2018マニフェスト大賞で最優秀政策提言賞を受賞した兵庫県川西市議会の会派、明日のかわにしの「マイナスの会派予算提案」を伺った。会派の予算要望をそのまま実現したら市は破綻する、との一言が印象に残る。多くの会派で参考になる事例だ。

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 11月18日に大阪市中央区で開催されたローカル・マニフェスト推進連盟による関西勉強会「議会改革の最前線 & 先進の政策事例を学ぶ」で伺った。報告されたのは、斯波康晴議員。


■予算要望とは

 会派の予算要望は、次年度予算へ盛り込む事業などを市長、執行機関に要望するもの。議員が一般質問で取り上げたことや地域、関係団体から伝えられた要望などがあり、内容はさまざまだ。
 制度的には法に規定されていたものもなく、手法のルールがないのがほとんどの議会だろう。そのため、要望を受けて執行部側が予算化するかは分からない。

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 執行部としては、多くの方々から要望を反映した予算と言え、議員側からすれば、支援者や住民要望を執行部に要望したと言えることができる。良いアイデアがあれば、執行部が自ら考えて予算化したとも言うことも可能。その反対で、数多く要望して、そのうちの一つでも予算が付けば会派からの提案が実現したと言ってしまえることも可能だ。
 位置づけとしてあいまいだが、政治的な意味はあり、多くの議会で行われている。


■予算要望を実現したらはたんする
 
 報告をされた斯波市議は、これまでの会派予算要望は、財源を無視したお手盛り型であったり、なんとなく思い付いた突発型であったり、事業化するには難しい抽象型などだったりが多かった。仮にこれらの要望をすべて実現すれば、自治体経営は破たんしてしまう。そのため、会派で話し合い、事業の廃止縮小の提案も含め、要望のすべてに金額を設定して提案し、トータルの予算はマイナスにしているとされていた。

 このことは、パーキンソンの法則(※)から、予算は必ず増えていくものと考えると分かりやすい。自らの"懐"が痛むのはないので、とにかく要望していけば良いと思いがちだからだ。これは執行部も同じ。とりあえず予算要求しないと、次年度の予算が付かないから、あれもこれも要求してしまい、結局、予算が肥大化してしまうことになりかねない。その結果が財政状況を悪化させてしまうとも考えられる。

 執行機関としてこの問題へ対応するため、例えば、北海道でサンセット方式(事業が終わる時期を当初から決めておく)、三重県で決算から予算を見て費用対効果で事業効果を計ること(事務事業評価)が行われ、不要であったり効果が薄かったりする予算を減らしていく例がある。武蔵野市などでは、あらかじめ予算額の枠を決めておき、そのなかで部や課単位で新規の予算が必要な場合は既存の事業の予算を縮小、廃止して計上するなど枠配分方式を行う例もある。

 だが、会派の予算要望にこのような厳しい内容にしている例は初めて聞いた内容だった。
 だからこそ、日本最大の政策コンテスト、マニフェスト大賞で最優秀政策提言賞を受賞したのだ。


■4つのルール

 明日のかわにしの予算要望は、執行部へのお願いでなく、政策提案との位置づけなので、要望ではなく提案としている。このことも参考にしたいが、その基本は、下記の4つをルールとしている。

…鶲討蓮原則、行政の事業成果報告書に設定の事業単位で行うこと。
∋業提案にかかる概算金額を試算し、事業単位ごとに併記すること。
成果や継続意義が乏しいと判断した既存事業に対し、積極的に廃止・見直し・縮小の提案をすること。
ね住残鶲討垢訌躋技散盂曚蓮原則マイナスとすること。(マイナスの予算提案)

