議員の良識が問われる条例案が議会に提出されたが、賛成者なく否決された。条例案は、議員が市長の退職金を三分の一に削減するものだ。


■議員が提出すべきか。議決は無視でいいのかが論点

 議案は市議会の会派、むさしの志民会議から提出された「武蔵野市特別職の職員の給与及び旅費に関する条例の一部を改正する条例」。提案理由は、松下市長の公約であり、公約を破られるかもしれないと考えたとしていた。

 地方自治法112条の2で「議案を提出するに当たつては、議員の定数の12分の1以上の者の賛成がなければならない」と規定されており、武蔵野市議会の定員は26名であるため3名が賛同すれば条例案は提出できる。むさしの志民会議は3名のため、同会派から提案されたもの。

 条例案の論点は、すでに委員会に付託する前の本会議で明らかになっていたが、2月1日の総務委員会でも同じ論点での質問が行われた。それは、市長の退職金削減を議員から提出すべきか、過去の議会決議を尊重しないで良いのかの二点だった。

 委員会では松下市長の答弁もあったが、市長は、任期の4年間の間に提出したい。議会の決議(※1)を尊重するので報酬等審議会を経て提出したいとしていた。

 この決議は、邑上前市長が就任直後に市長退職金を3分の1に削減する条例案を提出したさい、報酬審議会にはかってから提出するように求めたものだ。

 委員会では、市長が公約を守らないというのならまだしも、提出するタイミングは理解に苦しむ。そもそも、市長の政治信念であり市長が提出すべきだ。この決議を尊重すべではないかなど質問が続いた。


■報酬審や決議を疑問視

 提出者(むさしの志民会議の3名)の答弁は、報酬等審議会には退職金が審議内容ではなく、判断する立場でないと議事録には書かれている。報酬等審議会のメンバーは市から補助金を受けている利害関係者があり、任命権者は市長であり完璧ではない。公募市民を入れるなど開かれた審議会、公平な審議が行われるように見直しが必要ではないか、などの答弁があり、報酬等審議会自体に疑問があるとの意見を述べていた。

 また、議会決議を無視するのか。提出するなら、せめて、決議を無効化する決議を上げる必要がある。矛盾を感じないのかとの質問があったが、邑上前市長が市長退職金削減条例案を提出したさい、議会は、議会は審議もなく可決しており(※2)。決議は疑問を感じている。議会運営委員会で総務委員会に付託を決めたのだから議会運営委員会の問題との答弁だった。


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■良識が問われる

 上記の内容は概略をまとめたもので正確には議事録をご参照いただきたい。

 本会議でも同様だったが、議論はかみ合わないままだった。
 条例の提出権は議員が持つ大切な権限だが、成立を目指すなら多くの議員に理解が得られる努力をすべきではないか。過去の議会決議や報酬等審議会、議会運営委員会を批判して自分たちの正当性だけを主張するだけでは何のための提出だったのか、権限の乱用としか思えてならない。審議のなかでも述べられていたが、議会運営委員会は、公序良俗に反することや個人情報にかかわることは審議しないなどの規定はあるが、形式要件が整っていれば委員会に付託するのか、本会議で決めるのか。付託するならどの委員会にするかを決める権限しかない。批判される筋合いではない。

 委員会での採決は、2017年の市長選挙で松下市長を応援した議員も対抗候補も応援した議員も同じ考えで否決した。このことで武蔵野市議会の良識が示されたとしか言いようがない。

 ただし、良識とは数値化ができない。自分で正しいと思い込む人には通用しないのも課題だ。ここをどうしていくかも今後問われそうだ。



※1
2006年9月の平成18年第3回定例会で全会一致可決した決議。内容は、『武蔵野市特別職の職員の給与及び旅費に関する条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例の施行に当たっては、他の特別職との整合を図るため、特別職報酬等審議会に諮問すること』

※2
邑上前市長が公約として掲げ、1期目の就任直後、2005年12月の平成17年第4回定例回に市長退職金削減条例を提出している。しかし、継続して議会は審議を行い、翌年の2006年9月の平成18年第3回定例会で可決、成立した


【参考】
あまりにも非常識。議員が市長の退職金削減条例提出