平成28年に開園した三鷹赤とんぼ保育園の取組みについて伺った。公立2園を統合し別の場所で市の外郭団体で新設。残った場所には民間保育園を開園し総定員を増やしていた。施設改修の考え方の参考だけでなく、保育園建設への対応へ市職員の経験が活かされていたことが何よりも参考になった。
 
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■公立2園を統合し民営化
 
 三鷹赤とんぼ保育園は、0〜2歳対象の乳児園だった三鷹市立三鷹台保育園(定員42名)の園舎に耐震上の問題があり建て替えが必要となったことから、近隣にあった3〜5歳対象の三鷹市立高山保育園(定員75名)を統合して0〜5歳までを対象として新設された。場所は、URからの借地で定員は131名。公私連携型民設民営園とされ、三鷹市の外郭団体である三鷹市社会福祉事業団が建設し運営をしている。
  
 旧三鷹台保育園は、市内の別社会福祉法人が新たに保育園を運営。旧高山保育園は、近隣の認証保育所施設の建て替えのさいの仮園舎につかい、その後は民間による保育園が想定されている。
 つまり、ひとつの保育園の新設だけでなく、古い園舎の土地を利用して新しい保育園を建てることが可能となり、結果として保育園を増やし保育定数を増やすことへつなげている。保育園施設の建て替えが武蔵野市でも今後課題となるが、このように保育園を新設するだけでなく複合的な課題解決につなげることは参考になる。
 
 また、公設公営の保育園から市の外郭団体に移し民営化としたのは、武蔵野市と同様で公立公営保育園では国からの補助金がでないためにことへの対応であり、外郭団体でも民営化になり補助金を入手できるとの考え方だった。
 
 
■反対への対応策

 保育園建設で周辺住民から反対の声があがり、建設が中止になる例が出てきているが、住民対応などについても伺った。
 今回、伺ったのは、社会福祉法人三鷹市社会福祉事業団大石田理事。その解決方法は「人の耕し方」だと話されていた。保育園の工事説明会などで反対意見はあったそうだが、それでも開園できたのは、この「人の耕し方」があったからこそではなかったか、と思えている。
 
 大石田さんは三鷹市の元職員で都市整備部長などを歴任されている。道路や土地利用でこれまでも問題が起きた時に周辺住民とは関わりがあり、あの時はこのように対応したでしょう? などと言える関係を持っていた。周辺住民と人間関係があり、反対する人の背景が分かり、説明会の場での協議だけでなく調整ができる関係を持っていた。つまり、周辺住民との関係を耕してきた、いわば地域を知っていたことになる。
 
 反対の声が出てきたときの対応は、反対者だけでなく賛成者をつかむこと。対応するには政策判断が必要になるが、このことを任されていたことが大きいとも話されていた。そして、反対には理由があり対策を示すが、それでも反対ならや進めるかしかないと腹をくくっていたと話されていたことも重要なポイントだろう。
 
 地域を知り関係を持てる人、その人が政策判断できる権限を持って協議、交渉する。保育園だけに限った話ではないが、周辺住民から反対意見が出た時には「人の耕し方」で解決につながった好例だろう。
 
 三鷹赤とんぼ保育園は、交通量が多い道路に面しており、しかも、頻繁にバスが通るバス停の目の前だ。保護者の送り迎え時の交通事故の問題、バス停で待つ人との交通動線の問題、園児の声の問題などいろいろあったそうだが、それでも開園に結びついているのだから「人の耕し方」は大きな力だったのだ。

 耕すことは、保育園、行政側の人間にもあてはまる。保育園を作るとなれば、保育園の担当部課が担当することになるが、地域を知るとは限らない。土地や道路問題であれば都市整備、福祉関係の部課のほうが、それまでの経験で関係を持っていることもある。関係を持つ職員とも連携していくことが大きな力になると思えた話だった。
 
 
■内容も分からず予算が決まる

 他にも元職員ということでなかなか聞けない話もあった。
 例えば、建設費だ。三鷹赤とんぼ保育園は、2016年4月にオープンすることを市役所は決めていた。建設費予算は、内容を決めうちに平米単価に想定される面積をかけて算出して決めていたのだそうだ。しかし、部材の調達価格が上がり市の予定額で建設する事業者の応札がなく、不調が続いた、その結果として、コストダウンが求められてしまった。
 
 保育園予定地は、UR(旧牟礼団地)の給水塔の柱になっていた鉄骨などが残っていた。これを抜くと工費があがるので、建設に支障がない範囲で柱をよけて設計する。3階建ても可能だったが、エレベーターが必置になることや構造的に強度が必要となり、ここでも費用がかかるので2階にする。施設としては鉄筋コンクリートが良いが、費用がかかるので軽量鉄骨(プレハブのような構造だが協働的には問題はない)にする。床暖房は、保育園の標準的な設備だが、2階には止めた。遊戯室にも床暖が必要だと議論になったが、遊びまわるのだし、昼寝はコットなので不要と判断するなど涙ぐむような設計変更の努力をしたのだそうだ。それでも応札する市内事業者がなく、市内限定を外すなどでやっと応札事業者が決まったとされていた。
 
 その一方で、狭いながらも職員の休憩室や男女別ロッカー室は設けた。純粋な民間ならコスト面から作らないが保育には必要と判断したからだそうだ。
 このあたりのさじ加減も参考になる。これらだけでなく職員の事務スペースがほとんどない保育園を見かけることがあるが、それで大丈夫なのか疑問に思っていたからだ。法で規定されていないとしても、そこへの配慮ができるかも保育の質には関係していると思う。市は、当初の予算通りにするように求めていたそうだが、そこを跳ね返せるような人材も保育には必要ということだろう。
 


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■保育園だけでなく
 
 三鷹赤とんぼ保育園の用地は、URの土地と元からあった公会堂の土地を活用している。保育園と公開堂の複合化も考えたそうだが、別にしたほうが補助金額は多くなることもあり別にして建設したそうだ。
 
 別棟とは言え、保育園と公会堂の建て替えが同じ時期になったことで、公会堂へ建て替えに住民が関心を寄せていたことも開園の力になったとも思える。保育園だけをつくるだけでなく、近隣地に公園や他の施設をつくることで、住民の理解も広がるのではとも思えた例だった。
 
 保育園建設はケースバイケースで自治体ごとに背景は異なり、今回の例が全てに参考とはならないだろう。しかし、多くのヒントがあった例だった。参考にしたい。
 

※お話は、川名が所属している現代都市政策研究会の定例会で伺った

 
写真は上から
・園舎
・右が隣接する公会堂