公立図書館が議会支援、議会図書室支援を行う愛知県田原市図書館の事例を伺った。議会図書室を物置化するよりも、このような手法を広げることで議会改革はさらに進む好例だ。

P1020786

■議会図書室設置は義務

 自治体議会には、地方自治法第100条19項に「議会は、議員の調査研究に資するため、図書室を附置し前二項の規定により送付を受けた官報、公報及び刊行物を保管して置かなければならない」と規定されており、議会図書室の設置が義務付けられている。そのため、どの議会にも図書室があるのだが、都道府県や政令市など財政に余裕がある議会以外では、物置化している例が多い。
 この議会図書室を活性化することで議会機能、議員の調査能力をさらに高める議会改革を進めようと行われているのが、この勉強会だ。主催は、ローカルマニフェスト推進地方議員連盟。今回で五回目となる。

 
■図書館による議会支援

 勉強会では 田原市図書館司書の七原千紘さんから事例報告をしてもらい、今後の可能性などを議論した。

P1020847 田原図書館は、地元のフェリー航路が廃止になるかも知れないとの問題が起きたことから情報提供など地域の課題解決支援という図書館としての機能を発揮。その流れになかで議会事務局から議会図書室が活用されていないとの相談を平成26年に受けたことが支援のきっかけとなった。

 調べてみると、議会図書室の蔵書は古く、事務局でもどのような書籍、資料があるのか把握していなかったという。さらに図書購入費も満足にない状況だった。そこで。図書館の支援で蔵書の整理、見やすくするレイアウトの工夫や少ない図書購入費への対応として、図書館からの団体貸し出しを議会の定例会ごとに行い、審議に役立つようにする。

 図書館では、議会の意見交換会の様子や「写真でも見る田原市議会の月ごとの活動内容」をパネル展示することやSNSでの発信を行い市民の関心を高めることも行っているのだそうだ。


■議会図書室支援は図書館の業務

 議会図書室の活性化として、議会独自で司書を配置している呉市議会の例があるが、そこまでできないとなると、田原市の例は公立図書館と連携することが最も手軽な方法で、議会の機能強化に結びつくことが分かる。 

 そもそも、図書館法第3条の4に「他の図書館、国立国会図書館、地方公共団体の議会に附置する図書室及び学校に附属する図書館又は図書室と緊密に連絡し、協力し、図書館資料の相互貸借を行うこと」に努めなければならないと規定されており、図書館が議会図書室支援をすること図書館の業務でもあるのだ。

 ただし、図書館から議会へ押しかけて支援すると言い出すことも難しい。議会から持ちかければ話が進むことも田原市の例で明らかだ。法律にあるように「議員の調査研究に資するため」に議会図書室を活用するさいに参考にすべき例だ。

 また、議会への資料貸し出しや調査(レファレンス)対応だけでなく、図書館で議会情報を発信してもらえることも参考となる。


■議会独自の資料

 事例報告の後に江藤俊昭山梨学院大学教授から、多くの議会では、議会事務局には庶務係と議事係という状況だが、それだけでいいのか。調査が重要になるとなれば、議会図書室機能を高めることが必要で田原市の例が参考になるだろう。

P1020921 さらに、議会と住民との関係も事務局の課題となっている。地方自治法には議会図書室を住民が利用できるにすることもできるとされている(地方自治法第100条20 前項の図書室は、一般にこれを利用させることができる)。

 議会の機能には監視、調査だけでなく、住民に開くこと(情報公開)、協働することもある。そのためには図書室を開くことも必要だ。民主主義の社会資本は、情報であり、集積と公開が図書館の仕事。情報には書籍だけでなく議会の資料もあり、議会の資料は市民のためにあるもの、と話されていた。


 議会は自治体の意思を決定する機関でもある。その意思決定過程でどのような論点があったのか。どのような理由で決めたのかも後世に伝えていくことも重要だ。議会審議で使用した資料など図書館にない資料も議会にはある。このような資料や情報も収集、公開していくことも議会図書室の機能にはある。議会事務局で図書室担当職員の増員ができないのであれば、図書館との連携で十分できることも分かった。多くの議会で参考になるに違いない。


■課題

 一方で課題もある。それは、実際に支援を担当する司書の雇用の課題だ。
 以前、「強い議会をささえる図書館司書 〜呉市議会〜」(2017年06月08日)でも書いたが、大田原市図書館の七原さんと呉市議会の司書、重森さんも嘱託職員という非正規雇用であるからだ。
 嘱託職員は、基本的に任期は5年までだ。その間、いい仕事をしても給料が上がるなど雇用条件は変わらない。自治体職員は民間とは雇用形態が異なるため、嘱託から正規には簡単には変わることができない。ましてどの自治体でも公務員を減らしている状況下では難しいだろう。評価の高い仕事を続けられるか。相応の身分と給与を出せるのか。大きな課題が残されている。