武蔵野市の国民健康保険料(税)が今のままでは平均で約3割上がることが分かった。今後の市対応で保険料は変わるが、議会ではこの額が問題視されている。


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■やっとわかった保険料の額

 国民健康保険は、平成30年4月から区市町村単位から都道府県単位に広域化され、保険料がこれまでと変わることになっている。

 広域化は、平成27年に「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」が成立したためだ。いわば国が決めたことによる。

 法改正の概要を見ると、『国民健康保険の安定化』が目的で、国や都が財政支援を拡充することなどにより財政基盤を強化するとしている(国は27年度から約1700億円、29年度以降は毎年約3400億円)。

 しかし、法改正当時から、実際の保険料がいくらになるかは分からないままだった。ぞれが、12月15日の市議会厚生委員会に資料が提出され、現状での保険料の想定がやっと示されたのだ。

 資料によると、144,2%の増。約4割増になってしまう。

 この額に対して東京都は緩和策を行う予定で、その緩和後の保険料も示されていたが、それでも、1、36倍。約3割増の保険料になってしまう。

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(▲厚生委員会 行政報告資料より)


 国民健康保険は、所得などによって保険料はかわるので、すべての人の保険料が一律に変わらないのだが、なぜ、上がるのか?


■広域化は上げることが目的?

 市の説明によると、広域化となる新たな制度では医療費水準や所得水準が高い区市町村が納付金を多く負担するため、一部の区市町村においては、被保険者の保険税(料)額が上昇するためという。一部の区市町村が武蔵野市ということになる。言い換えれば、安くなるところもあることになる。

 しかし、共同通信の調査によると、保険料が上がると予想している区市町村は34,8%。下がるは3.5%。変わらないは13.5%で分からないが48.2%だった(毎日新聞2017年9月10日東京朝刊)。下がると予想している自治体よりも増えると予想している自治体が圧倒的に多い。

 この状況を考えると、安定化とは保険料を上げることが目的だったのか? となってしまう。


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(▲厚労省 法改正参考資料より)


■国保はなぜ赤字

 そもそもなぜ国民健康保険の安定化が考えられたかといえば、毎年、大きな赤字が続いているからだ。

 名前のとおり保険なので、医療費などの支出に合わせて、国や都からの支出金はあるにしても加入者が保険料で賄えば赤字はなくなる。
 ところが国民健康保険の加入者は、高齢者が多いことや会社を辞めて収入がなくなった人が加入することが多く、収入が少ないことから高額な保険料が無理となり、結果的に毎年赤字。その赤字分を市が繰り入れて続けてきている。

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(▲年齢別国保加入率「武蔵野市国保」より平成29年3月末)



 武蔵野市の場合は、年間で約9憶5000万円を繰り入れている(28年度決算見込み)。被保険者一人当たり額は、2万8998円だ。
 この額は、多摩26市で比較すると8番目に低い額で、もっと繰り入れることで保険料を下げるべきとの主張が議会にはあるほどだ(下図参照)。

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■赤字繰入れの是非

 しかし、一般会計から繰り入れる赤字補てんは、市民全体の税金か繰り入れることになる。社会保険に加入している会社員などにとっては、自身の社会保険料に加えて加入していない国民健康保険にも払うことになり、保険料の二重取りになるとの批判が根強くあるのも事実だ。

先に書いたように、会社員を退職した後や高齢になった時に入れる保険、いわばセーフティネットとなる保険であるため、一定の繰り入れは必要だと私は考えているが、その額はいくらが適正なのか正解はないともいえる。

図のように多摩26市を比較しても、どの程度を繰り入れているかバラバラだからだ。被保険者ひとり当たりの繰入額で比較すれば、最も少ない小金井市で1万11657円から最も多い国分寺市の6万1302円まであり約6倍の開きがあるほどだ。

 もともと保険として成立しにくいのが国民健康保険といえる。広域化で安定かとなるのかもしれないが、保険料で考えれば、値上げでの安定だったとしか思えないが現状だ。

 さらに広域化によって一般会計からの繰入れはなくすることが求められている。もし、そうなると武蔵野市の場合では、ひとりあたり平均で2万8998円が年額で増えることになる。安定化は良いが、それでどれだけの人が保険料を支払えるのかとの問題が大きくなってしまうだろう。

 法の趣旨にあるように、国が責任をもって本当の安定化をするのなら、国から出す支出金をより拡充することが必要になるが、その気配はない。


■議会内では否決の意見も

 議会内では、こんな値上げは認められないとの空気が強い。広域化を進めてきた国の政権与党に所属する市議にも賛成できないとの意見があり、なかには保険料値上げには条例改正が必要になるから、条例を否決すればいいとの意見があるほどだ。

 しかし、否決したからと言って保険料を払わないで済むようなものではない。いつかどこかで払うことが必要となるからだ。
 3割増の保険料にするのか。一般会計(全市民の税金)からの繰り入れを増やして保険料を安くするか、この2つの選択肢が問われることになる。

 一般会計からの繰入れ解消を将来的に求められることは理解するが現実的ではないだろう。このままの制度の考え方では広域化でも根本的な解決はできず、いずれ破綻となる可能性は高いのではないだろうか。


■賢明な判断を

 となれば、来年度の保険料は急激な増額は避ける。国民健康保険の将来も不透明なのだから、一年ごとに、国の動向を見ながら決めていくしかないのだろう。一般会計からの繰入れが増えるかもしれないが、支出(療養費)の効率化は行うとしても、そこはセーフティネットをさらに守るためと社会保険加入者には理解してもらう以外にない。

 これらを考えれば、国もこの制度が行き詰まることは遅かれ早かれ分かるに違いない。本来は、公的医療保険一元化をすべきとは思うが、そこまでは議論が進んでいない以上、まずは市民生活を優先させることが必要だ。
 国民健康保険料を改正する条例は来年の3月議会で審議される。広域化とはなっても、市が問題を抱えてしまい制度の板挟みなっているとはいえ、今後の市の出方が注目だ。

 国民健康保険は、広域化とはなるが、実際の保険料は区市町村で決める。つまり、広域化となっても市が保険料の最後の収支を考えなくてはならないのが実態だ。制度の板挟みとなり、被害者的な立場に市はなるが、賢明な判断を求めたい。


【参考】
厚生労働省 持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律について
2017年12月15日厚生_国民健康保険財政運営主体の都道府県化について.pdf