車椅子を使う小学生が普通学級(通常学級)へ通いたいと思ったとき、教育委員会も市も支援策がないことをご存知だろうか。縦割り行政の弊害ともいえるこの問題を早期に解決する必要がある。


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■家庭で対応するしかない

 武蔵野市内でこの話を聞き、障がい児の問題に長年取組んでいる知人の議員に聞くと多くの自治体でも同様で、保護者が登下校の付き添いをせざるを得ないのが実情だという。保護者がシングル、あるいは共稼ぎなどで通学支援ができない家庭はどうすればいいのか。学校まで家庭の責任で教育委員会や市は関係ないと考えているのだろうか。この疑問から、6月の一般質問で市長、教育長に考えを聞いてみた。

 義務教育は、「すべての国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ」と憲法26条2項に書かれているように、義務教育の義務とは、自治体も含めた全ての国民が子どもに対して教育を受けることができるようにすることであって、子どもや家庭に通わせる義務を負わしていないと考えれば、通いたいとの子どもの希望に沿うようにする努力すべきだ。だが、現実にではできていないとなれば、おかしな状況となる。


■法改正で時代が変わった

 これまでは、障がい児の個別対応ができないため、特別支援学校、特別支援学級で障がい児の学校、学級を設置し、自治体によっては通学バスを走らせて通学の対応をしてきている。武蔵野市もこの方法だった。

 しかし、2011年に障害者基本法が改正され、「国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者ではない児童及び生徒とともに教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない、2、国及び地方公共団体は、前項の目的を達成するため、障害者である児童及び生徒並びにその保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重しなければならない」となった。

 さらに 2016年には合理的配慮を法的に定めた障害者差別解消法が施行され、障害のある人が障害を理由として差別することがなく、障害がない人と同じように社会生活を送れるように合理的配慮を行うことが、地方公共団体(=自治体)にも求められることになった。

 この背景もあり、障がいの有無にかかわりなく、誰もが望めば自分に合った配慮を受けながら、地域の普通学級で学べることを目指すインクルーシブ教育が動き出しているのが現在だ。

 ところが、現実には、この通学問題だけでも進んでいないことになる。


■福祉と学校の縦割り

 障がい者への支援として移動支援事業が行われている。通学でも移動なのだから、普通に考えればこの事業で支援ができないかとなる。ところができないのが現状だ。

 市によると、『移動支援は、公的機関、医療機関、その他の社会生活上必要な施設の利用、余暇活動または社会活動への参加を目的に外出する場合を対象とし、通勤、営業活動等の経済活動にかかわるもの、通学、通所、通園等の継続的かつ長期にわたるものなどは対象といたしません。
 義務教育期間については、教育の保障として学校側が担保すべきものと考えており、福祉的サービスで補完するとすれば、保護者の入院、出産、けが等で一時的に対応する場合であり、これに関しては現在も御相談に応じております。
 なお、移動支援は余暇活動のメニューとして非常に希望者が多いサービスであり、需要に供給が追いつかず、市でもヘルパー養成に長年に力を入れていますが、ヘルパー不足の現状がございます』(※1)。

 つまり、福祉分野としては、余暇への支援はするが義務教育の通学は対象にしない、学校が担保すべき、となる。
 まさにば縦割り行政そのものだ。子どもにとって何が最善かで判断して、その目的を達成するための道具、制度と考えれば、教育であろうと福祉であろうと関係はなく、行政側の都合だけの判断としか思えない。

 背景には、長期的になり、利用する子どもが増えれるとそれだけ費用がかかる財源問題がある。文科省でもこの問題について議論しているが、「通学時の支援やコミュニケーション手段の確保について、教育・福祉の連携や社会的支援の整備等の支援の充実を図ることが望ましい」(※2)といったところで止まっており、肝心の財源確保までは進んでいないからだ。自治体で考えれば、財政は市長部局となるため教育委員会が独自に予算を増やせない問題もある。


■固定観念を変える

 財源問題があるからといって、普通学級で義務教育を受けたいという子どもの願いを門前払いしていいのか。このことを考えなくてはならない。障がいを理由として対応をしないことは法に反していることにもなる。

 今回、一般質問で取り上げたのは、例えば、身体のみに障がいがあり車椅子を使うケースで、保護者が通学に付き添えない場合はどうするか? との問いかけだった。

 普通学級の教師の配置は、40人に1人(小1は35人)だ。特別支援学級になれば、8人に1人、特別支援学校では6人に1人で個別の指導計画などの策定も行われる(支援学級は推奨されているが義務ではない)など手厚くなる。子どもの状況にって普通学級が良いのか、特別支援学級、特別支援学校が良いのか判断すべきなのは言うまでもないが、このケースであれば普通学級へ通えるようにするのが「全ての国民の義務」だろう。

 この問題を質問するさいに調べてみると、障害者基本法改正、障害者差別解消法施行の後、教育委員会として障がい児の通学について議論がされていないことが分かった。
 そのため、今回の質問では、これまでに行ってきた特別支援学級など固定級の充実だけではなく、通学への支援方針を教育委員会として早期に検討すべきではないではないか。法改正により障がい児は特別支援学校か特別支援学級に行くものとの固定観念を変える時期となっている。
 通学支援には財政的課題もあるので、教育委員会と市長部局の連携と障がいを持った子どもと保護者、福祉分野を含めたNPOなどと子どものために何が最善で何ができるかを早急に協議し、対応策をつくるべきではないか、と質してみた。


■教育委員会と健康福祉部で連携し検討へ

 答弁では、法改正も踏まえて、特別支援学級の今後や通常の学級における支援のあり方については、財政的な面も含めて課題が多いの教育委員会だけでは結論を出せないため、第三期の学校教育計画策定の中でも考えていきたい。通学支援は課題として認識していると教育長が答弁。

 市長からも、『普通学級に通うことで、通学だけでいいのか、また普通学級で生活をして勉強していく中での課題などもあると思いますので、今後、教育委員会と健康福祉部で連携をして、検討していきたい』(※1)と答弁があった。
 
 武蔵野市の学校教育計画は、平成27年度から31年度の5年間を期間とする第二期が現在策定されている。32年度(2020年度)からの第三期の計画は、第二期の策定期間と同じと考えると31年1月に委員会を設置し議論が始まることになる。この計画の策定での議論に期待したいが、子どもの成長は待ってくれない。議論は大切だが、早急な対応が必要だ。例えばシルバー人材センターの協力を得ても良いのではないだろうか。

 今回の質問で具体的にすぐに動くこととはならなかったが、課題認識をしていること。問題は財政問題であり、市長部局と教育委員会との連携で検討するとしたことは、小さいかもしれないが、これまでよりも一歩が動いたように思えた。今後に注目したい。



※1 2018年6月13日。川名の一般質問への市長答弁
※2 共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)平成24年7月23日初等中等教育分科会 より