IMG_2577 武蔵野市は、クリーンセンター(ごみ焼却施設)で続いている火災(※1)の原因についてリチウムイオンバッテリーが原因と推測していることを公表した。


■リチウムイオンバッテリーを押しつぶすと発火

 5月18日の市議会厚生委員会の行政報告で分かった。厚生委員会は、報告の後、5月22日に火災の起きた箇所などクリーンセンターの現地を調査し、火災のあった場所でさらにヒアリングを行った。

 市の説明によると、火災の原因は搬入された不燃ごみにリチウムイオンバッテリーが混入し、破砕するために押しつぶすさい、発火し周辺にあるプラスチィックなどに燃え移ったと推測している。ほかの施設でも同様事例があると説明した。

 バッテリーは、正極(プラス)と負極(マイナス)の間で電流を生むのだが、リチウムイオンバッテリーは、高出力、長寿命などの特性を得るため可燃性の有機溶媒を使い電気を生む仕組みとなっている。特に小型化した場合は、押しつぶすなど外圧で電極を分けているセパレーターが壊れショートしてしまい高熱になったり、ショートの火花で引火したりと事故になる危険性が高まる構造なのが災いとなっている。(図参照・※2より)

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■発火は日常的に起きている

 現地でのヒアリングと委員会の説明から、不燃ごみの処理に発火することは日常的にあり、そのため消化用のスプリンクラーが設置されている昨今起きたケースはスプリンクラーが設けられていない箇所で起きていたこと。

 発火は、不燃ごみを粉砕するさいの火花で起きることが多いことから旧クリーンセンターでは毎時10トンの高速粉砕機で一気に処理していたものを新クリーンセンターでは毎時2トンの低速粉砕機とした火花が起きにいくように対応していたが、それでも起きてしまったことが分かった。


■今後の対応

 市は今後、市報やホームページなどで市民に対してリチウムイオンバッテリーを有害ごみとして分別することや小型家電を回収している販売店で処分するなどを周知することや収集時にごみ袋の中身の確認強化を行うとしている。

 施設面では、発火してもすぐに消化できるようにスプリンクラーを増設することや感知器機器の設置までは人員を配置して対応するとしている。また、2017年(平成27)11月22日に起きた火災は、破砕する箇所ではなく集塵ダクト内で発生したことから、内部の点検や清掃がしやすいように構造変更も行ったとしていた。これらの作業と費用は設計施行会社が担う(そのような契約となっている)。

 対処療法は行うとしても、もっと早く分からなかったのだろうか? 


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■他でも発生していた

 リチウムイオンバッテリーが原因とされる不燃ごみ処理施設での火災は、ネットで検索すると那覇市で2013年当時にすでに発生しており、那覇市が適切な処分を市報で呼びかけていることが分かる。
 東京消防庁でもリチウムイオンバッテリーを内蔵したモバイルバッテリーが押しつぶされ火災になることを動画で警告していることも分かる。


(※動画は東京消防庁より)

 また、新聞などでも報道されたが、2017年に電車内でリチウムイオンバッテリーから発火した例が報道されたことを覚えている人は多いだろう。独立行政法人製品評価技術基盤機構は、リチウムイオンバッテリーを搭載するノートパソコン、モバイルバッテリー、スマホでの事故が多くなっていることを報告しており、近年では事故が多くなっていることも分かる(※2/図も)。

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■解決策は?

 これらの事例を考えれば、リチウムイオンバッテリーが混入され火災になることは、もっと知ることができたはずだ。設計段階など早期に対応していれば、昨今の火災は起きていなかったのでは、と思えてならない。
 
 一方で説明によると、小型のため混入すると見つけにくい課題があるという。

 根本的な対策を考えると、市民がリチウムイオンバッテリーを不燃ごみに入れて出さないことが何よりだ。出す場合は、有害ごみとして出せばクリーンセンターで取りはずすなどの処理ができるからだ。もしくは、市内の家電販売店で行っている小型家電の回収ボックスで処理することだ。ごみを出す市民の意識も変えることが求められる。

 とはいえ、どこにリチウムイオンバッテリーが使われているか分からないケースも多いのではないだろうか。取りはずし方が分からない、あるいは、髭剃りなど取り外しが簡単にはできない家電もある。そう考えると、必ず取り外せることができるように国が小型家電などに規制をかける。もしくは、販売店に回収を義務付けるなども必要になるのかもしれない。国としての対応が必要だ。



※1 4月23日起きた「火災」は、消防署の調査で「燃えがら」や「発火物」が見つからなかったため火災扱いにはしないとなった。そのため、「発煙」と市は公表している。記事では、便宜上、「発煙」も「火災」とした。
なお、クリーンセンターは、工場となるため、小規模な火災でも消防車が駆けつけるため大騒ぎとなる

※2 報告書『急増!ノートパソコン、モバイルバッテリー、スマホの事故 〜リコール製品や誤った使い方に注意しましょう〜』より  




【資料】
2018年05月18日厚生_クリーンセンター不燃・粗大ごみ処理施設内発煙について.pdf

【参考】
東京消防庁
 モバイルバッテリーの火災が増えています! -使わなくなったモバイルバッテリーはリサイクルを-


▼写真
上 不燃ごみが投入されるピット。この裏手でも2017年12月7日に小規模火災が発生している
下 粉砕された不燃ごみが運ばれるコンベア。見学コースからは外部が囲われているため中身は分からない。リチウムイオンバッテリーが圧力で発火する動画を流し、見学者へ周知がおこなわれていた
他の箇所は撮影不可だった