武蔵野市第六期長期計画の討議要綱が公表されパブコメが始まった。議会との意見交換も行われるが、その前に気になった箇所をいくつかピックアップしてみる。まずは、計画のゴールと18歳までの医療費無償化だ。
気になっただけで、良し悪しの判断はこれから。あくまでもメモとしてのピックアップであることはご承知いただきたい。
■長期計画とは
武蔵野市政は、長期計画条例第４条４で「市が実施する政策は、すべて長期計画にその根拠がなければならない。ただし、速やかな対応が特に必要と認められるものは、この限りでない」と規定されているように、この長期計画に基づいて運営されている。策定期間は10年単位。第六期長期計画は2020年から2029年となり、今後の10年の方向性を決める武蔵野市で最も重要な計画となる。
今後、関係団体、圏域別の意見交換会やワークショップ、パブリックコメント、そして議会との意見交換を経て策定が進められ、最終的には市議会の議決により決まり2020年４月から計画がスタートする。まずは多くの市民の方々に関心を持っていただきたい。
さて、市報でもお知らせがされている討議要綱（計画の素案）の中から、気になったところをまとめてみた。
■それでどうなる？ ゴールは？
これまでの長期計画でも同じだったが、計画を実行すると市政、市民生活がどうなるのか、分かり難いことがある。計画は作ることが目的ではない。計画を実行したことで何が変わるか、良くなるかのゴールが重要ではないだろうか。ゴールへたどり着いているのか、数字による目標値がないことから評価が難しいのがこれまでの長期計画だ。
例えば、第五期長期計画のまちづくりの視点と目標に大きく掲げられているのは、「武蔵野から新しい都市像を開こう」。その前の第四期長期計画では「都市の窓を開こう、新しい家族を育てよう、持続可能な社会をつくろう」とある。なんとなく意味は分かるが、では、それでどうなる？ どうなったが具体的に分からない。定量的に判断できないからだ。
第六期長期計画では、「誰も安心して暮らし続けられる 魅力と活力があふれるまち」だ。より分かりやすくなったように思え好感を持つが、これもどのように評価できるかが分かり難い。
討議要綱とは別に、「第五期長期計画」及び「第五期長期計画・調整計画」の実績と評価も公表されているが、ここでの評価は、まちづくりの目標、「自治と連携によるまちづくり」「支え合いをつむぐまちづくり」「平和で美しいまちづくり」「環境と共生するまちづくり」について実績と評価を行っている。それぞれの目標が達成されて、それでどうなったのか？ ゴールはどこかの視点も重要ではないだろうか。
■コミセン
「基本課題について」のまちの活力・魅力の発信のところには、「コミュニティセンターの役割は変わらないものの（中略）社会環境の変化に対応したコミュニティと市民活動の連携のあり方を検討していく必要がある」とある。
平成26年にコミュニティセンターの機能や役割、管理・運営のあり方が検討され、提言が出されているが、ここに書かれていた以下の課題が示されていた。
�．灰潺絅縫謄�づくりの認知と連携の不足
�▲灰潺絅縫謄�における複雑な区域設定
�５し擇暴犬い笋垢ぅ灰潺絅縫謄�センターづくり
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複数のコミセンで行う事業など新たな取り組みが始まっていることは評価できるが、一方で運営について、市が細かいところまで関わらない自主三原則があることで、客観的な評価が難しいことがある。論点となっていることに、一方だけの考え方を主張することをしていないか。検証が必要ではないかと思えている。
■18歳まで医療費無償化
子ども教育では、「家庭の経済的負担を軽減するために、子どもの医療費を所得制限なく18歳まで無償とする仕組みを構築する」と書かれている。
通常、長期計画では「検討をする」とぼやかすのに、「構築する」と断言していることには違和感が残る。
これは松下市長の選挙公約でもあることは承知しているが、どのような経緯での書き込みとなったのか。乳幼児から義務教育就学児（中学生まで）の無償化（保険診療の自己負担分の助成）で年間約２億5000万円の財政負担が武蔵野市で増えている。
早めに診療することで医療費削減になるとの考えもあるが、実際にどうなったのかエビデンスが必要になるはずだが、討議要綱では分からない。経済的負担の軽減なら所得制限は必要にならないのだろうか。しないのであれば、全ての子どもは等しいなどの理念を明確にすること必要になる。そうなると、他の所得制限は何なのかともなっていく。
第五期長期計画・調整計画では、「すべての子どもが、その家庭の経済状況にかかわらず健やかに育つことができるよう、児童手当、医療費助成等の経済的支援を引き続き実施する。市が独自に行っている助成については、必要な人に的確な支援を届けていく観点から、適正な負担等を含め必要な見直しを行っていく」と書かれており、適正な負担が書かれている。どのような議論で今回の長期計画への書き込みとなったのかも気になるところだ。
