メートル
・構造 SRC造一部RC造一部PC造
・延床面積 17,970平方メートル
・工事期間 平成24年7月から平成26年10月(28ヵ月)
・校庭面積 約5,869平方メートル(人工芝部)
・建設費 65億2,215万円


 学校に必要と思える施設をすべてと言っていいほど盛り込んだ校舎と言え、敷地面積に目いっぱいに校舎を建設しているのが特徴だろう。
 
 敷地面積の約12,500平米は、武蔵野市の小中学校と比較すると関前南小の12,410平米とほぼ同じだ。
 
 ちなみに、最も敷地面積が狭い武蔵野市立小学校は、二小の8,970平米、最も広いのは境南小の15,386平米。中学校で比較すると、第六中学校の11,989平米が最も近いが、6校ある市立中学校のなかで最も狭いのが第六中学校で、二番目に狭い第二中は15,138平米、最大の第四中学校は20,910平米となり、他はもっと広い。
 ということは、敷地面積だけで考えれば、同様の小中一貫校舎を武蔵野市内で建設することは可能だろう。
 
 ただし、容積率など法的にどこまでできるかの課題だけでなく、周辺住民がこのような建築物を認めるのかの課題もありそうだ。

 白金の丘学園の場合は、丘の上にあり旧中学校は「丘の上にある学校」として、地域になじみがあったこと。学校へのアクセス道路は北側にあり、この道路には校庭のある三階建ての校舎が面しているので、高さによる圧迫感が少ないこと。6階建ての校舎の南側隣接地は住宅地ではなく高校、北側のへの校舎の日影は校庭になるので他に影響が少ないなど土地の好条件があったことで可能ともなったと思える。

 また、周辺には高層マンションが多く、高層建築物への違和感が少ない地域とも言える。同じような条件が武蔵野市にあるかと考えると、どうなのだろうと思ってしまった。


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■オープンスクール

 教室は、武蔵野市立千川小学校と大野田小学校と同じオープンスクールと呼ばれる廊下側に壁がない教室だった(収納式の壁は用意されていた)。広々とした廊下スペースも活用することで授業に幅ができると校長先生は話されていたが、今後は大丈夫かとの不安を覚えてしまった。

 それは、大野田小学校でも課題となっているように児童数が増えた場合に対応ができるのかの課題だ。オープンスペースが多いことはいいとしても、児童が増えた場合に教室に転用できるスペースがないため対応が難しくなるからだ。

 実際に、この校舎ができたことで入学する希望者が増え、想定していた普通教室では対応ができず、他の用途に考えていた教室を普通教室に転用していた。想定では学年あたり、3教室としていたが、足りなくなっているのが現状だそうだ。児童数がどうなるか、設計時の想定をどのように見込むかの課題もあることになる。

 しかし、これには港区独自の事情があった。


■港区独自の学区制

 港区では、小学校の学区は、居住している学区と隣接している学区を選んで通うことが可能としている。そのため、本来の学区の児童がそのまま入学するのではなく、他の学区へ入学すること、反対に隣接学区から入学してくることもあり児童数が予測しにくい特殊な事情がある。
 中学校の場合は、区内全ての中学校で学区域がないので、こちらはさらに予測にくい状況だった。

 さらに港区だからというべきか判断に迷うが、私立学校へ通う児童生徒も多い。私立中学への進学率を見ると港区の公立中学校への進学率は約6割(東京都平成27年度公立学校統計調査報告書より)。約4割が私立学校へ進学しており、公立学校へどの程度の児童生徒が入学するかも予測しにくい状況だった(武蔵野市は焼く25%が私立中学校へ進学)

 このような状況で児童生徒が増えているのは、名前の魅力もあるのでは、との話も伺った。
 隣接する学区には、白金小学校があり、いわばブランド化した名称であるため入学していた子どもが多かった。それが、同じ白金の名称があり、さらに新しい校舎、しかも小中一貫教育をしている魅力が出たことで増えているのではとの考えだ。実際にどの位の数があるのか分らないが、新校舎になれば児童生徒数は増えますよ、とのアドバイスをいただいた。もしも、武蔵野市で作るとなるとこのことも考える必要がありそうだ。


■そもそものきっかけ

 港区での小中一貫教育校は、白金の丘学園が二校目となる。そもそも、なぜ小中一貫教育校にしたのかを伺うと、元の2つの小学校、中学校はそれぞれ100名ぐらいの児童生徒数が続きこのままでは廃校になる可能性がある。そこで地域に学校を残す必要があると地域住民が考えた結果として、3校を統合して学校を残すことを選択した。
 小中一貫教育のために開校したのではなく、学校を残すための策。決して教育委員会から小中一貫校にすると決めていないと区の担当者は話されていた。港区でさらに広げるのかを伺うと、小中連携は進めているが小中一貫校を増やすかは決まっていない。あくまでも地域事情で判断するとされていた。

 地域住民へ小中一貫校のヒントや情報を提供したかどうかまでは分らないが、教育委員会主導ではないことは参考になる。そのため大きな反対運動はなかったようだ。


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■経費は? 人工芝の理由は?

 建設費は約65億円。かなり高いように思えてしまうが、学校は一校あたり約30億円かかる。3校分を建替えるよりは安くなるとも考えられる数字だった。
 ランニングコストは視察時には分らないとの回答だったが、LED照明など省エネ機器を入れているので電気代は下がっているのではないか。ただし、温水プールの熱源であるガスがあるので、トータルでは分らないとのことだった。

 校庭を人工芝にしているのは、以前は天然芝だったが養生期間があり使用できない期間があることから採用したのだそうだ。天然芝と同じように子どもが遊びまわれ、寝転がることもできる。子どもの怪我も少なくメンテナンスも容易。周囲へ砂埃が飛ぶこともなくおススメだとされていた。都会の特有事情もあるだろうからなんとも言えないが、果たして武蔵野市ではどうだろうか。


■視察を終えて

 魅力的な校舎だったが、設計にかなりの苦慮があったことが伺われた。例えば、構造となる柱や軒が教室の端や廊下などにせり出しており、ところどころ狭くなっていたからだ。
 異学年で交流する目的で作られたランチルームにステージが作られていたが、そこには柱が必要となっていたために、死角が多く、ランチルーム全体から見ることができないなど使い勝手に課題が残されていた。
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 これは敷地面積が狭いことが理由なのだろう。そう考えると異年齢の学年の交流を進めるための階段が設けられていることや地域の人も使いやすいように設計されていることは参考になるものだった。屋上から各フロアへの採光、幅の広い階段に動物の絵が大きく描かれているなども印象深い。
 
 短い時間での視察だったが参考になることは多々あった。武蔵野市で小中一貫教育校を新設するか、それとも改修して行うかなど具体的なことは明らかになっていないが、参考にさせていただきたい。


※白金の丘学園は、「義務教育学校」ではなく、白金の丘小学校と白金の丘中学校とになる。卒業式は別々に行っている

※写真は上から
・校舎の全体図(白金の丘学園のパンフレットから)
・オープンスクール形式の教室
・ランチルーム
・稼動床の温水プール


【参考】
白金の丘学園 ホームページ

TOKYO MXTV 港区で2校目 小中一貫校「白金の丘学園」来年4月開校