昨年12月、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(「IR推進法」)が国会で賛成多数により可決、成立した。今後、カジノが実際に国内に登場するかは別として、気になるのはギャンブル依存症だ。そこで、ギャンブル依存症となった人たちへ支援をしているNPOからその実態を伺った。

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■依存症は病気ではない

 今回、話を伺ったのは、自身も10年以上パチンコ依存症となり会社も辞めてしまった後、自助グループを設立したというNPOワンデーポートの理事であり施設長の中村務さんだ。

 中村さんは、アルコール依存症があることを知り、同じようにパチンコ依存症があるのではと考え、同じような自助グループに行くがギャンブルにはないことが分る。そのため、当事者が中心となり、横浜市の瀬谷区でアパートを借り依存症からの脱却と自立支援を目的に自助グループを2000年に設立した。

 設立当初は、依存症という病気と考え、病気であるとのインパクトから社会に注目されるようになった。しかし、実際に支援を行うとうまくいかなくなり、支援方法が違うと考え出すことになる。
 それは、ギャンブルに依存するという対処療法では問題の解決にはならない。問題を解決する、つまり、依存しなくてはならなくなった原因に対応しないと解決にならないとの考えだ。例えば、クシャミが続く場合、クシャミ症とは言わず、風なのか、インフルエンザなのか、アレルギーなのかなど原因を考えて対処するのと同じだという。


■ひとそれぞれの原因

 実際にギャンブルに依存している人は、仕事を転々としていて人間関係の課題があることや結婚や異動がきっかけでパチンコにはまるようになった家庭環境の課題。中学生の頃からイジメにあっていた、あるいは総合失調症で福祉施設に通っていたなどさまざまな背景があることが分ったのだそうだ。

 依存している人には、もともと生活ができない、お金の管理ができない人。先を見通せない、見栄を張る、人に相談できない、欲張りすぎるなど精神や知的な障がいを持っている人は少なくない。病気を認めないと病気にならないが、病気ではなく人生をどうするかで考えるべき。

 また、マラソンや釣りなど他の余暇を楽しむことで依存から抜け出すこともできる。個々のケースに応じて福祉サービスや医療機関、余暇活動を楽しめるようにする自助グループへとつなぐことで、依存問題が解決していくことになる、とその実例から話されていた。

 これらのことか、依存症とひとくくりにしないこと。背景にある個別的課題を見ることが必要で個別課題を取り除くことが支援になり、その人がその人らしく生きることを目標にした事業へと軌道修正したと話されていた。

 そして、ギャンブル依存症ではなく、ギャンブル依存問題というべき。飲みすぎてアルコール依存症となるのとは違うとも話されていた。


資料


■レッテル貼りでは解決にならない

 実際にカジノができるかどうかは分らないが、できた場合にギャンブル依存症をどうするか。その前に、既存にあるパチンコ依存症をどうするのか? さらに、行政はどうするのか? の課題も出てきそうだが、対応へ税の支出には異論は多いだろう。相談機関への橋渡し、情報提供までかと現状では考えられない。

 いずれにせよ、「病気」というレッテルを貼ることだけで問題の解決につながらないことが中村さんの話から分ってきた。生活保護でも障がいを持っていることで仕事に就けないケースもあるという。問題の原因、本質をより考えることの重要性を再確認した話でもあった。私はギャンブルと名が付くことは、ほとんどしたことはないが今回の話を参考にしていきたい。


【参考】
NPOワンデーポート

   ◆

 国会審議では成立のさい、16項目の付帯決議が付き、その中に下記の項目がある。

ギャンブル等依存症患者への対策を抜本的に強化すること。我が国におけるギャンブル等依存症の実態把握のための体制を整備し、『その原因を把握分析』すると共に、ギャンブル等依存症患者の相談体制や臨床医療体制を強化すること。加えて、ギャンブル等依存症に関する教育上の取り組みを整備すること。また、カジノに留まらず他のギャンブル、『遊技』等に起因する依存症を含め『ギャンブル等依存症対策に関する国の取り組みを根本的に強化するため、ギャンブル等依存症に総合的に対処するための仕組み、体制を設けるとともに、』関係省庁が十分連携して包括的な取組みを構築し、強化すること。『また、このために十分な予算を確保すること。


 ※当日は、「ギャンブル依存症対策地方議員連盟」の一員として話を伺った。
 ※画像は中村さんの資料より