安定したデッキほどデッキの相性差は濃く、不安定なデッキはさほど相性差は濃くはない。たとえば、青白コン同士の対決は明確な対抗策を用意してる側と、用意してない側が戦うと大抵の場合は用意してる方が勝つ。双方がライブラリの大部分を使い、総力の差がそのまま勝負に反映するからだ。

しかし、《鍛えられた鋼》同士の対決で明確な対抗策(何なのかは知らないけど)を4枚詰んだとしてその対決が必ずしも一方的になるかというと、そうではないだろう。片方が《鍛えられた鋼》を引いて、もう片方が「そのカード」も《鍛えられた鋼》も引かなかった場合はすぐに決着してしまい、総力の差なんか関係なくなってしまうからだ。


(1)不安定なデッキ同士の相性差はよくひっくり返る

よく、デッキには相性差があり、この対決は10-0だとか6-4だとか本当に統計をとったのかよくわからないような話題がのぼることがある。たとえば、今年の日本選手権準々決勝の玉田VS井川両氏(以下敬称略)の対決はサイド後の相性差は98-2だそうだ。

http://coverage.mtg-jp.com/jpnats11/article/001888/
正直これは大げさだ。100回デュエルして2勝しかできないわけがないし、この言葉自体は冗談半分のネタとして聴いておけばいい。しかし、実際その相性差をひっくり返して《鍛えられた鋼》側が勝利したと言うのはお互いが「不安定なデッキ」だったからと言っていいだろう。

不安定なデッキというのはネガティブな意味で言っているのではなく、要はデッキが回ったときの最大値としての力と、回らなかったときの最低値としての力の振れ幅の大きいことを不安定と呼んでいる。この場合、相対的な力を《鍛えられた鋼》の力を50~100という数値で表わしてみることにしよう。(回ったときが100で、回らなかったときが50だ)対するヴァラクート側は恐らく50~200というところではないかと思う。これはどういうことかと言うと、サイド後のヴァラクートは以下のパーツに分かれている。

(A)対抗策のカード《自然の要求》《忍び寄る腐食》《紅蓮地獄》
(B)ヴァラクートのパーツ《不屈の自然》《砕土》《原始のタイタン》


78(A)の中には《忍び寄る腐食》のように、引けばほぼ勝てるカードが入っているし、《自然の要求》のように相手のプランを大きく崩せるものの、まだ復活の余地があるカードも入っている。一方、(B)はヴァラクートの通常パーツであり、核となるところは残していないとそもそも相手のライフ20を削ることができなくなる。

ヴァラクートは《不屈の自然》や《真面目な身代わり》が入り、現状では安定しているデッキなのだが、サイド後は(A)と(B)に分かれていて不安定になる。なぜなら、(A)のカードを引かないと相手に速攻で負けてしまうのは確実なのだが、(B)のカードも多少はないと相手に巻き返されてしまう。両方必要なのだ。加えて、(A)と(B)に相互作用はない。《自然の要求》はたしかにヴァラクート側が形成を整える時間を与えてくれるが、しかしヴァラクート本来の「マナを揃えて《原始のタイタン》を出す」という動きには何も貢献しない。せっかくサイドボードから11枚放り込んだにも関わらず、ハンドが「山、森、自然の要求×4、紅蓮地獄」だったらマリガンを考えた方がいいかもしれない。これはデッキが不安定な証拠だ。

一方で、《鍛えられた鋼》側もサイド後のデッキを、さらに不安定にしている。サイドから《統一された意思》、《刃砦の英雄》が投入されている。この2枚のカードはデッキの中の「鍛えられた鋼+アーティファクト」部分とまったく噛み合っていない。しかし、相手が《忍び寄る腐食》ばかりの手で、ヴァラクート本来の力(4ターンめにタイタンを出し、カウンターされても召喚の罠で追撃する)を出せないような展開になっていると、この展開は井川=《刃砦の英雄》有利になる。事実、ヴァラクート側はサイド後に不安定になっているので、ヴァラクート本来の展開はまず出来なくなっている。

井川はサイド後が不利になることを自覚し、デッキをさらに不安定にすることで相性差の振れ幅を大きくし、噛み合ったときに勝てるような光明を見出している。もちろん玉田側もそもそもメインボードの「安定したヴァラクート」では勝率は悪かったからこそ、不安定な勝負を挑んだのだ。メインボードがコントロールキラーとして作られているからこその、サイド11枚の激メタ体制であり、不安定な勝負ながらも枚数を多く取る(そして腐食という決定力のあるカードを採用する)ことで勝率を上げておこうとした。それでも今回はそれが実ることなく負けてしまったということだ。


(2)安定したデッキ同士は相性差がひっくり返りにくい

さて、話はいきなりローカルになるが、集団変身を使う俺にはFNMに天敵がいる。このブログで登場する通称:エルフキングだ。実に対戦成績をさっき調べたら公式構築戦0勝7敗である。全部集団変身VSエルフだったはずなので、この相性差はもはやマゾの領域だ。彼自身のレシピは公式なものがないので、コピーした友人のレシピを紹介するとこんな感じだ。

http://mtg-jp.com/event/natsqt11/result/001553/

119このデッキは簡単にいえば、エルフを出してマナを揃えてエズーリを出す、もしくは復讐蔦で勝つデッキだ。このデッキの安定性は半端ではない。デッキ内のカードはほとんどがクリーチャーで統一されており、しかも決定力であるエズーリor復讐蔦は《緑の太陽の頂点》《獣相のシャーマン》でサーチすることができる。1匹や2匹エズーリを処理してもわんこそばのように湧いてくるし、いつ対戦しても金太郎飴のように同じカードが自分の前に並んでいる。

