武蔵野市は、学童クラブの指導員(放課後支援員)の正規職員化を進めている。多くの他自治体とは異なる手法だが、最も注目されるのは、正規職員化での事業費の増だろう。市からの詳細なデータは公表されていないが、予算書から推計してみた。


d69295_s 武蔵野市は学童クラブ事業を市の外郭団体「武蔵野市子ども協会」に事業を一括して委託する一方で、子ども協会で指導員の正規雇用をはじめている。
 この手法は民間委託でもあるが、単一クラブごとに民間事業者に委託することや、指導員の雇用形態は委託先の事業者にお任せとなることが多い他自治体とは異なる手法だ。
 
 非正規から正規雇用で身分を安定させ適正な給料となることで人材を確保でき、結果的に事業の質向上と結びつくのだが、一方でその分の事業費増が注目されている。

 いったい、いくら増えたのだろうか?



 武蔵野市の学童クラブについて報告した「東京の学童保育を充実させる会」でもこのことへの関心は高かった。事業費は最後に記すが、まずは、概要と前提を確認したい。


■事業全体を委託
 
 単一クラブでの委託をしないのは、先に書いたように『少人数職場の閉そく性の解消のための組織内における多様な異動の活用』との考えがあり、人事異動が行えることで職場の活性化を行えるためだ。
 さらに、学童クラブと同時に委託した12の市立小学校全てに開設している全児童対策事業「あそべえ」(地域子ども館あそべえ)との連携を行うこと。将来的には、子ども協会で運営している保育園と連携も想定されているためだ(第2期武蔵野市小学生の放課後施策推進協議会の報告書より)。

 つまり、単一クラブだけではなく、それぞれの事業目的は違うと認識したうえで、保育園、学童クラブ、全児童対策事業のあそべえも含めて総合的に運営を行う子ども協会の職員として正規雇用となっており、異なる事業との連携は、職員の身分(正規、非正規など)が異なると連携が取りにくいとの背景も考えられている雇用だ。

 この点が他自治体とは大きく異なる点だ。


■正規の配置基準

 子ども協会の場合、学童クラブへの正規職員の配置基準は、一支援単位(40名)に対して1名。他に嘱託を1名配置(40名に対して2名配置)を基本として、障がい児対応などで嘱託職員を配置するとしている。他にフリーの指導委員が正規で6名としている。

 他に市立小学校12校に全てあるあそべえの館長の1名も正規だ。

 武蔵野市の学童クラブは、市立小学校12校の校内、隣接地に12クラブが開設されており、支援の単位では23となっている。つまり、支援単位23+フリー6の合計、32名が正規職員になる。

 武蔵野市の学童クラブ事業への入所児童数は、981人。1単位あたりの平均児童数=42.7人。障がい児は42人だ(三多摩学童保育連絡協議会2016年度調べ)。

 
■委託での指導員の入れ替わり

 多摩地域の一部の自治体では、市の正規職員(公務員)として指導員を雇用している例が若干あるが(少数の正規と嘱託とで運営)、嘱託での雇用が一般的だろう。
 
 武蔵野市も同様で指導員は嘱託職員として市で雇用してきた。しかし、29年度から子ども協会に委託することで雇用主が市から子ども協会へと変わることになる。

 このことは、それまでの指導員が変わってしまうことにもつながる。子どもにとっては、指導員が変わることで保育内容が大きく変わってしまうことでの動揺が広がることが懸念されるので、できれば、大きく変わって欲しくないと思うのは保護者も含めて多くの思いだと思う。

 平成29年度から子ども協会に委託したことでの指導員の状況は、臨時職員(アルバイト)も含めると下記のように約7割が入れ替わっている。
 市からのデータ公表はないが、議会の質問に対しての答弁からまとめたものだ。

 市嘱託指導員⇒子ども協会の指導員
 54人⇒37人
 
 そのうち、正規雇用 16人
 (学童クラブではなく、あそべえ館長として正規雇用は他に2名)。

 ※館長を含めても54人中18人、約3割が正規。
 ※子ども協会で採用した職員(あそべえ職員含む)のうち、正規職員と嘱託職員を合わせ6割程度が入れかわる。アルバイトスタッフも含めると7割程度。

  約7割が良いのか悪いのかの評価はできないが、指導員の正規化を進めてきた立場として考えると、もっと多くてもいいように思えている。


■正規にならない理由

 なぜ正規にならなかった、あるいは、今回を契機に辞めてしまったのか?