 そして、まちの未来の姿を示し(施策体系)、そのために必要な事業として予算額を示して提案している。
 
 例えば、平成31年度の予算要望では、「働くパパママを全力応援する新規・拡充事業」として以下があった。

子どもの医療費所得制限の撤廃
 所得に関係なく、中学生までの子どもたちの医療費を助成。(30百万円)
中学校通学費支援
 中学校設置未了のけやき坂小地区・北陵小地区の要件付き中学校通学費助成。(20百万円)
保育料・幼稚園授業料の負担軽減
 所得に関係なく、子育て負担の大きい保育料・幼稚園授業料の支援。(100百万円)

子どもの居場所づくり支援
 小学校の校庭や公民館等の社会教育施設を活用し、子どもたちの居場所を拡充。(5百万円)
民間事業者のフリースクール開設・運営・通学支援
 不登校児童・生徒に対する学習・生活活動を支援。(10百万円)
学習支援
 教育予備校・学習塾事業者と提携した放課後・長期休暇期間を活用した学力向上。(30 百万円)
英会話学習支援
 英会話教室運営事業者と連携し、小中学生が英会話力を向上させる。(10百万円)
英検受験促進
 小・中学生の英検 3 級・準 2 級取得率を高めるために、受験料補助等の支援。(5百万円)  


■廃止事業

 その一方で事業廃止もある。例えば

違法駐車等対策事業
 違法駐車・迷惑駐車の防止啓発の効果が見られないため廃止。(▲1 百万円)
再開発総務管理事業
 事業の進展、合意形成が困難であるため事業中断。職員の配置転換。(▲1.5 百万円)
中小企業支援事業
 投資効果が不明または低く、必要な細事業は商工振興事業に統合し廃止。(▲88 百万円)
 また中小企業融資あっせん事業は利用件数も少なく廃止。
農業振興事業(川西市農林業振興支援事業)
 補助金による効果が不明で補助や委託先団体の公開情報が乏しいため廃止。(▲3 百万円)
休日歯科応急診療
 民間の日曜診療歯科が市内にあるため廃止。(▲7 百万円)
応急診療所運営事業
 県や民間の休日急病診療の利用、診療情報を提供することで事業を廃止。(▲15 百万円)
生涯学習推進事業(社会教育委員の会・社会教育関係団体補助金)
 団体等への補助金の効果が不明のため廃止。(▲1 百万円)
 などだ。事業廃止のトータルはマイナス116.5 百万円となる。他に見直しによる削減額も盛り込まれている。

 予算提案の総額は、3億8400万円。提案した削減額は、6億250万円となっていた(31年度予算提案)。

 そして、ネットで内容を公開するとともに会派レポートして市内全戸へ配布し、市内複数個所で会派報告会を開催し、市民と意見交換と意見聴衆を行っている。


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■議員改革に

 これらにより、本当に必要な事業なのか、優先順位として高いのか、低いのかを会派で話し合うことになる。若手と高齢者とでは優先順が違い、会派内で議論になったそうだが、それを乗り越えての要望となったそうだ。

 何よりも、予算額を理解することは、事業内容をより知ることにもなり、不要な事業を指摘できることは、その事業に関係する市民との関係を悪くすることになりかねないので、かなり思い切った内容と言える。
 税金の無駄をなくすとは良く使われる定番フレーズだが、実際に何をどのような理由でいくら削るのかを聞くことがなく、掛け声倒れで終わることが多いことを考えると、同じような取り組みをより多くの会派で実現することで、持続可能な自治体とつながると思えてならなかった。

 予算を理解することは、議員の意識改革につながること。それが議会全体の改革へもつながるのではないか。
 私の所属する会派でも、必要な予算額は議論しているが、削減する事業までは議論していない。今後の参考にしていきたい。

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※パーキンソンの法則
1958年、英国の歴史学者・政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンが提唱した。仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する。支出の額は、収入の額に達するまで膨張する、の二つからなる。(引用:wikipedia)


※画像は上から
斯波議員の発表の様子
会場の様子
会派提案の概要を知らせる会派レポートの一部
会派の皆さん

(資料とレポートは斯波議員より提供いただきました。この場で恐縮ですが感謝します)