中学校を統合した後の校舎を障がい者施設とコミュニティ施設に転用した帯広市の「市民活動プラザ6中」を視察した。

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■2つの中学を統合

 生徒数が減少したことから帯広市は、通学区域が近接していた市立第六中学校を市立第三中学校に統合。6中は平成2011年(平成23年)3月で廃校となった。
IMG_2215IMG_2221IMG_2225IMG_2219 6中の校舎は最も古い校舎で1975年(昭和50年)、新しい校舎で1993年(平成5年)に建築されていたことからまだ十分に使えることから跡地利活用を2009年(平成21年)から庁内で検討を続け、市民からの意見も反映し、福祉的な活用を中心とする複合施設へと用途転換することが決まった。

 複合施設は、障がい者の事業所、高齢者の活動の場、地域の人が集まり活動するコミュニティ事業、 地域の支えあい事業が主な柱で、日常的に障がい者や高齢者、地域の人がそれぞれに活動だけでなく自然な形で交流できるように考えた新しいかたちの「福祉空間」と考えていることが特徴で2012年(平成24年)4月から利用が始まっている。


■地域ニーズ

 この発想となったのは地域ニーズを調査したところ、高齢者や障がい者の活動の場が少ないこと。また、「学校」という地域のシンボルがなくなったことで新たな地域のシンボルになる施設としても考えたからだ。

 運営面では、障がい者の施設を多くしないことで障がい者施設と受け取られないようにすることで誰でもが日常的に利用し交流につなげようとしていること。施設運営は施設を利用する団体で行うことで行政にはない発想や柔軟性を発揮できるようにしていることが特徴だ。行政のかかわりは、運営団体に運営経費の一部を助成し、各団体には事業費の補助を行う。いわば側面支援の形となっている。

 他には災害時の避難所の機能も持つ。学校であったことから音楽室跡を利用した音楽団体の活動スペースもあった。グランドは売却し民間住宅に、体育館は耐震郷土不足があり取り壊し駐車場となっていた。

 利用者は、2012年(平成24年度)が約4万800人。2014年度〜2016年度が約6万1000人、2017年度は若干下がり約5万9000人となったが、6満員前後で推移している。
 転用のさいの改築費用は約2億円。耐震補強と福祉施設でもあるためエレベーターを設置するなどバリアフリー化。多目的トイレの設置などを行っている。


■評価は?

 説明による「市民活動プラザ6中」についての評価は次のとおり

(事業者)
・事業所と地域の距離が近づいた
・仕事や環境が安定した
・利用者が明るくなった
・いろいろな人とかかわりが持てるようになった
・困っている人を助ける側になれた
・地域の人が優しくなった

(地域住民)
・出かけていける場所、居場所ができた
・困りごとを相談し頼めるところができた
・活動、活躍できる場所ができた
・気軽にボランティア活動に参加できるようになった
・買い物ができる場所、食事ができる場所が増えた

(行政)
・市民の財産を有効活用できた
・地域コミュニティを推進できた
・住民が主体的に福祉活動に参加している
・ノーマライゼーションを自然な形で推進できた
・障がいのある人への理解や関心が高まった
・先進事例として多くの人が帯広を訪れてくれる

 このように良い点が多く、大きな課題は現状ではないようだった。


IMG_2249IMG_2211IMG_2222■なぜ障がい者施設? 住民感情は?

 「市民活動プラザ6中」を最初に知って気になったのは、障がい者施設(事業所)を入れるということは、市内の場所がない、もしくは少ないのかという点だった。このことを聞くと、施設はあるが、どうしても中心部から離れた場所にあるので、孤立してしまう。そのため、市街地にあるこの場所で開設することで周辺住民との交流ができるように考えた。

 また、障がい者だけでなく、市民活動もできるようにすることで、さらに交流ができるようにしているためだと話されていた。

 近隣住民、特に高齢者にとっては歩いていける場所に商店が少なかったことから、障がい者や近隣住民が行う小さな売店やコミュニティ食堂ができたことで、歩いていける範囲の楽しみが増えたことにもつながっていた。


■廃校への反対は?

 また、学校をなくすことに、どのように住民に納得してもらえたのかも気になった。学校には感情的な面から反対となることが想像できるからだ。

 この点は市も考え慎重に対応した。良質な教育環境にすることを前面に出し2年程度をかけて話し合った。隣接した学区域であり統合先となった3中は二つの学区域のほぼ中心にあり、6中とは700mほどしか離れていないことから通学時間に大きな影響がでない地理的な要因も大きかったとされていた。
 説明を聞いていると、小学校ではなく中学校であったことから納得はより得やすかったのだろうとも推測できた。


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■都市部でも参考になる

 施設内を見て回ると、いかにも学校という雰囲気があちらこちらに残されていた。この雰囲気も別の魅力となりそうだ。
 武蔵野市では施設一体型小中一貫教育校の検討が進められている。現実になるかは別問題だが、現在の案のように小学校に中学校を併設するとなると、廃校となる中学校校舎をどうするのかの課題も出てくるだろう。

 子どもが将来的に減っていくことは多くの自治体での共通課題だ。人口減少時代の公共施設は維持管理費がかかるから不要になったら取り壊すとの考えもあるだろうが、福祉やコミュニティ事業が入る複合化とすることで住民交流が進み、新たな福祉拠点、コミュニティがつくれる、それも、地域ニーズを調べることであらたな活用、空間ができた帯広市の事例は、施設活用の参考になるに違いない。


【参考】
帯広市 市民活動プラザ六中


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▼写真(上から)
・正面入り口
・障がい者の事業所。市の有料ゴミ袋を製造していた。大きな収入源でこれも参考になる
・子ども遊び場スペース。冬や雨天時には便利な場所
・コミュニティ食堂の準備をする厨房。近隣の方々が運営している
・喫茶スペースもある
・市民活動のスケジュール。何かしら行われているようだ
・新たに設置したエレベーター。学校の当初設計にスペースは設けられていたそうだ
・避難所にもなるので備蓄品もある
・卒業生の作品は残されていた
・「校舎」の玄関