「岸壁の母」の歌で知られる京都府舞鶴市の舞鶴引揚記念館を視察した。市の外郭団体への指定管理から直営に戻したことで来館者も増えたという。

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 舞鶴引揚記念館は、主に太平洋戦争によるシベリア抑留と引き揚げの歴史を継承し平和の尊さを伝える施設として1988年に開館した。「引揚体験を史実として伝えてほしい」という思いから7400万の寄付が全国から集まり、資料も提供され開館に至った経緯もある。
 
 舞鶴は、旧満洲や朝鮮半島、シベリアからの引揚者・復員兵を迎え入れ、昭和20年(1945)に引揚船が入港していらい昭和33年(1958年)までの13年間にわたり66万人を迎えている。昭和33年まで続いたのは、日本海に面していることかシベリアからの引揚者を迎える唯一の港があったためだ。
「岸壁の母」は、引揚船で帰ってくる息子の帰りを待つ母親をマスコミが注目し、話題となったことで流行歌となった。

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 詳細は公式サイトをご参照いただきたいが、注目したいのは、指定管理者制度で市の外郭団体に運営を任せていたが、年間入館者数が開館以来最低の6万9111人になった平成24年度(2012年)から舞鶴市の直営となった。
 その後、舞鶴引揚記念館に収蔵するシベリア抑留と引き揚げ関係資料『舞鶴への生還 1945−1956 シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録』が、平成27年10月に登録されたこともあり、平成26年度には13万1735人へと来館数が急増し展示などの評価が高まっているという。

 その背景を現場で伺うと、地方都市であるため競争力のある民間会社がないこともあるが、直営にすることで市役所内での情報共有、意思決定が迅速になったことが大きい。コストは指定管理の時と変わらないが、学芸員を配置したことで展示内容なども変わったと話されていた。

 職員数は正規2名、嘱託2名、臨時職員4名の8名体制で運営し、正規職員は、施設管理だけでなく市外への宣伝活動や市役内での調整、企画などの業務が中心とされていた。 
 
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■直営に戻した理由 
 
 直営に戻したのは、平成24年3月に「舞鶴引揚記念館あり方検討委員会」(委員長・杏林大名誉教授田久保忠衛氏)が指定管理施設から市の直営施設に変更すべきという内容の答申が出され、前年に市長に就任し多々見市長も同じ思いから同意したことが大きな理由だ。
 この時に来館者が低迷しているのは展示の質に問題があると考え、市の直営に戻し学芸員を配置する方針変更している。
 さらに、直営に戻した後に市職員から世界記憶遺産に挑戦したいとの発案が出され、市も認めたことで舞鶴引揚記念館職員の意識も高まったと考えられた。
 
 また舞鶴市は、平成25年8月に「指定管理者制度に関する基本方針」を策定している。当初は、多くの施設で指定管理者制度を導入していたが、更新時期となったことから外部委員会により制度をゼロベースで見直し、策定したものだ。策定は、市職員を除く外部委員による専門性を活かした客観的な立場で行われたが、「指定管理者制度による管理が望ましいと判断できる施設」と「直営による管理が望ましいと判断できる施設」に分け、指定管理者制度を施設ごとに導入すべきかを判断したのが特徴だ。

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 基本方針では、指定管理者制度の導入により、『指定管理者の効率的な運営により経費の節減が図られ、開館時間の延長やリピーター確保の取組など、利用者ニーズに応じた取組により施設利用者が増加するなど、市民サービスの向上について一定の成果は表れているところであるが、一方では、同制度の導入効果が低く、成果が評価しにくい施設への対応など、様々な課題等も見えてきている』としているのが注目点だ。

 舞鶴市は施設により、指定管理者制度が効果的なのかを見直した。何よりも学芸員に注目したことがポイントだ。学芸員を批判する国会議員がいるが、専門職の能力を発揮させられるのかのマネジメント能力が自治体に問われている例とも言える。
 
 一方で課題と考えられるのは、舞鶴引揚記念館を直営としたことで他の博物館も直営にしていることだ。利用者1人当たりのコストは博物館の平均309円。来館者の多い舞鶴引揚記念館は252円となるが、郷土資料館が957円と幅が広い。今後、他の博物館でも来館者が増えればいいが、同種の施設を同じ管理方式にするかどうか、再考が必要かもしれない。

 舞鶴引揚記念館は、武蔵野市だけでなく他の自治体でも参考にしたい事例だった。



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(写真は上から)
引揚記念館の外観
「岸壁の母」の解説
語り部による解説も行われている
引揚当時のパネル写真
引揚船がついていた桟橋