 この理由を聞くと、年齢や家庭の事情、勤務時間の短い嘱託職員のほうが生活スタイルに合うなどが多い。
 さらに、正規となると19時までは勤務時間となり保育園に子どもの迎えができないとの理由も聞いた。子育て支援の職員が自らの子育てができないので本末転倒ともいえる。

 正規が一律に19時までとするのではなく、例えば給料が減ったとしても短時間勤務の正規職員という制度の導入ができるはずだ。この点について議会で指摘しており、検討はするとの市理事者の答弁がある。この点は今後の課題だ。


■給与額

 子ども協会に委託し、指導員を正規雇用でどのくらいの事業費となったのか。

 その前に、子ども協会職員の給料はいくらなのだろうか? 正式には公表されていないがインターネットの求人サイトには以下のように書かれていた。昇給がどのように行われるか分らないが参考にはなるだろう。


(参考)
▼子ども協会の待遇(マイナビ2018より)
基本給 【保育業務】【一般事務】【学童保育業務】
・大学卒 203,116円  ・専門学校・短大卒 183,860円
諸手当(扶養手当、期末勤勉手当、通勤手当、超過勤務手当等(平成29年4月実績)
昇給:年1回(4月)。賞与:年2回(6月、12月)
休日休暇:週休2日。年次有給休暇年間20日(4月採用の場合初年度15日)、病気休暇、産前産後休暇、育児休業、介護休業、災害休暇、慶弔休暇、夏季休暇など。
待遇・福利厚生・社内制度、武蔵野市勤労者互助会、退職金制度など。


 議会答弁では、都表をベースにするとしている。
 これは、市職員と同じように毎年のように階段をあがるように昇給していくものだが、ひとつの階段を一年で上がるのか、数年であがるのかによって最終的な給与は変わるが、詳細については把握していない。平均年齢でいくらになるかは今後、明らかになるだろう。


 ちなみに、市嘱託職員時の報酬月額表は下記となっていた(市例規集より)。公務員のように毎年段階を上がっていく給与表ではなく職質によってことなる体系となっていた。
 
 1級=197,700円 2級=222,600円 3級=259,700円 主任=285,700円


■事業費の増は?

 さて、肝心の事業費はどうなったか?
 
 市としての公式な文書はないが、議会での答弁では以下のように答えている。


 学童とあそべえ両事業の総計=2憶2000万円増(年額)

 一方で、補助金が約1憶4000万円増。
 育成料の値上げ(月額1000円UP)で1000万円増。

 差し引き7000万円の経常経費増としていた。

 ただし、ここには、あそべえの館長、12名の正規化含まれていることを考えると、事業費は増えたものの補助金が増えているので、事業費全体はそう増えていないことになる。


 市の予算書でも確認をしてみた。
 
 すると29年年度予算では、

  都型学童=79,727,000円
  子ども子育て支援交付金(国)=66,909,000円

 が、28年度予算から増えていたことがわかる。

 ただし子ども子育て支援交付金は他の事業もまとめてなので、学童クラブだけの算出ができない。そのため、28年度から29年で増えい額を仮数字として算定したもので正確ではない。

 【歳入】両方の補助金合計で、144,636,000円の歳入増となっている。


 一方で歳出となる28年度の学童事業費(特別職人件費、賃金、費用弁償)は、115,083,000円。29年度の学童委託費=227,004,000円なので、

 【歳出】前年比、111,921,000円の事業費増。

 歳入増から学童クラブ事業費の増額分を引くと、学童クラブを民間委託しても1億1508万3000円の歳入増となる。歳入増は仮であり正確ではないものの市として事業費が増えたとはならないだろう。 


■「武蔵野市方式」のまとめ

 子ども協会は、民間事業者になるため、国や都から民間事業者にのみにある補助金が得られることがこの歳入増の意味合いだ。公設公営では得られない。

 武蔵野市は、市の外郭団体に委託することで歳入を増やし、その分で指導員の正規雇用を進めていることになる。
 また、市の外郭団体なので、市として事業内容にコミットできるとのメリットもある(子ども協会理事長は元市部長。事務局長は市職員の派遣)。そのため、学童クラブの育成指針を委託前から早期から作る準備も行ってきた。


 このことができるのは、武蔵野市の財政が健全であり、いろいろなところから歳入増を考えることや経費削減が緊急課題として求められている状況ではないことが背景にはある。
 民間委託して事業費はそのまま。増えた歳入は他の事業に使うとこともできるが、そこを行わないのが武蔵野市の誇りともいえる。

 ただ、今後はどこまでの正規職を増やすかの課題は残る。現状で正規職員の割合では、職場が回らないとの意見も聞くからだ。また、年齢があがれば給料もあがる現状の仕組みでは今後の人件費への懸念も残されている。

 公設公営を守る、民間委託反対との運動が各地で起きているが、指導員の雇用、質を考えるというこのような「武蔵野市方式」もひとつの選択肢になるに違いない。

 この選択をするか、しないかは、市民や議会でも考えてもらいたい。

【参考】
武蔵野市の学童クラブ 紆余曲折の歴史を振返る

※写真はイメージ