品川区の施設一体型小中一貫教育校「豊葉の杜学園」を市議会文教委員会で視察した。小中だけでなく、幼稚園、保育園、それに地域センターとの複合施設で住宅密集地に建設された学校だった。

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■幼保も併設

 豊葉の杜(ほうようのもり)学園は、平成23年に荏原第三中学校と荏原第四中学校が統合し豊葉の杜中学校として開校した後、平成25年に杜松小学校と大間窪小学校が統合し小中一貫校として開校している。
 豊葉の杜の名前の由来は、学区域にある豊町と二葉の町名とは杜松(としょう)小学校の「杜」が由来。28年4月からは、都内唯一の義務教育学校となった。そのため、実際には○○小学校と□□中学校があり通称としての△△学園ではなく、豊葉の杜学園が正式な学校名だ。

 校舎は、北棟と南棟に道路をはさみ別れているが、連絡通路(廊下)で接続し校舎外に出ることなく行き来ができるようになっていた。

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2 校庭は南棟の東側にあり、北棟の北側に地域センターがあり、学校との間には、地域開放も行う温水プールやバスケットコートが三箇所も取れるほどの広さがある体育館が設けられている。地域に開放するさいは、学校側から出入りするのではなく、地域センター側にも出入り口があり、学校側の出入口を閉じた上で行う設計だ。

 興味深いのは、南棟に二葉すこやか園という幼保一体施設も併設していることだ。0から2歳は二葉つぼみ保育園(定員66名)、3歳からは二葉幼稚園(定員140名)となり、幼稚園では預かり保育も行うことで0歳から就学前まで一貫した保育・教育を行っていた。小中一貫教育校にあることで、0歳から中学までの一貫校ともいえるものだった。

 この一体した施設は品川区独自のものだという。この組み合わせについては別の機会に調べてみたい。

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■敷地面積 武蔵野市で置き換えてみての可能性

 敷地面積は、北棟が6,672.97平米、南棟が10,441.32平米。延床面積は北棟が14,390.64平米、南棟6,998.68平米。第一種住居地域にあり、第二種高度地区(一部第三種高度地区)。北棟が地上四階建て(高さ16.42m)、南棟が地上三階建て(高さ16.10m)だ。
 総建設は約56億円。地域センターのある国有地の購入費用が別に9億4000万かかっている。

 敷地面積を合計すると約17,000平米となり小学校で敷地面積の広い武蔵野市立境南小の15,386平米、大野田小の15,053平米より一回り広い程度。第四中の20,910平米、第五中の19,041平米のほうが広いことを考えると、教育的な効果は別として、武蔵野市での可能性はあるとも考えられる面積だった。


■小中一貫教育の成果

 小中一貫教育の内容は、武蔵野市で検討されているのと同じ、4・3・2制。品川区が小中一貫教育を導入している理由は下記だ。

・中学校の学習への接続を意識した小学校段階での指導を実現し、9年間継続した系統的な学習に取り組むことができます。

・小学校から中学校への環境の激変を緩和することにより、ストレスを解消し、幅広い年齢の児童・生徒と学校生活を共にすることで、多様な人間関係を形成できます。

・小中学校間の情報共有により、9年間の継続的な生活指導を実現します。
 (品川区小中一貫教育パンフレットより


 視察の説明にあたっていただいた校長先生によれば、あくまでの豊葉の杜学園での感想としたうえで小中一貫教育の成果には、小中一貫により教師の意識が変わり、このことで学校が変わったことが大きいとされていた。

 以前は小中の接点がなく、小学校でどのような教育を受けていたか分からないことで、中一ギャップとなっていた。そのため、教師でつなごうとなり、施設も変えたという。結果として、小学校の発達段階での授業と中学校の専門段階の授業の違いを教師が分かり、授業を工夫できるようになっているという。

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■そもそもの課題

 保護者には、小中一貫教育を、そんなにうまくいくかと疑っていた人もいたそうだが、今では良さを分かってきてくれている。それは、子どもの様子からだろう。校長先生は、なじめるかの心配はあったが子どもの順応性は早いと話されていた。

 以前の上級学年は、問題行動をする子どもが少なかった。それが今では、小さな子どもにいいところを見せたいとの気持ちになり、やさしさが芽生えてきた。小さい子を気にしながら生活していることで出てきた感情で全体的に穏やかになってきたという。

 問題行動や学力への刺激策になることは、京都や大阪でも伺った話だ。この効果はあるように思えるが、では武蔵野市では、と考えると、そこまでの問題はあるように思えない。議会に報告されているのとは現実は違うのだろうか。

 小学校と中学校で授業時間が異なることでチャイムなどの対応については、4年生までは南棟で45分授業。5年生になると50分授業となり北棟に移るので対応はできている。また、授業やイベントごとに放送を変えられるので問題はないとされていた。


■転入ギャップ

 学習面での心配はないが、転入生への対応、特に7年生への対応が課題。品川区は学校選択制なので近隣の区域から入学するケースがありここにギャップがある。そのため、7年生が和むように学年集会や交流会、リクレーションをしていると話されていた。

 一方で、4年生は南棟のリーダー、最上級生だったが北棟に移ると最下級になりギャップがでてきている。また、6年生は通過点になるため通常の小学校のようにリーダーの自覚を持つことが難しくなるが、1年生との交流をすることでリーダーになるように仕組みを作っているとされていた。

 ギャップの深刻さがどこまでかは分らないが、制度を変えても、どこかにギャップはおきるもの。なくすのではなく、乗りこることを学ぶほうが子どもにはいいのではないか、とも思えてしまう話だ。


