武蔵野市議会に学童クラブ指導員(正式名は放課後児童支援員)の要件を緩和する条例改正案が提出された。質の低下が懸念されること、必要性があるのかと考えると極めて疑問が残る。

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■市長会が要望

 議案名は「武蔵野市放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例」。省令が出され、国から改正を求められていることから提出された。

 だが、その背景には納得できないことが多い。

 特に問題となるのは、「5年以上放課後児童健全育成事業(学童クラブのこと)に従事した者であって、市長が適当と認めるもの」との条文が追加されていることだ。

 今回の改正は、地方三団体 (全国知事会・全国市長会・全国町村会)の要望をうけて閣議決定が行われたことで省令が出された。

 その理由となるのは、都市部ではなく地方で指導員のなり手不足があり、教員や保育士の資格要件を緩和することで、中学卒業でも指導員になれるようにして、なり手不足の対策と考えたからだ。

 しかし、要件を緩和したからといって、なり手不足が解消されるのか、その具体策が見えていない。


seigannsyomei2018omoteura■なり手不足は処遇の問題

 国会議員で構成されている「公的責任における放課後児童クラブ(学童クラブ)の抜本的拡充を目指す議員連盟総会」が6月6日に衆議院議員会館で開催され、全国学童保育連絡協議会の一員として参加させていただいた。省令どおりにすると指導員の資格や配置基準を緩和し、質の低下となるため、行わないようにとの要望書を手渡すためだ。同協議会では、全国で署名を集め、質を低下しないように国会へ請願を提出している。

 この総会では、同協議会からの要望書の内容が説明された後、国の担当者から省令の背景について先のような説明があり、国会議員からの質問が行われた。

 このなかで印象的だったのは、同議員連盟会長の馳浩元文部科学相(自民党)が、なり手不足は処遇の問題ではないのか。財源措置が必要ではないのか? 厚労省管轄に事業に、なぜ地方分権を理由に内閣府が省令を出させるのか、との発言があったことだ。そもそもでいえば、なり手不足は処遇=給料が安く、雇用条件(非正規)が良くないことが原因ではないかとの指摘だ。

 また、今回の制度を始めて3年しかたっておらず、評価もできていないのに緩和すること、それも厚生労働省からではなく内閣府から行われるという行政手続き的におかしいとの指摘もあった。

 武蔵野市ではどうか。子ども協会での採用を含め、教師や保育士の資格を指導員の採用条件としてきたことで、指導員のなり手不足は武蔵野市の学童クラブで起きているのか? この根本的なことも問われる。なり手がいないのであればまだ分かるが、なり手がいるのであれば、まったく意味のない改正で保育の質を悪化できる改正ともなってしまう。

 総会の後、国会議員でも緩和について調査するとしていた。この状況で、省令が出されたからすぐに改正なのかと疑問を持つ。


■「市長が特に認めるとき」の基準は?

 何よりも学童クラブは国の事業(法定受託事務)ではなく、自治体が自ら必要と考え行う事業(自治事務)だ。

 国と地方は、上下の関係ではなく、対等の関係となった(2000年のいわゆる地方分権一括法)。自分たちのまちのルールを自ら作る自治基本条例制定へ動き出しているさなかに、国に言われたから、仰せの通りに変えますと自治事務を改正する、それも保護者や関係者などと協議もしないで提出している姿勢で良いのか。

 省令は、いわば国による命令だが、相応の理由があれば従う必要はないはずだ。国の基準以上に上乗せして市民福祉の向上を目指すことが自治体の責務と考えれば、条件を緩和してしまうことは逆のことをしていることになる。
少なくとも国会で請願が審議された結果で改正提出を判断すべだ。

 もっとも、武蔵野市として行う学童クラブには適用しないが民間学童でどうしても必要となれば、ある程度は理解できる。しかし、この場合は、どのような基準で「市長が特に認めるのか」が問題になる。

まさか、基準もなく条例を提出するとは思わないが、条例改正案が審議される6月20日の文教委員会でどのように示すのか。注目したい。


■5年とは? 

 条例改正案には、「5年以上放課後児童健全育成事業に従事した者であって」とある。

 例えば、週に一回、一時間だけ従事したひとが5年間続けている場合でも認めるのだろうか? 武蔵野市の場合の指導員は嘱託職員だったので、週35時間勤務が基本だった。週40時間勤務のフルタイムとは時間設定が違う。この5年というのは何時間のことだろうか? この基準についても委員会審議で明確に示すことも必要だろう。示せないのであれば、市長が好きなように指導員にしてしまうことも可能になり、質の問題に直結する。

 先の3月議会で川名の一般質問に対して「学童クラブの質の低下をさせない」と市長は答弁していたが、どのように低下させないのか。審議では具体策が問われる。

 このままでは改正条例にとても賛成できないが、川名は文教委員会の委員ではないので、委員会質疑での答弁に注目したい。




・写真
公的責任における放課後児童クラブの抜本的拡充を目指す議員連盟総会で要望書が手渡された

・画像
学童保育(放課後児健全成事業)の「従うべき基準」を堅持することを求める請願書(署名用紙とQ&A)。
 


【参考】
東京新聞 学童保育「安全守られない」 指導員の基準緩和反対 全国連絡協

全国学童保育連絡協議会
 「従うべき基準」の堅持を求める請願署名に取り組みます(請願署名用紙)