ギャンブル依存症は、一定数は生まれることを前提に「江原ランド」は運営されていた。では、韓国全体でのギャンブル依存症への対策をどのように行っているか? 韓国賭博問題管理センターを訪れ実態を伺った。

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P1010324 応対してくださったのは、日本大使館で3年務めたこともあるという韓国賭博問題管理センター院長のファン・ヒョンタクさんとギャンブル依存症対策の専門スタッフだ。

 このセンターは 予防とリハビリを主に行っている。予防活動は、新聞などマスコミに広告を出すなど広報が中心で市民への教育資料の作成、配布も行っている。
 予防、治療や相談はこのセンターだけではなく、直営で4か所、自治体では民間業者へ委託している事業として12か所があり、他にも相談サービスを20か所で行い、病院での治療が必要な人向けとして病院とも連携しているとしていた。
 
 同センターの公式サイトによると、2016年の実績は、個人カウンセリングが3万8,515件。予防教育は2,919回で昨年の実績では、約32万人へ予防教育が行われている。予防教育は大人だけでなく小学生も対象としていることには驚かされた。
 何よりも、「依存症対策をしないと社会的な問題になる」と指摘さていた。このことをどれだけ真剣に考え、実行できるかが問われている。


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■カジノだけがギャンブルではない

 説明で印象深かったのは、賭博はカジノだけではない。ギャンブル依存症になる人は他のギャンブルもやっているのが現実で、ギャンブル依存症をなくすには、ギャンブル全体を見てコントロールしなければならない。そのために機関が必要としたことだ。
 
 現在、日本でカジノについて議論が行われ、入場制限を行うかどうかが議論されているが、カジノだけの制限だけで良いのか。依存症になる人は、他のギャンブルを行っており、カジノがダメなら、競輪、競馬、パチンコなどをやるだけではないかとの指摘だ。
 
 日本では、カジノに入場する場合、マイナンバーや顔認証で個人を特定し、入場できる回数を制限すればいいとの意見があるが、ギャンブル依存症への対策を本気で行うと考えれば、個人認証はカジノだけでなく全てのギャンブルの入場をコントロールすべきではないだろうか。韓国では、公営ギャンブルの入り口でチェックができるのでカジノ以外でも対策ができると話されていた。

 また、韓国では、ギャンブルの総量制を導入しており、トータルでのギャンブルの売上げが国のGDPの0.54%を超えさせない制度としている。超えた場合は罰金などペナルティがあるという。そのため営業時間を短くするなど業界としてお金を使いすぎないようにコントロールするという。
 日本の場合はどうか。儲けるだけ儲ける、依存症は気にしないとならないだろうか。


■直営の理由

 説明によるとセンターは、政府機関だとしていた。日本で言う直営だが、その理由を聞くと、ギャンブル依存症への対応について経験がなかったため、まず経験して標準化し、さらに国内に広げていくためだからだという。
 設立は2013年。国内に同様のセンターを広げ、相談できる人、教育できる人を養成することも行っている。オンライン上での検診プログラムもありギャンブル依存症になりやすいかの判断キットがあり、小中学生には2年ごとに行うこともしているという。国をあげて、ギャンブル依存症対策をここまでやっているのだ。

30546504_1758524580870957_2081769055_o 説明を受けた後、参加者からの質問や意見交換の場となった。そのさい、日本でIRを成功させるには何が必要か? との質問に対して、ギャンブル依存症対策は政府から予算をもらっているので安定してできるので、安定的な予算の確保が必要だ。ギャンブル全体を総括的にコントロールできるかが重要だ。客観的に依存症がどうなっているか、誘致する自治体に任せるのでなく国が感知する必要がある。韓国では、2007年にギャンブル法が成立し、政策として必要との認識で行われている。

 もし、日本でカジノを行うとすればギャンブル依存症への対策が必要不可欠であり、対策や相談、治療ができる機関、韓国の賭博問題管理センターと同様の機関を設置することも必要ではないだろうか。同センターにより韓国では、「1336」の短縮ダイヤルで相談センターへすぐにつながるヘルプラインも設けられているが、日本ではどうなるだろうか?
(下記は動画による広報)




■今やネットが主流 わざわざカジノへ行くのか?

 そこで、カジノを含めてギャンブル依存症対策として何が一番の課題なのかを伺ってみた。

P1010338 その答えは、摘発し投獄することもしているが、違法ギャンブルが根強くある。特にオンラインゲームが深刻だ。ITが進化しネットカジノもある。ゲーム感覚でスマホでできてしまい、今や70%がネットだとも言われるほどだとされていた。

 さらに、今やカジノに行ってギャンブルをするのではなくオンラインでギャンブルを行う時代。カジノを誘致は時代遅れだ。わざわざ行くこともなる人は集まらないのではないか。オンラインゲームの普及で依存症にかかる年齢が低くなってきていることも課題。だから教育が必要だ、との意見もあった。

 この現状を知って、日本が後追いし、同じ轍を踏まないかがが問われているのだろう。


■日本の実情
 
 韓国では、カジノという場所ではなく、ネット上でのギャンブルが問題になっているが、日本ではどうか。

 実はネットでの販売が増え、来場してまでギャンブルをする人は減っているのが実情だ。私は昨年まで武蔵野市も加盟している競輪事業組合の議員をしていたことから競輪の経営状況を知る立場となり、この事実に驚いたことを思い出した。ミッドナイト競輪などは競輪場に観客はなく、ネットでの販売のみというレースまであるほどだ。
 