医療費の無償化を広げることは他の自治体でも行われており、自治体間競争ともなっている。財政的に恵まれている自治体が勝ち組となっていく構造でいいのか。無償化よりも、夜間・休日診療を増やすことや教員の多忙化が問題となっているなか、市独自で教員や部活指導員を雇用する財源にすることなどよりも優先順位が高いのか。予防医療で医療費を削減できるは間違いだと指摘する意見や無償化すると医療費が増え国庫の負担が増えることから国からの補助金を減額すると説明されており、この対応策があるのかも論点となりそうだ。
■政策目的・成果が不明確
厚生労働省では「子どもの医療制度の在り方等に関する検討会」が設置され、2016年３月に議論のとりまとめが公表されている。ここに無償化など自治体による減免措置についての議論があり、意見が分かれ是非がない結論となっていた。
その中での論点は下記だ。
・医療費無償化による受診拡大等が医療保険制度全体の規律や医療提供体制に与える影響
・負担能力に応じた負担とする視点や過度な給付拡大競争の抑制
・小児科のかかりつけ医の普及、保護者等への啓発普及、他の子育て支援策の
充実など併せて取り組むべき事項
・必要となる公費財源や財源の有効活用など財政再建計画との整合性等の観点を踏まえつつ、検討を行うべきである。
さらに、次の意見も記載されている。
「医療費助成制度については、政策目的・成果が不明確であり、財源の裏打ちがない中で、少子化対策という名目のみで進めるべきではなく、他の代替的な手段と比べて費用に見合った政策効果が上がっているのか、よく考慮する必要がある。医療費助成の拡大と健康指標との関係について、未就学児で限定的に効果があり、就学児については健康水準に影響が無かったという調査があるが、今後こうした面からも更なる検証が必要である」
同じく松下市長の公約にあったＬＧＢＴ「パートナーシップ証明書の交付については、実現に向けた検討を行っていく」とあり、検討とトーンが下がっている。
実際には現在中間のまとめにパブコメが行われている第四次男女平等推進計画に書き込みがあり、2019年度から検討がされる見込みだ。いわば現在進行形のことなのに検討を行うとの表記だ。この違いは何だろうか。
【参考】
武蔵野市 第六期長期計画 討議要綱
厚生労働省 子どもの医療制度の在り方等に関する検討会
朝日新聞 子ども医療費の無料化拡大、是か非か？
東洋経済ONLINE ｢予防医療で医療費を削減できる｣は間違いだ（権丈善一慶應義塾大学商学部教授）
■長期計画とは
武蔵野市政は、長期計画条例第４条４で「市が実施する政策は、すべて長期計画にその根拠がなければならない。ただし、速やかな対応が特に必要と認められるものは、この限りでない」と規定されているように、この長期計画に基づいて運営されている。策定期間は10年単位。第六期長期計画は2020年から2029年となり、今後の10年の方向性を決める武蔵野市で最も重要な計画となる。
今後、関係団体、圏域別の意見交換会やワークショップ、パブリックコメント、そして議会との意見交換を経て策定が進められ、最終的には市議会の議決により決まり2020年４月から計画がスタートする。まずは多くの市民の方々に関心を持っていただきたい。
さて、市報でもお知らせがされている討議要綱（計画の素案）の中から、気になったところをまとめてみた。
■それでどうなる？ ゴールは？
これまでの長期計画でも同じだったが、計画を実行すると市政、市民生活がどうなるのか、分かり難いことがある。計画は作ることが目的ではない。計画を実行したことで何が変わるか、良くなるかのゴールが重要ではないだろうか。ゴールへたどり着いているのか、数字による目標値がないことから評価が難しいのがこれまでの長期計画だ。
例えば、第五期長期計画のまちづくりの視点と目標に大きく掲げられているのは、「武蔵野から新しい都市像を開こう」。その前の第四期長期計画では「都市の窓を開こう、新しい家族を育てよう、持続可能な社会をつくろう」とある。なんとなく意味は分かるが、では、それでどうなる？ どうなったが具体的に分からない。定量的に判断できないからだ。
第六期長期計画では、「誰も安心して暮らし続けられる 魅力と活力があふれるまち」だ。より分かりやすくなったように思え好感を持つが、これもどのように評価できるかが分かり難い。
討議要綱とは別に、「第五期長期計画」及び「第五期長期計画・調整計画」の実績と評価も公表されているが、ここでの評価は、まちづくりの目標、「自治と連携によるまちづくり」「支え合いをつむぐまちづくり」「平和で美しいまちづくり」「環境と共生するまちづくり」について実績と評価を行っている。それぞれの目標が達成されて、それでどうなったのか？ ゴールはどこかの視点も重要ではないだろうか。