一方で、集団変身も自分で言うのもなんだが安定している。決定力である《霜のタイタン》は《ファイレクシアの変形者》で何匹もいる状態にできるし、集団変身を使えば、こっちのクリーチャーは何でも《霜のタイタン》になれる。低マナ域のカードはどれも似たようなものばかりで、みんなが思っているほどバリエーションは多くない

さて、両者が安定しているのは基本的に「相手に干渉するカード」があまり入っていないことが大きい。どちらも自分の動きをするために一生懸命であり、いつも同じような動きをしようとすることに全力を注いでいる。こういうデッキ同士が戦うとどうなるか⇒速い方が勝つのだ。

エルフは見ての通り低マナ域が多く、ささっとマナを並べてオーバーランであっという間に勝負を決めてしまう。対する集団変身は、霜のタイタンが登場するまでは、まったくエルフに干渉できないと言っていい(一応、迫撃鞘で嫌がらせぐらいはできるけど…)。お互いが安定した動きをする故に、この勝負は相性差までが安定している。いつも《コジレックの捕食者》を出したあたりで、残念でしたとエズーリが襲い掛かってくるのだ。

このように、安定したデッキ同士が戦うと相性差はひっくり返らないことが多い。
よく言う10-0の相性とは、こういう対決のときにこそ使用すべき言葉だと言える。


(3)確実に勝とうとするなら、デッキを安定させるべきだ

(1)と(2)のことから、安定した対決では相性差は濃く、不安定な対決では相性差がよくひっくりかえることを説明した。これらのことから、もしあなたが本当に100戦100勝の相性差を生み出したいならば、なるべく自分のデッキを安定させることを重視するといいだろう。

例えば、去年の日本選手権で使用した俺のジャンドはジャンドミラーで5-1の成績を収めたが、これはデッキを安定させるサイドボードを採用したからだと思っている。

↓8番目(最後)のデッキ
http://archive.mtg-jp.com/eventc/jpnats10/article/006600/

ジャンドミラー自体はそんなに安定した勝負ではない。デッキは3色だし、決定力のあるカードも(普通は)あまり入っていないので、そこを引いたかどうかの勝負になったり相手を《ゴブリンの廃墟飛ばし》で事故らせたかどうかの勝負になることが多かった。

169しかし、ぼくのかんがえたさいきょうのジャンド(ぇ)の場合、サイドボードから《国境地帯のレインジャー》を採用し、相手の廃墟飛ばしから身を守ることを優先した(俺は後手の場合、サイドから廃墟飛ばしを入れなかった)。相手を事故らせることより、自分を安定させることを選んだ。それはなぜかというと、安定させることさえできればデッキに4枚投入している《若き群れのドラゴン》が必ず勝負を決めてくれたからだ。相手より安定することさえできれば総力戦になり、総力戦になれば勝てる構造にしていたからミラーマッチ5勝1敗のような相性差を生みだすことができたと思っている。

このように、不安定なマッチを有利にし、しかもそれを確実なものとしようとするならば、デッキを安定させて、それでかつ勝てるような対策を取るべきである。


(4)まったく勝てないなら、不安定にすべきだ

さて、(3)では不安定なデッキを安定させて勝利を万全なものにする方法を書いてきた。しかし、もしあなたのデッキが「安定して負ける」状態だった場合、選択肢は2つある。一つはあなたはデッキを変えて、安定して勝つ方のデッキを使うべきだ。しかし、そのデッキを使うのが苦手だったりカードを持ってなかったり、そもそもあまりにもそのデッキが多すぎて次は対策される側になるに違いないと思っているのなら、もう一つの選択肢をとることになる。あなたはデッキを「不安定」にすべきである。

もちろん、単に不安定にしてもっと負けろと言っているわけではなく、「全然デッキテーマと合致してないけど、引けば勝つカード」をいっぱい入れたり、「噛み合ってなかったらゴミのようなカードだけど、噛み合っていれば神のようなカード」をいっぱい入れたりしてデッキの強さの振れ幅を大きくするべきだ。言い換えれば、いつも80点のデッキを目指すのではなく、50~100点がバラバラに出るようなデッキにすべきだ。

なぜなら、安定したデッキ同士の対決は80対90点だとだとしても明確に勝負がついてしまう。しかし、50~100対90にしておけば、たまに勝つことぐらいはできるようになる。たまに勝てるというのは重要であり、こういう勝ちを拾えるとその大会の調子がよくなるし、例え負けても「次は勝てるかも」というモチベーションを保つことができる。その上、「たまに勝てる」状態を覚えることにより、その状態を安定して作りだすためのヒントになることもある。

何よりも「安定して勝てない」のは本当に最悪だ。もしあなたが安定して勝てないのなら、不安定にすることが勝利の糸口になる。


(5)自信があるなら安定に、ないなら不安定に

まとめると、あなたが何か環境に対して明確な答えを持っている場合、できるだけ安定したデッキを使用した方がいい。それは環境が安定していれば、より正しい選択であると言える。逆に環境がまったくわからない状態で、安定したデッキを持っていくのは危険である。あなたは「安定して負ける」カモになっているかもしれないからだ。環境が不安定だと思っているなら、あなたも不安定なデッキを持っていった方がいいかもしれない。

GPシンガポールではカウブレード環境の中、何もかもわかったような顔をしたPVが勝利した。日本選手権では混沌とした環境の中、鍛えられた鋼で新鋭の石田が優勝した。勝因はもちろん色々あるだろうし、彼らが本当に強いプレイヤーだったのは間違いない。ただ、環境が勝者を決めたのだとするならば、2人が優勝したのは必然であると言えるだろう。


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