4月3日、 衆議院内閣委員会で「子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案」が可決され、本会議でも可決される見込み。たが、根本的な問題は残されたままだ。
採決にたいして、立憲民主党逢坂政調会長は、委員長職権により強行採決されたこと。今回の法案で無償化されるのは一部に過ぎない。まずは待機児解消や保育士の待遇改善が先。幼児教育の無償化は保育の質を低下させ、保育現場の崩壊を招きかねない危険性があるとして、立憲民主党としては、反対したと述べている。
■質の確保
確かにこの理屈は良く分かる。無償化自体は良いとしても、保育園に入れれば無償、入れないと対象にならないのは、この制度の目的が少子化対策であることを考えれば矛盾がおきる。
認証など認可外保育所も無償化の対象にはなるが、どこまで質が保たれているかの疑問は残ったままだ。
武蔵野市の場合、認証については市が運営会社の経営状況も含めて調査をしているが、他の自治体がどこまでできているかは分からない。ベビーシッターや企業主導型保育室は、市が直接指導する立場にないので質の確保には課題があるからだ。
特にベビーシッターは、一対一での保育になるため、その内容が分かりにくい。武蔵野市議会の平成31年度予算審議でベビーシッターについて確認したところ、市としても現状では対応ができないとの答弁だった。
無償化でよりニーズが高まり、待機児が増えた場合、この問題はさらに広がってしまうかもしれない。
■無償化は一部
無償化されても、ほんとうの無償化なのかも不明なままだ。
例えば給食費。給食の材料費は保護者の自己負担が原則だが、現在の制度では、幼稚園と保育園でご飯やパンの主食と、おかずとなる副食についての費用の支払い方法が違うため、無償化以降、払う給食費の額が違ってしまう。
幼稚園に通う3歳から5歳の子どもの場合は、主食と副食のいずれも保護者が実費を支払うが、同じ年齢でも就労状況などから保育が必要として認定を受ける場合(本来は保育園かもしれない)には、保育園と同じように副食費は保育料の中に含まれているので、主食のみ支払うことになるからだ。
無償化となっても、幼稚園の場合は、同じ幼稚園に通う子どもで給食費が異なることになってしまう。
お弁当だけなら良いのかもしれないが、他園との差別化により弁当持参から給食へ移行する幼稚園が増加していることを考えれば、10月以降、矛盾がさらに表面化してくるのだろう。
■無償化で給食費の徴収が始まる?
保育園の保護者の立場で考えると、給食費を払ってはいるが保育料と同時に払っているので、給食費を別に払っていると思っていないのではないだろうか。
そのため、10月からの無償化になると同時に給食費を徴収すると、無償化じゃなかったのか? となり、本来の意義が薄れることも懸念材料だ。10月からなので、年度の途中からで行うとすれば、事務量が煩雑になることでの混乱も起きるかもしれない。
特に給食費には所得に応じた減免が現状ではないので(生活保護世帯などにはある)、高所得者も低所得者も同額を払うことになってしまう。
これまでの保育料は、所得に応じて階層ごとに異なっていたのが、所得に関係なく同じ額を払うことでいいのかの課題も出てくる。今回の制度は、所得に応じた保育料を一律に無償化してしまうので、高所得者ほど恩恵が得られる制度矛盾がここに出てきてしまうのだ。
武蔵野市の場合で考えると、保育料審議会を終えたばかりで、保育料は変更しないと決めたばかりなのに、10月から保護者が給食費だとしても支払いが発生するのは理解され難いのではないか。
給食費を10月から徴収するかは、多摩26市では決まっていない。武蔵野市の場合、少なくとも、保育料審議会を開き、幼稚園の給食費の問題も含めて総合的に基準を決めるまでは、求めるべきではないと思う。
■看板に偽り?
また、幼稚園には行事費、通園送迎費などは含まれていない。無償化される範囲が一部だけであるにもかかわらず、『幼児教育無償化』というのは看板に内容が伴っていないと逢坂政調会長は強調していた。
共同通信の調査では、無償化になることから、全国の約4割の私立幼稚園が保育料の値上げをするとしている(2018年10月調査)。値上げしても、保育料無償化で保護者負担が変わらないことから、幼稚園の収入を増やすためと考えられるが、これでは保護者の負担減の目的の意味、幼児教育無償化の意義も薄れてしまうことになる。
幼稚園には、園舎を持たず、自然のなかで育てる「森のようちえん」もある。認可を受けている事業者もあるが、認可外幼稚園、自主保育の形態で続けているところもあり、無償化の対象から外れるとなると存続の危機とも言える。
そもそもでいえば、認定こども園に移行しなかった幼稚園は、補助金が少なくなり、独自の教育ができなくなっている背景がある。保育の質や教育の中身を置き去りにしていることのほうが大きな問題だ。
■無償化の目的は? 支持率? 少子化対策?
ちなみに無償化の提案理由は下記。経済的負担を減らすことによる少子化対策が目的だ。
(衆議院での提案説明より)
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子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案
我が国における急速な少子化の進行並びに幼児期の教育及び保育の重要性に鑑み、総合的な少子化対策を推進する一環として、子育てを行う家庭の経済的負担の軽減を図るため、市町村の確認を受けた幼児期の教育及び保育等を行う施設等の利用に関する給付制度を創設する等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
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少子化対策なら、幼稚園や保育園に通わない子ども、通えない子どもも含めて、対象にすべきだろう。かつての「子ども手当て」のほうがはるかに公平だ。
現場のことが分からないまま考えられ、混乱が起きることも分からずに、政権支持率を上げることだけが本当の目的に思えてならない。
法律が施行され10月から無償化になると、これらの矛盾がもっと表面してくるに違いない。国だのみではなく、住民に最も近い基礎自治体の対応が重要となりそうだ。これから半年の大きな問題だ。本来なら、国会で議論を煮詰めて矛盾をなくしてから成立して欲しかった。
【参考】
立憲民主党
「子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案」強行採決へ抗議 逢坂政調会長らが会見