■コミセン
「基本課題について」のまちの活力・魅力の発信のところには、「コミュニティセンターの役割は変わらないものの（中略）社会環境の変化に対応したコミュニティと市民活動の連携のあり方を検討していく必要がある」とある。
平成26年にコミュニティセンターの機能や役割、管理・運営のあり方が検討され、提言が出されているが、ここに書かれていた以下の課題が示されていた。
�．灰潺絅縫謄�づくりの認知と連携の不足
�▲灰潺絅縫謄�における複雑な区域設定
�５し擇暴犬い笋垢ぅ灰潺絅縫謄�センターづくり
�っ楼莖萋阿涼瓦ぜ蠅慮把蟆修箙睥隹�
複数のコミセンで行う事業など新たな取り組みが始まっていることは評価できるが、一方で運営について、市が細かいところまで関わらない自主三原則があることで、客観的な評価が難しいことがある。論点となっていることに、一方だけの考え方を主張することをしていないか。検証が必要ではないかと思えている。
■18歳まで医療費無償化
子ども教育では、「家庭の経済的負担を軽減するために、子どもの医療費を所得制限なく18歳まで無償とする仕組みを構築する」と書かれている。
通常、長期計画では「検討をする」とぼやかすのに、「構築する」と断言していることには違和感が残る。
これは松下市長の選挙公約でもあることは承知しているが、どのような経緯での書き込みとなったのか。乳幼児から義務教育就学児（中学生まで）の無償化（保険診療の自己負担分の助成）で年間約２億5000万円の財政負担が武蔵野市で増えている。
早めに診療することで医療費削減になるとの考えもあるが、実際にどうなったのかエビデンスが必要になるはずだが、討議要綱では分からない。経済的負担の軽減なら所得制限は必要にならないのだろうか。しないのであれば、全ての子どもは等しいなどの理念を明確にすること必要になる。そうなると、他の所得制限は何なのかともなっていく。
第五期長期計画・調整計画では、「すべての子どもが、その家庭の経済状況にかかわらず健やかに育つことができるよう、児童手当、医療費助成等の経済的支援を引き続き実施する。市が独自に行っている助成については、必要な人に的確な支援を届けていく観点から、適正な負担等を含め必要な見直しを行っていく」と書かれており、適正な負担が書かれている。どのような議論で今回の長期計画への書き込みとなったのかも気になるところだ。
医療費の無償化を広げることは他の自治体でも行われており、自治体間競争ともなっている。財政的に恵まれている自治体が勝ち組となっていく構造でいいのか。無償化よりも、夜間・休日診療を増やすことや教員の多忙化が問題となっているなか、市独自で教員や部活指導員を雇用する財源にすることなどよりも優先順位が高いのか。予防医療で医療費を削減できるは間違いだと指摘する意見や無償化すると医療費が増え国庫の負担が増えることから国からの補助金を減額すると説明されており、この対応策があるのかも論点となりそうだ。
■政策目的・成果が不明確
厚生労働省では「子どもの医療制度の在り方等に関する検討会」が設置され、2016年３月に議論のとりまとめが公表されている。ここに無償化など自治体による減免措置についての議論があり、意見が分かれ是非がない結論となっていた。
その中での論点は下記だ。
・医療費無償化による受診拡大等が医療保険制度全体の規律や医療提供体制に与える影響
・負担能力に応じた負担とする視点や過度な給付拡大競争の抑制
・小児科のかかりつけ医の普及、保護者等への啓発普及、他の子育て支援策の
充実など併せて取り組むべき事項
・必要となる公費財源や財源の有効活用など財政再建計画との整合性等の観点を踏まえつつ、検討を行うべきである。
さらに、次の意見も記載されている。
「医療費助成制度については、政策目的・成果が不明確であり、財源の裏打ちがない中で、少子化対策という名目のみで進めるべきではなく、他の代替的な手段と比べて費用に見合った政策効果が上がっているのか、よく考慮する必要がある。医療費助成の拡大と健康指標との関係について、未就学児で限定的に効果があり、就学児については健康水準に影響が無かったという調査があるが、今後こうした面からも更なる検証が必要である」
同じく松下市長の公約にあったＬＧＢＴ「パートナーシップ証明書の交付については、実現に向けた検討を行っていく」とあり、検討とトーンが下がっている。
実際には現在中間のまとめにパブコメが行われている第四次男女平等推進計画に書き込みがあり、2019年度から検討がされる見込みだ。いわば現在進行形のことなのに検討を行うとの表記だ。この違いは何だろうか。
【参考】
武蔵野市 第六期長期計画 討議要綱
厚生労働省 子どもの医療制度の在り方等に関する検討会
朝日新聞 子ども医療費の無料化拡大、是か非か？
東洋経済ONLINE ｢予防医療で医療費を削減できる｣は間違いだ（権丈善一慶應義塾大学商学部教授）