 この状況を裏付けているのが経済産業省産業構造審議会 製造産業分科会 車両競技小委員会に配布された資料、「競輪・オートレースを巡る最近の状況について」だ。(平成29年11月10日)ここには、競輪の販売形式別の売上げが示されている。

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 これを見ると、競輪を実際に開催している競輪場での売上げの構成比は5.1%に過ぎない。これに対してインターネット(電話投票含む)は38.1%と圧倒的に多い(他に開催していない競輪場や場外専用施設での売上げがある)。
 オートレースも同様で、インターネットの構成が41.7%。競艇場が21.4%だ。
 
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 この傾向は競馬も同じだ。日本中央競馬会(JRA)の平成29年度事業報告書を見ると、ネット(電話を含む)での販売金は18,576億円で全販売金27,689億円の約67%を占めるほどとなっている。開催競馬場での販売金は、865億円で3%に過ぎないのだ。

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 日本でのギャンブルはすでにネットが主流となっている中、カジノを開設し、それだけの人を呼び込み、収益を上げるられるのか。開設当初は物珍しさで多くの人が来場するとは思うが、長期的には疑問が出てこないだろうか。

 特にアクセスに恵まれていない場所で開設し、自治体も建設費を負担するようになると将来的な債務負担はかなり厳しくなるように思えてならない。

 さらに、最も問題となるギャンブル依存症へ、予算もかけて対応ができるのか? 現状では疑問が多すぎるように思えてしまう。


■カジノに反対しないが…

 私は、カジノ自体に明確に反対とはまでは判断していない。ラスベガスへ何度か行ったと書いたが、治安がよくホテルは安く快適でエンターテイメントが充実し、観光地へのアクセスがいい(グランドキャニオンやモニュメントバレーの中継地になる)ことが訪れた最大の理由だった。カジノへも行き、いくらか負けてはしまったが多額なお金ではないのTので、まぁ許せる範囲との認識だった。同じように心地より空間として総合型リゾートが誕生するのも反対はしない。

 しかし、ネットが主流となりわざわざ出かけないご時勢で収支が釣り合うのか。何よりもギャンブル依存症へ国を上げて取組むこと。何よりも、カジノだけでなく全てのギャンブルに対応できるギャンブル依存症対策を確実に行うことが大前提だ。韓国を視察して強く思う。

 日本のカジノ、IRが単なる施設建設、短期的な収益だけが目的化していないか、国会の議論も含めて気になる。自治体の事業にも密接につながることもあり、今後も注目が必要だ。


■国際関係とカジノ

IMG_1982 センターの後に、仁川にあるパラダイスシティを視察した。
 北東アジア初の総合リゾート施設(IR)で2017年4月にオープンしたばかり。現在も大型総合リゾートして開発が進められている。
 外国人専用で、敷地面積は約330,000平米(約10万坪)、韓国最大規模となる。運営会社は、PARADISE SEGASAMMY Co.,Ltd。韓国のカジノ大手パラダイスが55%、日本のセガサミーが45%を出資し設立されている。背がサミーからの出向している社員は多く、日本語対応も可能だ。

 特徴となるのは、仁川空港に隣接しており、空港からモノレールで5分(徒歩15分)、ソウル市内からは約40分という立地のよさだ。仁川空港はハブ空港として機能しており、北京・上海・東京から2時間以内。日本の地方空港からの空路もあり、日本人がターゲットともなる。

 写真撮影はできなかったものの見学させてもらうと、最新ということもあるのだろうか江原ランドよりも豪華な印象を受けた。ソウル市内や空港からのアクセスを考えると、韓国人以外にはかなり魅力的だろうと思えてしまう。

 当然ながら、日本でカジノが実現し、同社が進出するとなればここのノウハウが反映されることになる。ある意味、日本の先を見たのかもしれない。

 ただし、懸念材料はある。
 それは、米軍が高高度防衛ミサイル(THAAD)を韓国に配備したことにより韓中関係が悪化し中国人の観光客が減っていたの話を担当者に聞いたからだ。それまでは中国人が一番多かったとされていたので、経営へ大きな課題となっていることが分かる(現状は日本人が一番多いそうだ)。

 国際関係は、会社経営のノウハウだけではなんともならない。日本で、もし、IRを進めるのであれば、安定した国際関係を築ける政府であるかも重要なキーポイントとなりそうだ。


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※写真上から
・韓国賭博問題管理センターの入り口
・ファン・ヒョンタクさん
・相談室の様子。他にいくつも部屋があった
・センターでギャンブル依存症対策地方議員連盟によるヒアリング
・センターによるギャンブル依存症の予防広報映像
・パクエランさん(相談員)からネットが問題との指摘を受ける
・競輪、オートレース、競馬の実情
・パラダイスシティの外観。この中にカジノがある
・パラダイスシティロビーに展示されている草間彌生さんの作品「大いなる巨大な南瓜」。他にも芸術作品が多くあった



【参考】
カジノは時代遅れ!? ギャンブル依存症対策できずにIRを進めて良いのか? 韓国視察から(その1)
韓国賭博問題管理センター 
パラダイスシティ