■校舎設計の自由度

 教室の配置を見ると小学校にあたる1〜6年生までは一学年が3クラスだが中学生にあたる7から9年生は5クラスとなっていた。視察時には、本来は普通教室で想定していない部屋を教室として使用するなど児童生徒数への対応が課題のひとつでもあることも分った。

P2180387 児童数増では当初設計から対応ができなくなった大野田小と同じオープンスクール(廊下側に壁がない教室。ただし、収納式の壁が豊葉の杜学園にはあった)だったことは、何らかの因果あるかと思えただけでなく、校舎設計の自由度について考えおく必要がありそうだ。これは現場の教職員では対応しきれない課題だ。

 児童生徒数の増の対応については、品川区では自由学区制(住んでいる学区域以外へも通学できる)であり、学校の定員以上は学校のある地域の児童生徒が優先され、離れた地域から入学できない仕組みなので児童生徒数の増減には対応できるとの説明だった。

 確かに、自由学区制であれば調整は可能だ。しかし、武蔵野市は学区制としているため、この制度を続けるかも小中一貫教育校とした場合の検討課題ともなりそうだ。また、施設一体形小中一貫校を作った場合、他の学校との違いをどう考えるのか。公教育でなればなるべく等しくすべきだが、ひとつだけが特別、あるいはより効果的な教育にしていいのかの課題も出てくる。

 自由学区にすると小中一貫か現状の小と中学校を選ぶかは選択肢になるが、そうなると学校は地域とともにあるとの前提で基本的には学区域の小中学校に通学する前提も変えてしまうことになる。 

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■教師の多忙は?

 教師の多忙については、1.5〜2倍はあるように感じる。それは、小中の枠を超えるからだが、考え方次第でひとつの学校として知恵を出し合えば解消できる。最初はビックリするが慣れてくると改善が行われていく。2,3年勤務すれば多忙感は解消されていると話されていた。

 この多忙感は教師よりも管理職がより多い。それは行政からの問合せやアンケートなど文書が多いためで、同じ教育委員会の学務課と指導課から同じような書類が来ること、都からも来ることもあり改善が必要と伺った。

 校舎設計での配慮には、校舎が横に長く教師の移動に時間がかかることから、教室と職員室の途中に教師の待機場所をつくり対応をしていた。
 

■地域への対応

 小中学校の統合ともなる小中一貫校建設にあたり地域や保護者への対応はどうだったのかも伺った。

 話を伺うと当初の地域対策は大変だったそうだ。それは、小学校と中学校の統廃合と思われてしまったからで、反対の意見はあった。
 小中一貫の構想ができてから2,3年をかけて地域に説明を重ね理解を求め、学校名に地域の名前を入れるなどの努力で、最終的には子どもたちの環境のためと理解してもらえた。

 また、住宅密集地での工事であり工事車両の搬入動線などの問題はなかったのかの質問には、工事期間中は振動もあり工事車両の新入経路なども説明会を定期的に開いていたそうだ。


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■工事期間の課題

 工事の説明では興味深い例を伺えた。それは工事期間中の授業だ

 豊葉の杜学園は、道路を挟んだ旧大間窪小学校と旧三中の敷地に建設されているが、その行程は図のように、旧三中の校庭(現在の校庭)があるところに仮校舎を建設した後、小中の既存校舎を解体。新校舎の完成後に仮校舎を解体し校庭を作り直す。その工期は約3年かっている。


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 3年といえば中学校の期間と同じだ。学年によっては3年間をずっと工事している校舎で過ごし校庭も使えない生徒がでてしまうことになる。特に校庭は仮校舎が建ち、使えなくなってしまう。

 このことがつらかったとの話を伺えたが、自由学区域であることから、この間に通う児童生徒は少なくなっていたのだそうだ。自由学区域であるため児童生徒の数の自由度があるので対応できたともいえるが、学校は地域のものと考えていくと、学区域をどう考えればいいのか、とも思えてしまった。


10■品川区は目標達成。武蔵野市の目標は?

 校舎内を案内していただき、中庭を設けることで各教室への採光が可能となり明るい雰囲気になっていること。地域センターの屋上にでることが可能で、新幹線を間近に見ることができ、修学旅行に向かう上級生をここで手を振って見送ることができるなど都心ならではの話も伺えた。

 品川区では施設一体型の小中一貫校は、豊葉の杜で6校目。区内を大きく分けて6つの地域に分け、その6つの地域に一貫校を一校開校することを目標にしてきたため、今後も増やすかは決まっていないという。

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 品川区には、小中一貫校も含めて区立小学校は全部で37校ある。中学校は15校だ。小中一貫教育校に教育的効果が多いとなれば、他の学校も変更していくべきだろうが、全てとなると時間も費用も膨大なものになってしまう。

 今後の品川区の動向に注目したいが、市立小が12校、市立中が6校の武蔵野市で小中一貫教育校を実施するとなれば、何校にするのかの目標をどうのように設けるかも考えなくてはならないだろう。公教育として、本当に効果があるのなら全市でできない数ではないからだ。

 とはいえ、そこまで必要なほど、今の武蔵野市の教育の問題があるのか? というそもそもの疑問はまだクリアできていない。武蔵野市の小中一貫教育については、29年度予算案に外部有識者による検討会設置の予算が盛り込まれている。その内容と今後をどう考えるか。予算審議でもポイントともなりそうだ。

 視察はとても参考になる情報を得られた。品川区の対応に感謝したい。視察を今後の審議や調査に活かしたい。


【参考】 
品川区 小中一貫教育
       豊葉の杜学園